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忍殺TRPGリプレイ【コンスピラーシィ・セオリー】01

邦題:陰謀論(CONSPIRACY THEORY)

tofubeats - CONSPIRACY THEORY

 ドーモ、三宅つのです。これはネヤ=サンのシナリオ案「フォールス・ウインター#9-A:トーテム・アンド・タブー」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。

Masterpiece, high definition, CONSPIRACY THEORY, surveillance society.

 PCたちが「鷲のニンジャ」として、巨大な陰謀に巻き込まれていくキャンペイグンの第九話となります。上掲の記事はそのストーリーに関する重大なネタバレを含むため、読む場合はご注意ください。つの次元では三人のニンジャがこのキャンペイグンに挑んでいますが、前回からチームが二つに分断されており、今回は彼女だけです。

◆デッドリーパー(種別:ニンジャ)
カラテ      11    体力       14
ニューロン     6    精神力       7
ワザマエ     12    脚力        6/N
ジツ        3    万札        2
DKK       0    名声       10

攻撃/射撃/機先/電脳 12/16/ 7/ 6
回避/精密/側転/発動 13/13/14/ 9
即応ダイス:3 緊急回避ダイス:2

◇装備や所持品
▶「鷲の腕」LV1(テッコ):カラテ判定と回避+1
 ▷ブラック・ブースター:シナリオ中1回限り
  体力1を消費し、その手番だけジツ値を+1する
   4以上になった場合は任意の★~★★★系のジツを一時的に獲得
  または ジツによって与えるダメージを最初の一発だけ+1
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定+1、射撃時さらに+1

◆チャカガン×2:二挺拳銃、射撃難易度H、連射2、マルチ・時間差可、側転難易度+1
 射撃スタイル:ダブルターゲット 最大2体までの敵を標的にできる
◆近代的タクティカルニンジャ装束一式:体力+3、緊急回避+2、射撃+2
 脚力ダメージ軽減1
◆オーガニック・スシ:体力3回復(使い切り)

◇ジツやスキル
☆ヘンゲヨーカイ・ジツLV3
◉◉タツジン:ミリタリーカラテ
 装備銃器が基本射撃難易度H以上であれば射撃難易度-1
 拳銃・二挺拳銃・ライフル装備を「素手状態」とし、装備ペナルティ無視
 隣接した敵にも射撃可能 所持銃器のカスタムパーツが武器スロットを消費しない
 ●移動スタイル:アサルト・タクティクス
  移動フェイズに通常移動しながらグレネードを1個まで瞬時使用可
 ●戦闘スタイル:オートマチック・ピストルカラテ
  カラテかワザマエで素手の近接攻撃を行う(ワザマエ使用時は殺伐なし)
  出目6で痛打+1 二挺拳銃装備時は攻撃難易度+1、連続攻撃+1
 ●ワザ:ロウレス・フロンティア ターン中1回まで
  回避出目65+で迎撃発生時、迎撃を2ダメージ(回避H)とする
 ●テイクカバー:状態異常を受けていない場合のみ使用可
  射撃回避判定直前に使用宣言し、射撃ダメージ軽減1をフェイズ終了まで獲得
  ターン終了まで不覚状態(敵からの攻撃・射撃難易度-1、能動的行動難易度+1)

◉ウィークポイント射撃:射撃出目66で痛打+1(モブなら即死)
◉電光石火:イニシアチブ+1、側転+2
 側転成功時に出目666なら回避ダイス3、6666なら4獲得
●連射2、連続攻撃2
○生い立ち:キラーマシーン教育
◉知識:セキュリティ、カチグミエリア 記憶
◉忠誠心:鷲のニンジャ 精神力+1

能力値合計:35

 前回の冒険での報酬はありません。クレイニアムやソニックブームと遭遇し、監視役のビクターとも別れ、ネオサイタマの路地裏に潜んでいます。

 では始めます。

◆◆◆

 BBBBB……デッドリーパーのIRC端末に、通知が届いていた。妨害電波の領域を離れたのだ。送信者はアシッドウルフ。内容は、傍受を恐れて極めて断片的だった。『ブラックサイトを放棄』『使用するIRC通信チャンネルを放棄』『こちらから指示があるまで待機せよ』……ブラックサイトを?

 何があったのか。ソード山脈の地底にあるあの秘密基地が、敵に襲撃されたというのか。なぜ。……仲間が誰かに捕まり、あるいは裏切って、バラしたのか? アースハンドやサイバーメイヘムとは、アシッドウルフを介してでなければ連絡が取れない。今、二人と直接コンタクトを取る方法は……!

「ホー、ホー、ホー」彼女が潜む路地の奥に、フクロウが舞い降りて来た。それは路端のゴミ箱の上に留まると、人間の姿に変身した。見覚えがある。「イヒヒヒ……随分と派手にやったね。お久しぶり、フィルギアです」

「……ドーモ」デッドリーパーはアイサツを返す。なぜ、彼がここに。身を翻して逃げようとすると、フィルギアは告げた。「アンタ、知りたいンだろ?着いてきな。教えてやるよ……ほら、あのおっかない"ボス"のことをさ」

 デッドリーパーは……迷った末、フィルギアの誘いに乗った。ボスが、アシッドウルフが何者で、何を計画しているのか。それを知れば、引き返せなくなるかも知れないが……好奇心が勝った。幸い、今はビクターもいないはずだ。フィルギアは彼女が頷いたのを見て安堵の笑みを浮かべた。「良し」

???

 ……実際治安の悪いエンガワ・ストリートを、一本奥に入った場所にある廃墟ビルの屋上。コヨーテに変身したフィルギアに導かれ、デッドリーパーはここにやってきた。ネオン看板や電柱、外壁を飛び渡るニンジャの身体能力でなければたどり着けない場所だ。そこが彼の、彼らのアジトだった。

「さ、到着だ」コヨーテがブルブルと雨飛沫を払うと、フィルギアがそこに立っていた。張り渡されたケーブルに旗やショドーを吊り下げ、電飾看板、廃バス、雨除けのテント、ソファー、人体模型、ワータヌキ等が無秩序に並べられた空間に、二つの人影があった。「タダイマ。お客さんだよ」

「……ドーモ」パーカーのフードを目深に被った若者がこちらを見て、訝しげに会釈した。「ルイナーです」もう一人。「デリヴァラーです。ここに客を案内するなんて、軽率じゃないか?」二人は警戒心を解こうとしない。当然であろう。「……ドーモ、デッドリーパーです」アイサツを返す。

https://note.com/gida0730/n/n90f5aab1ea84

「あいつらは?」「まだ戻らねェが、連絡はあった。やったとさ」「そりゃ良かった」「こいつは信用できるんだろうな?」「まずは胸襟を開いて信頼関係を築かなきゃ、始まらないさ。ヒヒ」フィルギアは構わず、冷蔵庫に歩み寄って開け、コロナ・ビールの瓶を取り出した。「飲む?」「いいえ」

「そうかい。ま、未成年ぽいしな」フィルギアは笑い、親指で瓶の蓋を開けると、グラスに注いで飲み始めた。ルイナーとデリヴァラーにもコロナの瓶が投げ渡されるが、彼らは口をつけようとしない。「おっかないけど、気にしないでくれ。まず……こっちからいくつか質問させてもらおう。いい?」

 デッドリーパーは空いた椅子に座り、頷いた。「よろしい。……改めて問おう。君は何をしているのか、させられているのか、理解して行動しているのか?」フィルギアは真剣な表情で問う。「……いいえ」デッドリーパーはそう答えた。「そうか。では……『鷲のニンジャ』については?」

 どくん。その言葉を聞いた途端、デッドリーパーの心臓が大きく拍動し、瞳が収縮する。黒い『鷲の腕』から何かが注ぎ込まれ、記憶が蘇る。

〈思い出せ〉お前は偉大なる鷲のニンジャだ…
…かつて世界を支配した〈鷲の一族〉の再興という崇高な目的は、その胸を締め付け、同時に心を昂ぶらせる…

「……知りません」彼女は虚ろな瞳で、そう答えた。そうしなければならない。「なるほど」フィルギアは眉根を寄せて頷いた。

「君のボスが何者なのか、誰なのか知った上で行動しているのか?」「いいえ」「では、ボスの目的……すなわち終着点がどこなのか、把握しているか?」「いいえ」「君がボスに会うまでの過去を正確に思い出せるか?」「……いいえ」どの問いにも、そうとしか答えられない。「了解」

 フィルギアは頷いた。「君の現在の状況はだいたいわかった。では、俺が知っていることを話そう。まず言っておくが、これは俺が調べたことに推測がだいぶ混じっている。全てが真実とは限らない。いいね」「……ええ」なぜ、彼はそれを教えてくれるのか。アシッドウルフの計画とは何なのか?

???

「……電子戦争の前にさ、アメリカって国があったのは知ってるだろ? そこにCIAッて組織があったんだよな」フィルギアはまず、聞き慣れない単語を口にした。「CIA?」デッドリーパーは聞き返した。「Central Intelligence Agency、中央情報局。アメリカって国の政府に属する諜報機関だ」

 フィルギアは淡々と続けた。「国内外にスパイ網を張り巡らし、情報収集や情報操作を行い、協力者を育て、洗脳や暗殺も行う。活動の殆どは市井の知るところじゃなかったが、実は対ニンジャ専門の部門も存在していたんだよな」「マッタ。電子戦争って、30年以上前……」「俺は年寄りなのさ」

 彼は肩をすくめた。不老不死のニンジャなら、電子戦争以前から生きていても不思議はなかろうが、なんたる陰謀論めいた話か。「俺はそこに所属していたわけじゃあないが、調べたことがある。CIAの長官にインタビューもした。……で、前アシッドウルフに出会った時、奴は俺を覚えてたんだよ」

 フィルギアは苦々しげに笑った。「アレン・ウェルシュ・ダレス。1960年代、もう70年以上も前、俺がインタビューしたCIA長官だ。そいつはその時はニンジャじゃなかったし、1969年1月に75歳で病死している」「じゃあ、本人じゃないな」ルイナーは鼻を鳴らした。「そいつの側近のニンジャだ」

「そうかも知れん。そう考えるのが自然だろう」フィルギアは否定しない。「でも、もし……そいつが死ぬ前に、ニンジャになっていたとしたら?俺はアシッドウルフと出会った時、モータルのあいつと同じにおいを感じた。奴がやってることも……例えば、洗脳だ」彼はデッドリーパーを指さした。

「君はアシッドウルフに洗脳され、手駒として動かされている。それは確かだ」「それぐらいのことは、悪党ならするだろ。CIA長官とかでなくても」デリヴァラーが口を開く。フィルギアは頷く。「そうかも知れん。が、あいつと手口がそっくりなンだ。『MKウルトラ』って洗脳計画とな……!」

 MKウルトラ計画!それは1950年代から60年代にかけ、CIAによりアメリカとカナダで極秘裏に行われた非合法人体実験である!被験者にはLSDや電気ショックが与えられ、記憶や人格そのものが変容した者もいた!関連文書の殆どは破棄されたが、1975年に数枚の文書が公開され話題を呼んだ!

 アレン・ダレスは1961年にキューバ問題での失策でCIA長官を解任されたが、主要な部局に部下を据えて後任の権力を削り、CIAの活動をコントロールし続けた!キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争……数々の重大事件に彼の関与が疑われる!当然、MKウルトラ計画についてもだ!

「俺はあの後、いろいろ調べた。で、だいたいわかった。電子戦争以前に世界を牛耳ってた悪党ども、『鷲の一族』……それに仕える『鷲のニンジャ』についてもな。幸い、そいつらはY2Kと電子戦争で滅んだが……いくらか生き残りがいた。それが君たちのボス、アシッドウルフ。アレン・ダレスだ」

「話が飛躍し過ぎてねェか?」ルイナーがぼやいた。「これは推測だって言っただろ。俺の調査と、ニンジャ第六感によって導き出された大胆な仮説だよ」フィルギアはそう答え、一枚の写真を示した。「CIAの紋章だ。国防の象徴である盾の上に、アメリカの国章のがある。『鷲の一族』の印だ」

 どくん。どくん。デッドリーパーの自我が曖昧になり、記憶がぼやけていく。自分は今、何を聞かされている?「……まあ、胡乱な陰謀論はともかくだ。アシッドウルフは君たちのようなニンジャを洗脳して従え、鷲の一族が君臨する世界の到来を目指して活動している。そういうことだ」

 フィルギアはため息をついた。「奴らが望むのは、絶対の秩序が支配する世界、平坦な砂漠……俺にはまっぴらさ。少なくとも、今のネオサイタマの有様は大きく歪められちまう」「そうすりゃ、ちったあ治安が良くなるかもな」ルイナーが混ぜっ返す。「そりゃあ、良くなるさ。劇的にな」

 フィルギアは肩をすくめる。「犯罪者は駆除され、街は清潔になる。まともな人間には暮らしやすくなる。表向きはな。けど、それはあいつの洗脳によるものだ。薬物や拷問でなくとも、マスメディアやIRCを使って自我をファックし、理想社会に従順な奴隷にする。俺は嫌だね。まっぴらごめんだ」

 ニンジャはミームで繁殖する生物だ。アシッドウルフの洗脳は、そのミームを歪め、上書きする。自我を失わせ、反抗の意志を、カラテを弱める。「反体制を呪文めいて唱えるカルト・テロリストはクソだとしても、健全な反抗精神も骨抜きにされちゃあ、俺が困るんだ。音楽も聞けなくなる」

「それは困る」デリヴァラーが頷いた。「だろ。だから、俺はこの計画を妨害したい」フィルギアは宣言した。「君を連れてきたのは、目を覚まさせるきっかけを与えるためだ。アシッドウルフは、君を……」その時!

???

 エンガワ・ストリートに一台の家紋タクシーが停車し、二人の人影が降りた。フィルギア、ルイナー、デリヴァラーは屋上のアジトからそれを観る。「ニンジャだ」「このお嬢ちゃんを追って来たか?」「……!」デッドリーパーの瞳に光が戻る。アシッドウルフが迎えを遣わしたのか、それとも。

 気配を探るならニューロン判定HARD、装備を観察するならワザマエ判定HARD、ニンジャ第六感に頼るならジツ発動判定UH。ここは…ワザマエだ。13D6[6152364314356]成功。

 彼女はサイバネアイとニンジャ視力で家紋タクシーを観察する。窓からはスーツを着た柔和そうな若い男が顔を出し、車を降りた二人に何事かを指示している。彼の片手はオブシダンめいた黒く美しいサイバネ腕に置換され、襟元には『SP』と刻まれた銀色のピンが取り付けられている。何者か。

「ニンジャが三人か。どうするね」フィルギアはデッドリーパーを見る。「俺たちはここをいったん引き払う。ついてくるか、別々に逃げるか。それともあいつらについていくか。君の自由意志に任せる」「……私は……」デッドリーパーは迷う。フィルギアのことを信用したものか?あるいは……?

【続く】

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