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DJ社長の株式問題とは!?

行政書士の知識を活かして、解説します。


まず、事案については、こちらから。


動画内で以下について語られています。

・借金の差押え等を避けるため、別の会社を設立した。

・返済が終われば、資本金の100万円でDJ社長が買い取ることを約束した。

・経理や給料などのことは、すべて相手方に任せていた。

・メンバーの給料は数十万円で息子には数百万を渡していた。

・借金を返済し、買い戻そうとすると、重たい条件を提示された。

  条件1:相手方の退職金4800万円を支払うこと。

  条件2:レペゼン地球の楽曲の権利や印税等はDJ社長に渡さないこと。

  条件3:今までの行為で疑義が生じた場合でも追及しないこと。

・DJ社長は、クビにされ、解散となった。

・レペゼン地球としては活動できない。

・現在、裁判中。


今回の件について、民法と会社法で見ていきましょう。

民法:契約「口約束でも成立するのか?」

会社法:株式「社長は解任されるのか?」


それでは、民法(契約)について

契約の条文について ※要約しています。原文通りではありません。

521条 誰でも法令の制限内で契約の内容を自由に決定することができる
522条 契約の成立は、法令で決められている場合以外は、書類の作成は任意であり、契約の申込みを相手方が承諾したときに成立する
540条 契約や法律の規定により解除権があるときは、意思表示により解除し、それを撤回できない
543条 契約内容が履行されなく、その原因が相手方のせいである場合は、相手方は契約の解除ができない
545条 解除した場合は、元に戻さなければならない。第三者に影響が出てはならない。お金を返す場合は、利息も払わなければならない。お金以外の物を返す場合は、それにより利益が出たら返さなければならない。損害賠償の請求もできる。

522条からすると、契約は口約束でも成立します。ただ、後々の争いを避けるために、契約書を作成することがベターです。争いを避けるため以外にも、備忘録としても有効です。

裁判には、証拠が必要です。その証拠が契約書というわけです。今回のケースでは、口約束のため、立証が難しいと思います。せめて録音データ等があれば良いのですが・・・。

また、契約を解除することはできますが、解除すると、なかったことになるので、その選択はないだろうと思います。

DJ社長がどこまで契約を立証できるかが争点です。当時の契約内容がどうだったのかを。

なお、契約書はたいてい作成者の有利になるように作られています。公立学校の事務職員として契約業務を担っていたのですが、この契約書も学校に有利な契約書でした。特に大きいところになると、契約書の雛形が定められているので、なかなか変えられません。せめて、契約書を交わす場合は、よく読んでください。難しいように作られています。その場合は、行政書士や弁護士などの専門家に確認してもらってください。スタートアップ時に法律を一から勉強する余裕はないと思いますので、それは専門家にお任せして、余裕が出てから勉強していくのが特則かと思います。法律の勉強には時間を要します。僕も行政書士になるまで4年費やしています。それでもまだ足りません。法律の条文はとても読みにくいです。賢い人たちが作っているので、基本的に難しい言い回しです。上記の条文は、僕が少しアレンジして読みやすいようにしています。それでも読みにくいですが・・・。

もし、契約書を交わす場合は、双方で内容を打合せしてください。もし相手方が作成された場合は、打合せの内容と照合してください。

契約書の内容として、入れておくべきことは、内容・金額・期日はもちろん、解除条件、損害賠償、瑕疵担保責任(契約不適合責任)、費用負担、裁判所管轄についてです。また、契約の有効性や不利な内容がないか確認しなければなりません。


さて、次に会社法(社長の解任など)についてです。

条文について ※要約しています。原文通りではありません。
条文上の発起人を旗揚げ人と表記しています。また、条文の原文を読む場合には、社員=株主と読み替えてください。会社員は社員ではなく、従業員としています。

26条 株式会社を設立するには、旗揚げ人が定款を作成し、全員が署名や記名押印しなければならない
27条 定款には、目的・商号・本店所在地・出資金額・旗揚げ人の情報を記載しなければならない
30条 定款は、公証人(役所)の認証を受けなければ、役に立たない
32条 旗揚げ人は、株式数や金額について、全員の同意を得なければならない
105条 株主には、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会の議決権がある
109条 会社は株主を数に応じて、平等に取り扱わなけらばならない
308条 株式1株について1個の議決権がある
309条 株主総会の議決には、議決権の過半数が出席し、その議決権の多数決で行う。特別な場合は、3分の2以上の賛成が必要。
329条 取締役、会計参与、監査役、会計監査人は株主総会の決議によって選ばれる
339条 取締役、会計参与、監査役、会計監査人は株主総会の決議によっていつでも解任できる。正当な理由なく、解任されたものは損害保険請求ができる。
349条 株式会社(取締役会設置会社以外)は、定款や取締役の互選、株主総会の決議などにより、取締役の中から代表取締役を決められる
356条 取締役が利益相反となる行為をする場合は、株主総会の承認を得なければならない
361条 取締役の報酬は定款で定める。定めていない場合は、株主総会の決議によって決める。

329条・339条・361条を見ると、決定権は株主にあります。そして、308条・309条を見ると、株式の過半数で議決は決まります。つまり、株式をより多く持っているほうが勝ちます。取締役も報酬も決められます。株式を握られるということは、生殺与奪の権を奪われるということです。

DJ社長の件では、解任については、条文上可能です。また、やむを得ない理由がなければ、損害保険請求もできます。

356条に利益相反禁止があるので、レペゼン地球の活動中には、新たに行うキャンディーフォックスは自ら始動できないのです。

株式会社は、多数派の株主が強いのです。

なので、仲間と起業する際は特に注意しましょう。軌道に乗った時に問題が生じます。過半数を取れれば勝ちなのです。例えば、3人で始めた場合、自分が34%、友人33%ずつで、一見自分が多く持っていたとしても、友人同士で手を組まれれば、議決権を持っていかれます。それで解任でもされたら元も子もありません。もちろん、株主=出資者なので、お金は必要ですが、できることなら手を組まれても対処できるくらい株式を取得しておきましょう。具体的には、51%は持っておきましょう。

仮に、解任されても339条で損害保険請求はできますが。裁判の動向を見ていこうと思います。DJ社長は気の毒ですが、解任については仕方ありません。そもそもの契約については、何とか立証し、危機を脱して欲しいと願うばかりです。また、DJ社長が勝てたとしても、相手方は個人情報を特定されており、社会的制裁を受けているとのことで、100%の結果は出ない気がします。

なぜ特定されるのか?それは登記をしているからです。法務局に登記簿を請求すれば、だれでも情報が手に入るのです。資本金や会社の所在地はもちろん、取締役の名前や住所も記載されているのです。そのため、個人事業主より会社のほうが信用があるわけです。情報が世に出ているため、何かあれば追跡が容易なため。

今回の件で、株式会社に興味を持った方も多いのではないでしょうか?そのため、会社設立のお話を多めにお送りしました。

会社設立の流れをまとめてみました。

定款の作成(行政書士)→公証人の認証→設立時株式の決定→株式の引き受け→出資の履行→設立時役員の選任→設立時代表取締役の選任→設立登記(司法書士)→会社設立→創立総会→取締役の選任→代表取締役の選任とステップが多いです。募集設立等は、この限りではありません。

行政書士はクライアントの契約書の作成、確認も業務です。ただし、争いが生じた場合は、弁護士の業務となります。また、会社設立の際の定款の作成や議事録の作成も行政書士の業務の範囲内です。これまた、後続の登記手続きは、司法書士の業務となります。日本では、士業により業務が分けられています。

やはり思うのは、知らないことは怖いと改めて思いました。そのため、僕は学び続けます。そして、そのような残念な思いをする人が減るように皆さまのお役に立てればと思います。

長文ながら、お時間いただき、ありがとうございました。


参考


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