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猫の日の猫

今日という日付はいたるところで語られている。2022-0222と、これだけで2の数字は六回出るが、その上、旧暦では一月廿二、火曜日は中国語で「星期二」とくるから、中国語のカレンダーを見ると、2がさらに三つも加わる。猫の日は年に一度やってくるが、それが今日にかぎって「にゃん」を九回も繰り返すことになる。猫好きには特別な一日なのだ。

暇を見つけて日本の映画を楽しむ。数日まえ、内容に引かれて「十二単を着た悪魔」を見た。WOWOWシネマで週末に放送され、見た人も多いのではないかと思う。典型的なタイムスリップもので、この世の数時間の内に、源氏物語の世界に入り込み、しかもその中で時間移動して大事な場面をいくつも目撃し、参加したというストーリーなのだ。わくわくさせる設定だが、鑑賞して、物語の目指すところも、そもそも「悪魔」とタイトルのワードの意味もよく分からないというのが正直な印象だ。だが、それでも実写の源氏の世界。その中でも、綱に繋がれたままの猫が何回となく登場した。太糸で、無造作に結いつけられた様子は、なんとなく微笑ましい。

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絵、全体場面『源氏物語』に登場したこの猫は、物語を享受する上でとても大事な一場面なのだ。すぐに思い出すのは、江戸時代に入って膨大な数で制作され、愛読された絵入り本なのだ。つぎはその中のわずかな一例、「若菜上」からである。国立国会図書館所蔵で、解題によれば、『絵入源氏』(山本春正、承応三3年、1654)により、元禄九年(1696)以前に出版された三十冊本だ。絵に描かれたな様子がそっくりそのまま映画の中に受け入れられたということになる。

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さらに同時代のものとして、あの有名な『猫のさうし』も忘れてはならない。御伽草子二十三冊のうちの一冊だ。かつてこれを全巻朗読し、本文にあわせて朗読動画を制作した。興味ある方はぜひ開いてみてください。それのパート2の1:50前後から、猫の堂々たる宣言がある。天竺からやってきたとか、喋るのは梵語で小国の日本の人間には分からないとか、じつに破天荒なもので、いつ聞いても吹き出したくなる口上だ。

ちなみに、この一冊を現代語訳にしてみた。キンドルの「読み放題」でアクセスできる。(『猫と鼠の世にも奇妙な大論争』)

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個人的には、ついに猫を飼うことが叶えていない。ただ、友人には猫好きが多い。その彼、彼女たちがSNSなどで公開している猫の写真は、いつも思わずスクロールの手を止めて覗いていることをこの機に記しておこう。

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