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作者の漢字愛が伝わる。『日本の漢字』 笹原宏之


誰も読めない幽霊文字が、なぜ辞書にのったのか?
日本人は2つの漢字をいくつも1つにまとめてきた。
「龍」を4つくっつけた漢字がある。
映画の字幕文字にもわけがある。
JISの漢字はどうやって選ばれた……などなど。

とにかく目からウロコのことばかり。日本で生まれた漢字=「国字」がこんなにも多彩で歴史豊かだったとは知らなかった。こんなにもいろんな人が漢字をつくり、誤字脱字を交えて漢字を使ってきたとは知らなかった。

最初は調査報告みたいな淡々とした記述も、驚きの内容が積み重なっていくことで逆に深みをましていく。そういう意味では著者の文章が一筆一画で、本書全体で1つの漢字のよう。

日本、中国、韓国だけでなく、果てはベトナムの漢字まで。小説、歴史資料から方言、コミック、2ちゃんねる用語、携帯文字まで幅広い調査。普通の研究者なら調べ(られ)ないような範囲にまで、当たり前のように著者の視線が届いているのがすごい。

しかも史料を調べただけでなく、それを実際に学生さんつかって実証までするところなんか、本当に徹底して探求者・研究者さん。なんと、著者は、中学時代にあの『大漢和辞典』13巻を通読した方だとか。それなら、これだけの内容もむべなるかな。

そして、本書を読んで長年の疑問がようやく氷解した。3年B組金八先生のドラマで有名な「人という漢字は2人のニンゲンが支えあってできている」云々の話を、わたしはずーっと胡散臭い、説教臭くて変だと思っていた。漢族ってのはそんなに浪花節じゃないし、あまりにも日本人好みの道徳すぎるし。

著者によれば、もともと「人」という漢字は腰をかがめ気味、少し前かがみになった一人の人間のデザインだとか。やったー。私の印象は正しかった!


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