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夕遊の言の葉

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言葉や外国語、海外生活に関する記事をまとめてみました。
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#外国語学習

ことりっぷな外国語チャレンジ。『ことばの白地図を歩く』奈倉友里

この本は、迷っている人におすすめです。例えば、大学には行きたいけど、何を勉強したらいいのかわからない人。大学には入ったけど、自分のやりたいことが見つからない人。そして、大学は卒業したけど、何かまた別のことを勉強して自分の方向性を変えてみたい人、などなど。 今井先生の『英語独習法』とは真逆ですが、勉強っていうのは目的が明確な場合と、そうでない場合があります。目的がはっきりしていれば、回り道をするのはアホらしい。でも、目的がゆるっとふわっとしていたら、ゆるふわなりにスタートしな

英語的感覚を可視化する。『英語独習法』今井むつみ

最近、ラジオ代わりに聞いている言語学系のyoutubeに出演されていた今井先生。めちゃくちゃおもしろい方だったので、本を読んでみました。期待どおりに著書もおもしろかったです。 今井先生を知らないと、タイトルの「独習」の文字を見て、「ゼロから一人で英語を勉強できる本」と勘違いしてしまいそうです。でも、この本をざっくり読んだ印象は、そこそこ英語のできる人が確実なレベルアップを目指す本です。しかも、ライティング重視。この本を読んで、自分に足りない部分に気づいて、英語レベルを自分な

コツコツ努力だけ、が大変。『ロシア語だけの青春 ミールに通った日々』黒田龍之助

大好きな黒田先生の本。帰省途中のバス&フェリーで読了しました。さくさく読めて、しかも語学学習の基本を思い出させてくれるいい本でした。 黒田先生の本がおもしろいので、語学に関する本やエッセイはみんなおもしろいかと勘違いしてしまいますが、実は黒田先生レベルに楽しく読ませてくれる本はなかなかありません。期待したのに、残念というものも多々。それもそのはず。実は、語学学習って、とても地味で孤独なものだからです。 小さな子供だったら、脳みそスポンジ状態で、お母さんやお父さん、おばあち

身近にあふれる読めない文字の楽しみ。『ポケットいっぱいの外国語』黒田龍之助

理系の大学でロシア語を教えていた黒田先生。NHKのロシア語講座も担当されたことがあるはず。そんな黒田先生の名著『外国語の水曜日』以来、20年近く黒田センセの本のファンです。 ずっと東京工大の先生だと思っていたのに、この本で略歴を見たら、明治大学を経てフリーランスの言語学者になっていたのにおどろきました。でもいいですね。自分の好きな研究と、執筆活動で食べていけるなら。大学は学内政治もあるし、事務仕事も山ほどあるし、少子化の今は高校まわりとかもするらしく、他府県の高校を回って大

外国語と異文化のおもしろさが満載。『翻訳できない世界の言葉』エラ・フランシス・サンダース

以前ネットで評判になったとき、自分用と娘用に入手しました。かわいい絵がなかなかいいです。作者のエラさんは翻訳家ではなく、イラストレーターさんで、当時はまだティーンエージャーだったとか。いろんな国に住んで仕事をしている方のよう。すごく素敵な感性です。 エラさんは、いろんな国でその国独特の、他の国の言葉にはない表現を集めて、それをイラストにしています。たとえば、マレー語の「ピザンプラ(PISAN ZAPRA)」という言葉は、「バナナを食べるときの所要時間」。1,2分の短い時間を

小気味よい日本語の深いエッセイ。『越境 ユエジン』東山彰良

東山彰良さんは直木賞をとった『流』がすごくおもしろかったし、その後に読んだエッセイ『ありきたりの痛み』もよかったです。その後、すっかりご無沙汰していましたが、偶然、少し前に出たエッセイ本『越境』を知りました。 『越境』は、『西日本新聞』で連載していた「東山彰良のぶれぶれ草」や日経新聞夕刊の連載「プロムナード」などをまとめたもの。どれも2ページちょっとで、持ち歩いて電車やバス、銀行なんかの待ち時間に楽しめます。 台湾生まれで、5歳で日本に来た東山さん。九州の大学で中国語の先

役に立たない語学のはなし。『その他の外国語』黒田龍之助

大好きな黒田先生のエッセイ。仕事で疲れた頭をリハビリするために読みました。コーヒーを飲みながら、自分も東欧やらヨーロッパやらを歩いている気分になれて楽しいし、いろんな言葉にまつわるエピソードも楽しい。例えば、海外で見る漢字が全然あさっての方向で使われている驚きとか、その国独特の言葉とか、文字とか。 黒田先生は複数言語に優れていらっしゃるので、どれも外国語も同じくらい勉強して楽しいことを教えてくれます。どの言葉がいいとか、どの言語じゃないとかダメとか、そういうのがありません。

先生が大学を離れるとき。『ぼくたちの英語』黒田龍之助

大好きな黒田龍之助先生の本。 なぜか、ふと、1年に1度くらい限って読みたくなって手に取ります。大体忙しいときかもしれない。身体の中に、なにかビタミンやら栄養が足りなくなると、それが食べたくなるんだっていうけど、それなら黒田龍之助さんの本が読みたくなるときは、何か、頭の中や気持ちの中に何かが足りなくなるとき? かな?? 本の内容は、期待通りだったけど、どこかの感想にあったように、もう少しプライベートな同僚関係(?)を省いて、英語的エピソードのみに濃縮してもらったほうが読みやす

こんなクラスで勉強したかった。『外国語の水曜日』黒田龍之助

この本を喫茶店で読んでいた私は、笑いすぎて危うくコーヒーを吹き出しそうになりました。別にジョークが書かれていたわけではなくて、ただ、大学の研究室での楽しい外国語学習の1コマが書かれていただけ。でも、とてもほほえましくて、ありがちな楽しい外国語を学ぶ時間。 他の授業と違って、外国語の授業は他人の翻訳間違いも楽しい。しかも、大抵の場合、いつもは良くできる人が、ある時とんでもなくおかしな間違いをして、みんなにネタを提供してくれます。この本でもやっぱりそんな話が