さあ、今宵も物語をはじめましょう。 はじまりの父と母の時代から、いくつもの夜と昼とが過ぎたあと。 そして、少しだけなつかしい昔のこと。 風駆ける草原でめぐり合った…
長年自らの相棒を務めてきた身の丈もあろうかという大鷹を見て、イズモは何度目か知れない溜息をついた。 「カイリ」 鷹の名前ではない。その不自然に広げられた片翼の後…
黛カイリ
2022年1月12日 10:20
さあ、今宵も物語をはじめましょう。はじまりの父と母の時代から、いくつもの夜と昼とが過ぎたあと。そして、少しだけなつかしい昔のこと。風駆ける草原でめぐり合った、あるアウラ族のお話です。いかついテール山脈の奥地、雄大な森や氷河の折り重なるそのどこかにあるという、誰も知らない隠れ谷。そこには、いくつかの小屋が身を寄せ合うようにして並ぶ、小さな小さなイローがありました。そこに暮らしているの
2021年11月17日 13:20
長年自らの相棒を務めてきた身の丈もあろうかという大鷹を見て、イズモは何度目か知れない溜息をついた。「カイリ」鷹の名前ではない。その不自然に広げられた片翼の後ろに隠れている子供の名だ。「またアルスランを連れて遠出したな?」易々と付き合った相棒の方もついでにじろりと睨んでやると、勇猛な獅子の名を持つ大鷹も些か気まずそうな素振りをする。そうしてもう諦めろとばかりに広がった片翼を取り返し、