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日本人留学生よ、日本を学べ

 海外留学といえば、もちろん留学する国の言語を学び、文化を学び、その国はなんたるかを知ることが一般的だ(もちろん世の中には、就職とかの箔をつけるために留学する人もいるが、それは論外として扱わない)。しかしながら、実際に留学して思うのは、やはりそれらを知るためまず必要なのは「日本について学ぶ」ことだと実感する。

日本を学ぶことに慣れない日本人

 壮大な括り方をしたが、実際日本人は日本を学ぶことに慣れていないと強く実感する。そもそも日本という国は、なんだかんだ言っても先進国として成熟しており、教育の段階で日本国民というアイデンティティを付与することに躍起になる必要がないからだというのは大きいだろう。
 しかしそれは結果的に、特に日本の政治などについて教育の場で触れる機会を少なくするために、留学する段階でこれらについて何も知らないというケースは極めて多い(特にこれは上位校の交換留学などではないケースで見受けられる)。
 ではこれらが留学先でどういう影響を及ぼしかねないのか。

①会話のレベルに影響を与える

 留学先で知り合う当地の人は、時に日本の政治や歴史認識について聞くことがある。私自身中国に滞在する中で、そういうケースによく接した。
 仮にそこで「日本のことは知らない」と答え続ければ、会話相手はもうそういう深い話題をすることは避けて、結果的に当たり障りのない会話に終始する場面は増えるだろう。

②相手のナラティブに呑まれかねない

 私が懸念することはこれにある。我々を日本人だと把握して会話を試みる人たちには、少なからず彼らの思う日本人像や日本のイメージが(良いか悪いかは別として)存在する。しかしながら、外国で手に入る日本の情報には少なからずバイアスがかかっており、それを直接ぶつけられることもしばしばある。
 その際に本来なら多くの情報が手に入るはずの自分たちが、その情報に触れてこなければ、相手の情報が誤っていてもそれを訂正するどころか、相手のバイアスがかかった情報を鵜呑みにしてしまうケースもあるだろう(特にこれは留学生の話す政権批判などに見られるケースがある)。

③相手の抱く日本のイメージに対し、感情的になるケースがある

 日本に対して知らないことの弊害として、留学生自身がイメージする日本こそが絶対的だと思い込む傾向にありがちというのも指摘したい。
 本来であれば、多くの情報を学ぶ過程で、異なる意見を受け入れる土壌も生まれ、少なからずこういった態度は解消されるものの、そうでなければむしろ自分の思い込みなどを絶対視してしまうケースが生まれるだろう。
 そうなってくると、相手が日本に対してなんらかの誤ったイメージを持っていた場合に、それに対して感情的に接してしまうケースが散見されるようになる。

ちゃんと日本を学び、冷静さと相互理解を身につけたい

 以上のようなことを防ぐためにも、留学する前に一番大切なことは、その国の語学を予め修めることもそうだが、それよりも日本について学ぶことだと常々思う。
 日本について多角的に情報を仕入れ、相手が持つ日本像に対し冷静に接し、相手がなぜそういうことを考えるのかということに意識を向け、相互理解を深めることで、真の留学での学びが得られるのではないか。

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