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舞台照明のデザインのこと その1 そもそもデザインってなんだよ

はじめに

Facebookで照明のデザインの教本みたいなのってないんですか?
と聞かれて、不勉強なのもあり、Francis ReidのStage Lighting HandBookしか、思いつかなかった。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00G24TFR2/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
この本には、照明のデザインというよりは、基礎基本について書かれていて、どういう角度から、どういう色で、どういう機材で、などというような、基礎知識が書かれている本。
この本のお陰で照明という仕事が技術的に面白いと思うようになり、様々なことを吸収出来るようになったと言ってもいいと思う。
邦訳版が出てもいいと思うけど、出ないものだね。

というわけで、これを書き始めた。
教本を書くつもりはない。自分がどうやってデザインをしているのかの確認をしていこうというために、これを書き始めている。
言うなれば、備忘録みたいなものだと思ってもらえるとうれしい。

照明のデザインってなんなんだよ

そもそも舞台照明において、デザインするってどういうことなんだよ。
これを一概に説明するのは、実は少し難しい。灯具を使って、明かりを当てること全般をデザインというのか、照明機材を使ったものを言うのか。

はたまた、ムービングで画面全体を動かしていくのか、LEDディスプレイやプロジェクターを使って映像も込みで、デザインというのか。

20年くらい前は簡単に言うと、光が出るものについては照明のデザインのうちに入るんじゃないか。くらいの言い方が出来たけれども、今とはまったく事情が違う。

空間全体の光のデザインをしていくという仕事ではないのではないか。と、考えている。
舞台照明のデザインを規定するものは、昔から特にない。電球を使おうがディスプレイを使おうが、それが演出家や美術家の領分である場合もある。

逆に言えば、それらの要素をトータルでコーディネートするようなことをしながら、全体の光の構成をデザインするのが舞台照明という概念に一番近いものかも知れない。

僕にとっての舞台照明のデザインとは

舞台照明デザインの僕の専門性は、演劇に特化していて、次にモダンやコンテンポラリーといったダンスの領域。
なので、ここから先の話は演劇(ストレートプレイ)とダンスに特化したものになる。

照明のデザインとして重要視するのは観客から見たときの観やすさをコントロールするということが一番大事だと考えている。
どんな作品でも観たいものが観られないのはストレスになってしまうからだ。
だから一番に番考えているのは、照明自体が作品の邪魔をしないこと。
観客が、あの俳優の、あのダンサーの、顔が、動きが観たい。
そうした気持ちを喚起して、大事なところで観えるようにすることを大事にしている。

光というものは、何かに遮られないとその存在が見えない。
もしくは光源として見せれば見えるけど、眩しいし、それだと舞台が見えなくなってしまう。

そんなことが僕にとっての照明のデザインの基本になる。

照明のデザインの二つの側面

照明をデザインすると言った時に、大きく二つのことがある。
一つはある切り取った画面の空間構成。
もう一つは、タイムライン。時間軸に沿った明かりの変化。

舞台は時間的空間的に連続していて、これが間断なく最後まで続いていく。
舞台上実時間は、同様に過ぎていく。しかし、作品自体の時間の進行は、必ずしも実時間とリンクしていないことが多い。
数秒の出来事を長い時間かけて見せることもあるし、逆に数年単位を数分で飛び越えるような場面もある。時間軸の進行に合わせた画面構成がないものには違和感が起きてしまう。

二つの側面に話を戻す。

照明にはざっくり二つの概念がある。
シーンとキューの二つがある。
シーンは、本明かりという言い方もある。
ある切り取った画面の照明の構成を表している。
キューは、本来は明かりの変化のきっかけという意味で使われる言葉である。このシーンとシーンの入れ替わりを指すこともある。
これ以外にも変化し続けるようなものチェイスなどもあるが、僕の照明のデザインでは極力使っていないので、ここでは省く。
(もしかしたら、別の章立てをして書くこともあるかもしれない。)

そんなわけで続きます。

前段の話が長くなりすぎてしまったので、二つにわけることにしました。
書いても書いても序段が終わらない罠。

続きは、すぐにアップします。
でも、本題の照明のデザインの仕方にいつたどりつくかは未定です。

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