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いま注目のダイナミックペイウォールとは? サブスク課金の新トレンドを解説

こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスをご提供しています。

今回のテーマは、デジタルサブスクリプションを実装するうえで欠かせないペイウォール(課金の障壁)です。おさえておきたい基本パターンに加えて、近年注目を集めている「ダイナミックペイウォール」について解説します。

ペイウォールの表示ロジック「5つの定石」

デジタルメディアのサブスクリプションで大切なのが、読者に課金を促すペイウォール(課金の障壁)をどこに、どんな基準で設けるかということです。

海外メディアでは、以下の5つのパターンが主流です。

1. フリーミアム型:基本無料だが、追加機能や特別コンテンツを有料で提供する
2. メンバーシップ型:コンテンツ閲覧のために会員登録を求める
3. メーター課金型:無料で閲覧できるコンテンツ数を超えたら有料購読を提示
4. タイマー型:公開から一定時間が経過した記事の閲覧は有料購読が必要
5. ハイブリッド型:上記を組み合わせて有料購読を訴求

多くのデジタルメディアでは、上記のロジックのいずれかを採用してペイウォールを表示しています。詳しくは「海外メディアのサブスクリプション、5種の”定石”モデルを解説します」で解説しています。

個別化・自動化を実現したダイナミックペイウォール

ペイウォールの表示ロジックについては、いまだ正解はありません。いかに購買を促す体験設計ができるか、パブリッシャー各社が模索を続けています。こうした状況下で注目を集めているのが「ダイナミックペイウォール」です。

ダイナミックペイウォールとは、ユーザーの属性情報や行動データをもとに一人ひとりに個別化したタイミングでペイウォールを提示する仕組みや機能のことです。読者ロイヤルティ(メディアに対する愛着や親近感)や購買意向を判断し、最適なタイミングで有料購読のオファーを提示することで、マーケティングの自動化・効率化が期待できます。

導入事例としては、New York Timesが自社開発のCMSにダイナミックペイウォールの表示機能を搭載しているほか、Wall Street JournalはCXENSE社(2019年にPiano社が買収)のソリューションを用いてダイナミックペイウォールを構築しています。

ダイナミックペイウォールの利点と課題

ダイナミックペイウォールを導入することで、どんなメリットや課題が見込まれるのでしょうか?

最大の利点は、体験のパーソナライズによってマーケティング効率を高められることです。これまで人力でA/Bテストやパーソナライズを試みてきたパブリッシャーにとって待望のソリューションです。

Wall Street Journalは未購読の読者を60以上の項目で分析し、有料購読者に転換する可能性をスコアリングしているといいます。スコアに沿って柔軟にプランや割引を訴求することで、購読者の増加が期待できるでしょう。

導入の利点
・読者ロイヤルティや購読率の向上が見込める
・マーケティングの自動化ができる
・広告表示や読者アンケートなど、他のページ要素と組み合わせた体験設計の可能性が広がる

一方、最大の課題は多額のコストがかかることです。

ダイナミックペイウォールの実現には大量のデータと機械学習のテクノロジーが必要です。New York Timesは5〜10名のスタッフが約5カ月にわたり開発に関わったといいますから、開発費はどんなに少なく見積もっても数千万円はかかるでしょう。事業の採算性を保ちながらダイナミックペイウォールを運用できるパブリッシャーは限られそうです。

導入の課題
・開発や運用に膨大なコストがかかる
・ある程度のデータを集まらないと機能しない
・コンテンツやUI/UXの評価が難しくなる

また、レコメンドエンジンなどにも言えることですが、テクノロジーによってユーザー体験を個別化・自動化しすぎてしまうと、人の手による仮説立案や分析が難しくなることにも注意が必要です。

総じてダイナミックペイウォールは、サブスクリプション事業が確立したパブリッシャーにとって、マーケティングをさらに効率化させるために役立つソリューションだといえるでしょう。

テクノロジーは魔法ではない、事業設計と両輪で考えよう

今回は、サブスクリプションに欠かせないペイウォールについてご紹介しました。

ダイナミックペイウォールは魅力的なソリューションですが、導入さえすれば購読者が増える「魔法の杖」ではありません。テクノロジーへの投資は、デジタルサブスクリプションが事業として成立していることが大前提です。

・現状のデジタルメディアのブランドが育っているか
・現状のコンテンツが課金に値するものか
・サブスクリプションモデルを導入したら、どんなユーザーが、どれくらい課金してくれるか

これらを分析・可視化し、有料課金に見合うコンテンツを生み出す体制づくりが必要です。事業設計が「サブスクリプションの命」であることを心に留めていただけると幸いです。

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今回のnoteは以上です!

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