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波乱の中学時代(自伝①)
1.パッとしない子が学級委員に
私は広島県の可部町という所で生を受け、生後間もなく東京の足立区に引っ越してきた。
獣医さんの前夫から逃げるようにして父と再婚した母と、兄と姉の5人家族は6畳一間の安アパート暮らしからスタートした。
小学生の頃、葛飾区の亀有の都営住宅に移る。
初めての庭つきの2DKの住宅は子供心には豪邸に引っ越してきた印象だ。
周り一面は田んぼが広がり、農家がぽつりぽつりと点在する。
まだ貧しかったので、薄っぺらいランドセルをしょって兄弟3人は2キロ先の小学校まで田んぼ道を通った。
当時は珍しいダットサンのブルーバードで通勤してくる男の担任の先生はキザッタらしく、学級委員の女の子には優しくさんづけで、男の生徒は呼び捨てするのが子供心にえこひいき先生と映り、そのせいかパッとしないおとなしい生徒だった。
ところが3年生になって授業の上手な優しい女の先生に代わると、途端に授業中よく手を上げる活発な生徒になった。
運動も勉強もでき明るくはじけるような性格でみんなを惹きつけるO君。
秀才で如才なさが売り物のM君にはかなわないが、
気づけばクラスのNO.3になり3学期の学級委員になっていた。
2.奇跡の演説
そのまま6年生まで続いが、中学校に入るやいきなり1学期の級長になってしまった。
もともとおとなしい性格の私は教室の前に立って発言したり、他の生徒を注意したりがとても苦痛だった。
特に授業で先生が欠席して自習時間になると最悪だった。
自習の課題を教室の前に立って言うのが恥ずかしくて黙って黒板に課題の内容を書くとそそくさと自席に戻る。
生徒達がおとなしく自習してくれればいいが、必ず何人かはしゃべったり、席から離れてふらふらして他の生徒にちょっかいを出す生徒もいる。
教室がうるさくなると隣の教室で授業している先生が、いきなりガラッと教室のドアを開け「静かにしろ!」と怒鳴る。
それだけならまだしも「級長はだれだ、注意しろ!」という先生もいる。
『なんで俺まで注意されなきゃいけないんだ!』と内心は不平たらたら。
中2になるとだいぶ級長稼業も板についきて、優等生気取りがそろそろ定着した頃、ノリで生徒会役員の選挙に立候補させられることになってしまった。
体躯館の全校生徒が見守る中、壇上に上がり立候補演説をしなければならない。
まだ純真なので逃げるという発想がない。
やるっきゃない、と覚悟を決まるのだがこれは当時としては相当のプレッシャーだったと思う。
その時担任だった体育の男の先生は優しく、立候補演説の数日前、わざわざ私を屋上に呼んで先生の目の前に立たせて演説の予行練習をしてくれた。
迎えた立候補演説の日。壇上の下の脇には候補者が椅子に座り順番を待っている。緊張を通り越し恐怖で内心震えていた。
いよいよ自分の名前が呼ばれた。
壇上に上がるまでほとんど無我夢中で宙を浮いている感じ。
全校生徒が見守る中、壇上への階段をうつむいて一段一段上るとき、まるで死刑囚が死刑執行室に向かう階段を一段一段あがるように、はちょっと言いすぎか。
ところがいざ壇上の演台の前にたち全校生徒の居並ぶ列を見た瞬間、なんと表現したらよいか!
まるで自分とは無関係の風景を見るような妙な無機質を感じた。
それまでドキドキしていた心臓の鼓動もいつしか静まり、気づけば暗記してきた原稿通りの内容を自分でも惚れ惚れする朗々とした声音で口が動いていたのだ。
シーンと静まり返った場内で自分とも思えぬ声がただ響いている。
気づけば場内の拍手の中、一礼して席に戻っていた。
3.吹き荒れるシンナー遊び
それは中3の2学期のある日のこと。
授業の合間の休み時間。教室の窓のカーテンで何やらやっている。
よく見るとカーテンにビンの液体をしみ込めせ、それを生徒2人がカーテンの布に口をつけて吸っているのだ。
その時は何をしているのか分からなかった。
この悪ガキグループの二人とはよく夏休みに一緒にプールに遊びに行く仲だった。
私は級長とはいえ悪ガキだろうと無頓着でよく遊んでいた。
このシンナー遊びはやがてクラス中に知れ渡り、シンナーだけでなく中にはかぜ薬を飲んでラリッている子までいると変なうわさまで飛び交っていた。
級長として先生に報告しなきゃマズイと思い職員室に行って担任に報告した。
数日後、カーテンでの遊びは影を潜めたが、ある休み時間、私は悪ガキグループの一人からトイレに来るよう言われた。
一瞬ヤバい!と思ったが一緒に遊んでいるA君の誘いなので行くしかない。
トイレに入ると他に2,3人がたむろしていて、ボス格のBがいきなり「たれこんだろ!」と睨みつける。なにせこのBはデカくてがっしりした体格でつり目でドスがきいているのだ。
私は内心かなりビビりまくっていたが、ピンチになって逃げ場がなくなるほど怖いとか考える間もなくなりくそ度胸が出てくるものだ。
「しょうがないよ!・・・」そのあとは必死で何を言ったか忘れたが、遊び仲間のC君がいいところで助け船を入れてくれて事なきをえた。
なにが幸いするか分からないものだ。
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