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我々に飛び方を教えてくれたシャーマンの弟子が導くきのこの夢(メキシコ)①

 東日本大震災があった時、私はメキシコにいた。長い旅の終わりには住みたい場所を見つけて住んでみたいと思っていたが、オアハカが私が住みたい町だった。メキシコは観光ビザで半年いられるので、その後もアメリカやグアテマラなどに出れば、また半年いられる。最低でも1年は住んでみたいと思っていた。なんとか仕事を見つけられないか動いていた頃、震災があった。私の県も壊滅的な被害を受けた。ボランティア等何かできることがあるはずで、自分だけのんびりしているわけにはいかないと思った。生きてさえいればまた来るチャンスもあるだろう、と私は帰国を決意した。

 こう書くときっぱり決断したようだが、はっきり言って未練たらたらだった。オアハカは魅力的で居心地がよかったし、いろんな人の人生を狂わせた震災はどう考えても理不尽だった。どうしてこういうことが起こってしまうのか?なんで今オアハカを離れなくてはならないのか?沈み込んで悶々と悩んでいた私は、何らかの答えを欲していた。ヒッピー寄りの友人に相談すると、「メキシコで一番古い遺跡に行けば答えを得られるだろう」と神様のお告げのようなアドバイスをくれた。早速行ってみたが、何かが降りてきて答えを教えてくれた…ということはなく、こんな時でも何かを感じるわけでもない自分の霊感のなさが恨めしかった。

 その話を知人にすると「そんなのきのこ食べたらすぐ分かるよ」とあっさり言われた。ウアウトラというきのこで有名な場所があって、そこに暮らすシャーマンと知り合いだという。「きのこか…食べよかな…」私はあっさり行くことにした。実はきのこは以前別の場所で食べたことがあって、その体験があまり良いものではなかったので、「自分にこっち系は向いていない」と結論づけていた。でも「シャーマンがしっかりと儀式をやって、導いてくれるから」との知人の言葉を信じてみることにした。

 ところで、メキシコを旅行しているとタバコのようなものを吸っているおばあさんの写真がプリントされたTシャツをよく見かける。その下には「我々に飛び方を教えた女性」とスペイン語で書かれてあった。一体誰なんだろう??と思っていたが、彼女がかの有名なマリア・サビーナだと後で分かった。ウアウトラに暮らしていたが、ビートルズがヘリコプターで彼女に会いに来て、小さい村は騒然となったらしい。彼女は祖先から伝わる魔法のきのこの儀式を初めて白人に紹介して、ヒッピーたちから崇拝された伝説のシャーマンだった。

 マリア・サビーナはとっくに亡くなっていたのだが、知人が紹介してくれたのは、少女時代に彼女の弟子だったというシャーマンだった。(続く)

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