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長時間労働ぜんぜん減らない!長時間労働の是正の実態とは

働き方改革4つのポイントの中で大きな話題になり関心が最も高いのは長時間労働の是正です。しかし現場ではなかなか長時間労働の是正が進まないという実態があります。

残業時間って、つい最近まで法的には青天井だった!

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企業の働き方改革に対する関心度を調べたところ長時間労働の是正に対する関心が高いことが分かりました。働く人全てに関わるとても身近で大事な課題であるということです。

日本では欧米諸国と比較して労働時間が長く、この20年間日本のフルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばい。仕事と子育てや介護などを無理なく両立させるには長時間労働の是正が必要です。

1947年に制定された日本の労働基準法には時間外労働の上限規制がありませんでした。厚生労働省の告示で上限が決められていましたが、告示には法的な拘束力がないので結局は上限が無いのと同じことでした。最近になってようやく法律上の残業時間の上限が定められ、原則として月残業45時間以内・年360時間が上限となりました。 2019年4月に施行され大企業はすぐに適用され、中小企業も2020年4月に適用されました。

残業を減らせば労働生産性が向上する?

長時間労働の是正は労働者の健康を確保するとともに労働生産性も向上します。労働生産性とは「アウトプット÷インプット」です。アウトプットは労働による成果、インプットは労働者数×労働時間のことです。生産性を上げるには、より少ない人数・少ない時間で同じ成果を上げるか、同じ人数・同じ時間でより多くの成果を上げるかの2通りあります。ここでアウトプットである労働による成果は付加価値額と考えます。付加価値額とは企業が生み出す金銭的な価値のことでざっくりと粗利のことです。

労働生産性の低い会社は総じて労働時間が長い傾向にあります。つまり、粗利が低いので人件費がまかなえず働く人を増やすことができない→働く人が足りないのでひとりあたりの仕事量が増える→長時間労働の慢性化、という連鎖があるのは容易に想像できるでしょう。このような職場では働く人のエンゲージメントが低くなりモチベーションが上がりません。企業の収益は様々な要素がありますが、働く人は企業の根源です。長時間労働の是正は単純に働く人の健康を守るというだけでなく、企業の労働生産性の向上にも繋がるのです。

すすまない長時間労働の是正の実態

企業の労働生産性向上につながるのであれば、すぐにでも長時間労働の是正に取り組むべきです。実際に現場ではどのような実態があるのでしょうか。

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あしたのチームが実施した調査によると、残業20時間以上と回答した経営者・管理職に「労働時間の適正化(長時間労働の是正)に向けた取り組みを実施しているか」という質問をしたところ、実施していないも含めて適正化がすすんでいないと回答したのは実に約7割に上りました。

労働時間の適正化(長時間労働の是正)のための施策を実施していると回答した人に対し、労働時間の適正化(長時間労働の是正)を進めようとする中で、会社に起こったことを質問した結果がこちらです。

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1位は「管理職が部下の仕事を引き取ることが増えた」28.5%、2位は「他の人に仕事を頼みづらくなった」28.0%でした。「部下を早く帰らせるために管理職が部下の仕事を引き取るケースが増えている」(あしたのチーム)3位は「打刻した後に業務をすることが発生した」16.6%でした。会社は残業を減らすように打ち出しているが声かけに終始するなど、業務を効率化して実効性のある残業の削減が行われていない背景がありそうです。この項目は経営者と管理職の回答に乖離が見られます。経営者は7.5%、それに対し管理職は19.0%でした。経営者が表面的な打刻時間で残業を減らしているように見えても現場の実態は違うということが分かります。7位の「売上が減少した」10.9%も、経営者が22.5%、管理職は7.8%という結果で経営者と管理職の乖離が見られました。長時間労働によって会社の売上が支えられている実態があるのではないでしょうか。残業を減らすには業務そのものを見直し、ムダをなくし効率を上げなければ長時間労働の是正ができても会社の売上が下がってしまう可能性があります。

■あしたのチーム 人事の調査:「2019年4月 中小企業の働き方改革実態に関する調査」

まとめ

会社で労働者の労働時間の管理や業務改革を担う経営者や管理職に対するアンケート調査から、長時間労働の是正がなかなか進まない現実が浮き彫りとなりました。長時間労働の是正自体を行っていない会社もまだまだ多く、たとえ実施していたとしても実効性のある施策を行っているとはいえません。管理職に仕事が集中してしまったり売上が下がってしまうといった弊害も起きています。長時間労働の是正とは、単純に残業を減らせと現場に対してプレッシャーを与えるのではなく、長時間労働が起こっているのはなぜか、どんな業務なのか、現場の業務をきちんと現状把握をした上で業務の見直しを行うことが重要です。そうでなければ必ず現場のどこかにしわ寄せがくることになるでしょう。

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