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読書からの気付き 『忘れる』ことは特効薬だと思った話

最近、中村天風氏の著書『運命を拓く』を読んだのだが、その中に『病気は忘れることによって治る』という一文があり、思わずハッとさせられた。
文章の意味を簡単に要約すると、病気で「あそこが悪い、もう治らないかもしれない、最悪だ」などと悲観的な考えをしていては、ますます鬱々とした思考になって病気の治りも悪くなるが、反対に、「生活を見直さなければいけないサインに気付けたことに感謝しよう」という心持でいればいつしか治り、健康的になれるということだ。 

これを読んで、「気持ちの問題でしょ?なにか根拠あるの?」とか「病気に感謝出来る訳ないだろう」と納得出来ない方も多いことだろう。
僕も以前までならそう思っていた。
でも、うつ病や皮膚疾患を克服しつつある今の状況を顧みると、中村天風氏の言っていることが確かにそうだと同意せずにはいられないのだ。 

僕はもともと身体が弱く、頻繁に病院にかかっていた。
当時のことを振り返ってみると、自分の身体が欠陥だらけのように思っていたし、頻繁に体調が悪くなることに苛立ちを感じていた。
そういったこともあってか、思考も神経過敏になりがちで、嫌なことを避けたいがために"嫌なことを脳内シミュレーション"してしまう性格だった。
恐らくその性格が原因で、うつ病を発症してしまったのだろうし、うつ病になってからも、そういう思考によって何度も何度も自分の心を痛めつけては治療を長引かせてしまった。

でも、あるとき「嫌なことを考えないようにしたら楽だな」と気付いてから、長らく苦しんでいた気分の落ち込みや不眠といったうつ病の症状が嘘のように改善して、引きこもりの様な生活から一転することが出来たのだ。
それまでは抗うつ剤を服用しても、回復の兆しが感じられなかったのに、である。
勿論、嫌なことが全く脳裏に過らなくなったわけではない。
当然、生きていればネガティブな気持ちになることもあるし、うつ病の症状で気分が落ちるときもあるのだが、以前と違って嫌なことを“捕まえない”ように意識することで、かなり精神的に安定してきたと感じている。

皮膚疾患についてもそうだ。
荒れたり乾燥したりして痒くなると、血が出るまで掻いてしまっていたが、今は「痒いな」と感じたら本を読んだり外に出かけたりして、痒いことを忘れるようにしている。
そうしたら、不思議と痒みが治まるのだ。
その結果、十年以上ステロイドを塗りたくっても治らなかった皮膚炎が、身体を搔かなくなったことで皮膚が再生して痒みも治まってきているのだ。
まさに、『忘れることによって治る』である。

僕は別に特別なことをしている訳ではない。
皆さんにも、何かに没頭していたら、気になっていたことが気にならなくなったという経験があるのと思うのだが、それを意識的に利用しているだけなのだ。
ちょうど、車を運転中、車窓の景色に一々気を取られていたら事故ってしまうのと同じで、今やることに意識を向けて、病気の症状やネガティブな気持ちを忘れてしまうことで、不安やストレスの少ない生活が送れるようになれたし、その結果心身の調子が安定して思考がポジティブに変化してきている。

正直なところ、気の持ちよう一つ変えただけで、ここまで好転するとは想像していなかった。
中村天風氏の言うように病気に感謝するだなんて、これまでなら間違っても思わなかったことだけれど、今なら自分の『思考の癖』や『生活習慣』を見直すきっかけだったのだなと思えるし、そう思えたからこそ“感謝”する意味が分かったような気がする。

もし、昔のままの思考だったら、心身の調子は良くなることも無かっただろうし、ネガティブな思考に支配されて卑屈な人間で一生を終えていたかも知れない。
そういうことに気付けたから、自分は“生かしていただいている”のだと、“有難いこと”なのだと、恥ずかしながら漸く思えるようになれた。

たった一冊の本の、たった一文が、自分の人生を振り返らせて大切なことに気づかせてくれた。
これだから読書は辞められない。
もし、興味を持たれた方がいたら是非読んでみていただきたい。

『運命を拓く』中村天風 著 講談社文庫

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