ガールミーツガールSF(すこしふしぎ)漫画『ブランクスペース』
僕が今推しているめっちゃ面白い漫画。
単行本が発売されたので改めて紹介させてくれ。
『春と盆暗』の熊倉献先生の最新作。
前作のこちらもとてもいい漫画だから是非読んで欲しい。
『ブランクスペース』あらすじ。
ある雨の日、女子高生の狛江ショーコは、同級生の片桐スイが不思議な力を持っていることを知る。 ふたりの出逢いをきっかけに、やがて"空白"をめぐる物語が動き出す―――。 (公式サイトより)
「これは、想像力についての物語。」
この漫画のキャッチフレーズだ。この想像力というのが片桐スイの持つ不思議な力である「空想で物を作り出す力」のことだが、この設定が面白い。
漫画的な描写としては透明な傘で雨を防いだり、透明なハサミで紙を切ったりすることが出来るように見えるが、この能力の説明するシーンの
「何もないのに…空白なのに でもあるんだ…
クッキーのくり抜いた生地の方とかドーナッツの穴みたい…」
という台詞がとても哲学的で面白い。
哲学的の命題として「ドーナツの穴」というのがある。浅学な僕が説明するのがはばかられるが、簡単に言うと「ドーナツの穴は存在するのか?」という問題をいう。
食べれる部分を「有」とするならば穴の部分は「無」となり、穴は「無い」ことになるのだが、食べることはできなくとも「穴」と認識をしている時点でそれは何らかの「有」であるとも言える。その場合、穴も身もドーナツだということになるという不思議な問題だ。
つまりこれは「存在しないものが有る」ということについての話であり、これがこの漫画が言うところの「想像力」であり『ブランクスペース』というタイトルにも掛かっている。
こういう「不思議な力を持った女子高生の話」を漫画的に使うとすれば、不思議な力を使った様々な問題を解決したり、能力を使って悪と戦うとかになりそうなものだが、まったくそういう漫画ではないので安心した。
物語の語り口は非常に文学的で、思春期の不安定な心がこの「想像力」とリンクして描かれているところがとても良い。
だからこの不思議な力についての説明はあまりされない。(もしかしたら今後あるかもしれないが)主題はそこではなく、こういう不思議な力を持つ女子高校生が普通に日常を生きていたらどうなるだろうという「非日常の中の日常」を描いた漫画がこの『ブランクスペース』の特徴だと感じた。
個人的には「ラーメンズみたいな設定だ」と思ったりもしていた。
作者さんがツイートしていた「青春モノ大好き人間(担当編集)と青春モノ大嫌い人間(自分)が、一緒に作ったらこうなった!という漫画」という説明がこの漫画をよく表していると妙に納得できた。
青春(日常)とSF(非日常)が入り混じった不思議な漫画『ブランクスペース』面白いので読んでください。
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