歌の「録り方」!マイクなどの機材からマイキング、ゲイン設定、録音まで
こんにちは、じーゆうです。
前回、部屋の反響の種類とそれがどう影響を与えるか、そしてその対処法についてお話しましたが、今回は、ボーカルレコーディングのマイクのセッティングなどを解説していきます。
歌い手さんなど宅録されるボーカリストさんは一度目を通していただくとよいかもしれません。
前回の記事
機材について
まずはじめに機材についてのお話です。
ボーカルを録るために、必要な機材を解説します。
すでに揃えている方はこのセクションは特に読む必要はありません。
マイクについて
まずはマイクのお話です。
ボーカル用マイクには大きく分けてコンデンサーマイク、ダイナミックマイクがありますが、吸音や防音などの音響処理(Acoustic Treatment)のされた部屋であればコンデンサーマイクを推奨します。
ですが、もし雑音や反響の多い部屋の場合、そしてそれを改善できない場合は『Shure SM58』などのダイナミックマイクを使った方がよいです。
集音性が低いため、なるべくボーカルのみを捉えることができます。
コンデンサーマイクで、なるべく安価なものだと『Lewitt LCT 240 PRO』や、やや高音域が強めですが『MXL V67G』がよいかと思われます。
コスパで選ぶなら『Austrian Audio OC16』か『Lauten Audio LA-220』がよいと思います。
予算があるなら、『Austrian Audio OC18』が個人的には最高です。
マイクケーブルについて
次にマイクのケーブルについてですが、こちらは『CANARE』または『MOGAMI』のXLRケーブルを推奨しています。
僕が使っているのは『CANARE EC03-B』(数字部分は長さを表す型番)です。
このXLRケーブルのケーブル部分はCANAREの『L-4E6S』という4芯のマイクケーブルで、編組シールドが使われているため電磁ノイズに比較的強いです。
XLRケーブルは、『CANARE』、『MOGAMI』、『BELDEN』など、信頼のあるメーカーのものを使いましょう。
正しく作られていれば、実は音質にはほとんど影響しないのですが、シールドの密度が低いケーブルは空間の電磁波を拾いノイズが増加します。
それと、純正品以外を避けるため、できれば『サウンドハウス』にて購入するのがいいですよ。
オーディオインターフェイスについて
最後はオーディオインターフェイスについてです。
オーディオインターフェイスはビット深度"24 bit"で録音できることは最低限、価格で決まるものではありませんが、だいたいの目安として2万円前後は超えるものがよいでしょう。
品質の低いものだと、ノイズが多かったり、音のニュアンスを細部まで捉えられません。
評判(コスパ)がよいのは『Audient iD4 MKII』。ヘッドホン出力も十分なパワーがありマイクプリ、ADC(アナログ→デジタル変換部)もそれなりに使えるそうです。(プロの機材の基準でお話しているためそれなりといってますが、十分に高音質に録れますよ)
他には、『MOTU M2』や『Focusrite Scarlett 2i2』なんかもよいでしょう。
予算がある場合は『Focusrite Clarett+ 2Pre』や『RME Babyface Pro FS』がよいと思います。
ただ、予算が限られている場合はまず部屋の環境(主に吸音)にお金をかけることをおすすめします。
マイキング
マイクスタンドについて
まずはマイクの立て方、マイクからの音源、つまり口の位置です。
立って歌う場合は、マイクスタンドを使いますが、スタンドの真ん中のシャフトが足と一緒に床につかないようにしてください。
支えるのは足の3点のみです。もしシャフトが床についていると、床からの振動が伝わりやすくなってしまいます。
ショックマウントについて
それから、マイクはショックマウントに取り付けます。
マイクに付属していない場合は別で買いましょう。
これがないと、床などからの振動がマイクに伝わりノイズになります。
ショックマウントをつけていても完全には防げませんが、軽減します。
ポップガード(ポップフィルター)について
次にポップガード(ポップフィルター)ですが、これは「吹かれ(ポップノイズ)」と呼ばれる息がマイクに当たることで発生するノイズを防ぎます。
息をマイクに吹きかけると「ボボボボ」ってなるアレです。
布製のものは基本的に高音域の減衰量が多いため、おすすめは金属製のものです。
例えばこれ。なんかいい感じに風の向きを変えてくれます。
予算がある場合のおすすめは『JZ Microphones Pop Filter』です。
リフレクションフィルターについて
マイクの後ろ側に弧を描くように設置するリフレクションフィルターですが、あまりおすすめはしていません。
音に変化はありますが、そこまで反響は軽減できないですし、リフレクションフィルターからの反射音もあります。
使い方によっては効果を発揮する場合もあるため、完全に否定はしませんが、「これを使えば万事解決!」というものではありません。
うちでは、マイクから離して反射を軽減するために設置しています。
マイクと口の距離
最後に、マイクのダイヤフラム(音を拾う部分)からどの程度の距離で歌うか、を解説します。
僕のセッティングをお話すると、「ダイヤフラムから9cmの位置にポップガード、口の位置はポップガードから約1~2cm」です。
ダイヤフラムから10cm程度の位置で歌っていることになります。
これはオンマイクというセッティングで、マイクと音源の位置が近いことを意味します。
声優さんのアフレコは空気感を録るためかもう少し遠いですが、ボーカルレコーディングでは近めで録ることがほとんどです。
特に、自宅でのレコーディングでは、反響音を小さく、直接音(声)を大きく録りたいので近めにします。
ただし、近すぎると近接効果により、低域が強調されたり、ポップノイズ(吹かれ)が入りやすくなるため注意してください。
ゲインステージング
続いては「ゲインステージング」についてのお話です。
これは、言ってしまえば「適切な音量に調節する」だけです。
簡単に言えば「“音割れしない”範囲で最大限大きく」録ります。
今回は、インターフェイスのマイクプリのゲインについてです。
設定は単純で、DAWやインターフェイスのメーターを見て、大声を出したときに「-6dBFS ~ -12dBFS」に収まるようにしてください。
※調整するのはインターフェイスのゲインノブです。DAWのフェーダーではありません。
これで突発的なピークが発生してもクリップ(音割れ)を防げるでしょう。
ゲインが小さすぎると、ミックス時に音量を上げることになり、その場合ノイズフロアも一緒に持ち上げることになります。
適切なゲインセッティングをすることで、マイクやインターフェイスの性能を最大限引き出すことができます。
DAWでの録音時
録音時は、サンプリングレートは"48 kHz"または"96 kHz"を推奨、ビット深度は"24 bit"で録りましょう。
"16 bit"で録音したり書き出したりするとノイズが増えます。
ちなみに、"32 bit(整数)"や"32 bit float"で録っても意味はありません。
※32 bit float録音に対応したレコーダーでの32 bit float録音を除きます
あとはクリック(メトロノーム)を聞いたり、パンチインを使用したり、DAWの使い方を覚えて良いテイクを録りましょう。
書き出すときは、サンプリングレートは録音時のままから変更せず、ビット深度は"32 bit float"(整数ではなく"float"です)にして書き出すことを推奨します。
ちなみに「全く音量を変更しない(フェードアウトやクロスフェードもしない)」のであれば、"24 bit"で書き出しても問題ありません。
サンプリングレートとビット深度について詳しく書いた記事はこちらにあります。
さいごに
以上マイクやインターフェイスなどの機材についてのお話から、マイキング、ゲインステージング、録音までの解説でした。
この記事が参考になりましたら幸いです。
補足:そういえば「マイクプリ(アンプ)」についてですが、これはインターフェイス内蔵のものでよいです。
外付けのマイクプリを使う理由は、基本的に色付けです。
インターフェイス内蔵のプリアンプはかなりクリーンに録れます。
ミックス作業であとから色付けすることもできるので、まずはクリーンに録ればそれでよいです。
部屋の音響処理を完全に済ませ、マイクもそれなりのものを使っているのであれば導入してもいいかもしれません。
でもまずお金をかけるのは吸音などの音響処理が先ですよ。
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