拝啓 下を向いて歩くことを教えてくれたあなたへ

私は「普通の人」になりたかった


「上を向いて歩こうよ 涙がこぼれないように」というフレーズを、上を向いて涙をこらえ、震える声で歌いながら歩いていた21歳の冬。

「あなたは社会で生きていくなかでずっと孤独を感じると思うわ」
障害者職業センターで言われたこの言葉が、頭にこびりついて離れなかった。
これから社会人になろうと思っていたのに、社会に所属することもできないんだ。

ごめんね、お母さん。こんな子どもに生まれてきて。
ごめんね、叔母さん。あなたの期待に応えられなくて。
ごめんね、おばあちゃん。私、あなたの思う素敵なお嫁さんにはなれないみたい。
ごめんね、私。せっかく生まれてきたのに幸せな人生を歩ませてあげられなくて。
ごめんね。ごめん。ごめんなさい。

もう誰に謝っているのかも、何に謝っているのかもわからなかったけれど、普通の社会人になんとか擬態して生きていかなきゃと、ありもしない未来の苦しみを勝手に前借りして、過ぎ去った悲しみをひとり背負い直しながら、溢れそうになる涙を誰かに見られたら「普通の人」ではいられなくなってしまう、と必死に上を向いてこぼさないように歩いていた。

長調の曲だから歌ってこれ以上苦しくなることはないや。よかった。とか、一身に背負ったネガティブな気持ちを見ないようになんでもないことを必死に考えて沈みそうになる気を逸らして歩いていた。

その2日後、社会人クイズサークルの集まりがあった。なにか社会に属して「普通の人」の勉強をしようといろんなサークルに入っていたうちのひとつだった。大学の科学系サークル、英会話サークル、社会人向け卓球サークル、クイズサークル、料理クラブ……とにかくいろんな団体に所属して、人見知りと言い張ってあまり人と会話せず、部屋の隅っこでにこにこしながら「普通の人」を勉強していた。

クイズをやっている中で、新しい問題が出たとみんながざわざわしだした。「イザワタクシ」という人の問題だった。
私はその人を知らなかったので、家に帰って調べた。どうやら東大生でクイズを題材にしたYouTuberをやっているのが界隈で話題だったらしい。

その人が展開している「Quizknock」というメディアを調べていく中で、Webページの最新の投稿が、得体の知れない何かに押し固められていた私の考え方を大きく変えてくれた。

このページ内のリンク先の「ねとらぼ」のページを読んでいて、頭の上でバケツがひっくり返って水が降り掛かってきたかのような、とにかく今までの私には一切考えられなかった一文が目に入ってきて、それまで考えていたことが全てどうでもよくなって、某ジブリ作品に出てきそうなくらい大きな口を開けてひとしきり笑った。

生き方は自分で選べるらしい

『たまには下を向いて歩くのも、今回のように新しい発見があって良いかもしれませんよ。』


上を向いて歩かなきゃいけないなんていう法律があるわけでもないのに、下を向いてトボトボと歩くことがひどく重い罪のように思えてできなかった。どれだけ悲しくても、どれだけつらくても背筋をグイっと伸ばして、足を大きく広げて、両の腕を大きく振って歩いてきた。

「たまには下を向いて歩くのもいいかもしれない」んだ。

そっか。

ずっと上を向いて涙こらえて歩かなきゃ死ぬってわけじゃないんだ。

バカみたい!あれだけ周りを見て真似をして生きていこうと必死になっていたのに、周りの人間が落ち込んだときに下を向いて歩いていることに気付いていなかったなんて!

あはははは!バカだな私!あはははは!!

ありがとうカワカミさん!顔も知らないけど!今日から落ち込んだときは遠慮なく下向いて歩くよ!foooooooo!!!


今思い直せば躁転してましたね。その後全財産カラオケとDVDレンタルで使い果たして、バイト2週間くらい休んで、大学も休んで、ずっと歌って笑ってを繰り返してた気がします。やばすぎ。

でも、これがきっかけで集団に上手くなじめなくても自分のことを責めなくなったと思います。
私には私の生き方、あなたにはあなたの生き方があるよね!








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