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【インサイト】女子プロゴルファースポンサーシップの目的

こんにちは。
XBスポーツマーケティング・ラボ編集部の伊藤妃芽香(いとうひめか)です。
私は女子プロゴルファーのマネジメント業務を担当しています。

XBでは2006年から女子プロゴルファーのマネジメントを開始し、現在ではJLPGAツアーで活躍するゴルファー15名のマネジメントをしております。

メディア対応や競技活動に関する日々のサポート、シーズンオフのトレーニング環境整備等、年間を通して様々な形で選手をサポートしていますが、XBが最も注力し、強みとしているのが、"スポンサーセールス"です。

スポンサーセールスとは、一言で言うと、「選手のスポンサーを獲得し選手の活動資金を集める」です。
ですが、XBのスポンサーセールスは、選手を支援する為だけにお金を払って頂くのではなく、企業が抱える課題に対して、選手稼働や肖像等の権益を提供し、女子プロゴルファーを活用したソリューションを提案しています。

今回の記事では、実際にどのような目的でスポンサー契約に至り、どのように活用し、企業課題を解決しているかを、マネジメント会社の視点でお伝えしていきます。

1.JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)ツアーの現状

◆人気上昇のキッカケ
かつては樋口久子プロや、岡本綾子プロの活躍により、試合数や賞金総額は高い水準で推移していましたが、バブル崩壊後の2003年に大きく落ち込みました。
そんな状況の中、再びJLPGAツアー(以下、女子ツアー)の人気が再燃するキッカケとなったのが宮里藍プロの登場でした。史上初の高校生プロゴルファーとなり、プロ入り2年目の2005年には、国内メジャーである日本女子オープンで優勝し、翌年2006年には米女子ツアーに参戦。世界で戦う宮里藍プロをみて「宮里プロのようになりたい」とゴルフを始めるジュニアゴルファーが増えました。当時のジュニアゴルファーこそが現在の女子ツアーを牽引する渋野日向子プロや勝みなみプロなどの黄金世代です。

◆若い世代の活躍
宮里プロに続くネクストヒロインとして、「スマイリングシンデレラ」の愛称で親しまれる渋野プロは皆さんご存じだと思います。
現在の女子ツアーでは、渋野プロだけではなく原英莉花プロや勝みなみプロ、小祝さくらプロなど黄金世代と呼ばれる世代が活躍しています。
またさらにその下の世代である稲見萌寧プロや「プラチナ世代」と呼ばれる古江彩佳プロや西村優菜プロが台頭しています。

実際に、2019年シーズンは全39試合中13試合、2020-2021年シーズンは22試合中18試合で黄金世代以降の選手が優勝し、若い世代の活躍が目立っています。
若い有望な選手が次々と台頭していることが、女子ツアーの人気を後押ししていると考えられます。

◆試合数と賞金総額
実際に女子ツアーの人気の高さは、男子ツアーであるJGTOツアー(日本ゴルフ機構)との比較をすると一目瞭然です。

210430女子ゴルファースポンサーの目的_試合数比較

女子ツアーは3月のシーズン開幕から11月最終戦までほぼ毎週末試合が開催されています。2020年はオリンピック開催により前年より2試合減少しましたが、2021年には新規トーナメントである、楽天スーパーレディス(仮)が決定し38試合となりました。
それにより、東京オリンピックで女子ゴルフ競技が開催される期間以外全ての週は女子ツアーの開催が決定しています。
大会名を冠する事ができる主催または特別協賛に興味を持つ企業が多くあり、空きが出るのを待っている状況だと言われています。

上記の事から女子ツアーの価値が高い事が分かり、また、女子ツアーに興味を持つ企業が多くある事は下記の賞金総額の推移からも見えてきます。

210430女子ゴルファースポンサーの目的_賞金総額

女子ツアーは毎年賞金総額を更新しており、2021年はコロナ禍でありながらも史上最高額の賞金総額42億2000万円に達しました。このことから様々な企業がJLPGAツアーにビジネスの可能性を期待し、新規参入や賞金を増加している事が分かります。

高い人気を誇る女子ツアーのスポンサーとなる事で、企業名が多く露出されます。
それに加え、プロアマ大会(※1)に重要顧客を招待し、お客様との親睦を深める事が出来るなど、BtoBの分野でも高い貢献が期待されます。
※現在はコロナ禍によりプロアマ大会中止の試合も有り

この女子ツアーの活況ぶりは、ツアーに出場するプロにも同様の事が言えるかと思います。女子ツアーで活躍するプロを見てみると、着用するウェアやキャップ、キャディーバックなどあらゆる箇所に企業ロゴが貼付されており、様々な企業からプロがスポンサードを受けている事が分かります。

次の章では、JLPGAツアーに出場しているプロのスポンサーシップに関してお伝えしていきます。

※1プロアマ大会とは
本戦とは別に主催企業(女子ツアー協賛企業)が得意先のお客様を招待し、プロとアマチュアが一緒にラウンドをすること。プロ1人につき、アマチュア3人というチーム構成で、チームごとの対抗戦を行う。

2.スポンサーシップの目的

ツアープロを活用して様々な施策を実施し、企業課題の解決や事業活性化に繋げる事がスポンサーシップの主な目的です。(CSRの観点で若手ゴルファーをサポートする目的もあります)スポンサーシップを行う目的は多岐に渡り、その目的に応じた施策を実施する事が重要となります。
弊社マネジメント選手をスポンサードして頂いている多くの企業は、自社のブランド認知やお客様との接点づくり、社員のロイヤリティ向上や一体感の醸成など、様々な目的でツアープロをご活用頂いています。
その目的と具体的な活用方法、メリットを分類分けしました。

①認知、露出の獲得(BtoB,BtoC)
契約プロのウェアやキャップ、キャディバックへ企業ロゴを貼付し、毎週開催されているJLPGAツアーに出場します。
ツアーだけでなく、雑誌取材やテレビ取材などのメディア出演時にもゴルフウェアを着用する為、ツアー以外においても企業ロゴの認知獲得に貢献します。

②顧客との関係強化(BtoB)
重要顧客を招待した営業ラウンドに契約プロも参加し共にプレーをする事で、記憶に残るラウンドにする事ができます。プロのプレーを間近で観られる事に加え、”プロから直接レッスンを受ける”といった事もあるかもしれません。ツアープロはJLPGA主催の新人研修等でホスピタリティ教育を受けており、営業ラウンドに貢献します。
トーナメントスポンサー同様、プロとの営業ラウンドを介して顧客と親睦を深める事により、新たなビジネスを創出する機会となる事が期待されます。
また、商談の際には、スポンサー選手の話題で盛り上がる機会も多く、アイスブレイクとして活用しているという声も多く頂きます。

③社員の満足度向上(BtoB)
社内イベントへ契約プロを呼びアスリートと会話したり、アスリートの技を間近で見る事によって、社員の満足度を高める事ができます。
また、契約プロの活躍により、社内で共通の話題を創り出します。「昨日、○○選手のプレー観た?」のように、社内の「共通言語」として、コミュニケーションを円滑にする事が出来ます。

④ブランドロイヤルティの向上、競合他社との差別化(BtoC)
自社ブランドと親和性の高い契約プロをPR、ブランディングに活用する事で、自社ブランドのロイヤリティを向上させ、競合他社と差別化を図ることが出来ます。
契約プロを起用したCMを制作したり、契約プロのSNSでの発信を行うなど、契約プロと自社サービスのイメージを掛け合わせる事で、より明確なメッセージを伝える事が可能になります。

⑤新規顧客リストの獲得、販売促進・店舗誘導(BtoC)
契約プロを起用したレッスンやサイングッズ等を特典としたキャンペーン等を実施する事で、従来のターゲット層への販売促進や店舗誘導を促し、特典をきっかけとしたクロスセルによる売上増を狙う事が出来ます。
それだけでなく、契約プロのファン層にもリーチ可能となり、新たなマーケットを開拓し、新規顧客リストを獲得する事ができます。

3.スポンサーの業種と活用方法

ツアープロをスポンサードする目的や活用方法、メリットを上記で述べましたが、実際にどのような業種の企業が多くツアープロをスポンサードしているのかを調査しました。

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調査対象:2020-2021年JLPGAツアーシード選手50名
調査方法:各選手公式HP
     各選手マネジメント会社サイト
     各選手SNS
     メディアからのリリース記事
業種分け参考サイト:業界同行SEARCH.COM
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◆スポンサー企業業種

210430女子ゴルファースポンサーの目的_スポンサー企業業種

女子ツアー選手のスポンサーを調べ、業種の分類分けをしていくと、図の通り14の業種に分けられ、1番多くツアー選手をスポンサードしていたのは、建設・不動産で全189社の内34社でした。

建設・不動産の企業が多い理由としては、従来より営業面において、顧客とのラウンドが重要な営業手法となっている業種であり、【スポンサーシップの目的】で述べた②顧客との関係強化(BtoB)を目的とした活用をしている事が考えられます。

「建設・不動産」以外を除き、高い割合を占める各業種での特徴と活用方法は下記の通りです。

スポンサーシップの目的 ※各業種の主な目的と合わせてご覧ください
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①認知、露出の獲得(BtoB,BtoC)
②顧客との関係強化(BtoB)
③社員の満足度向上(BtoB)
④ブランドロイヤルティの向上、競合他社との差別化(BtoC)
⑤新規顧客リストの獲得、販売促進・店舗誘導(BtoC)
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●食品
身体が資本であるアスリートに対してスポンサードする事により、健康志向が高い層に対してブランドイメージを訴求することが出来る為、非常に親和性が高いと言えます。
また、卸や小売業者などステークホルダーが多い業種でもあり、プロアマ大会への参加を目的として活用している企業が多いと考えられます。
主な目的:①②④⑤

●娯楽・レジャー
内訳としては、ゴルフコースが多くを占めています。ジュニアの頃から練習をしていたコースが、プロとなった後でもスポンサーとして支援して頂くケースが多いです。
主な目的:①②③⑤

●電機・精密
営業面において、決裁権を持つ役員クラスのラウンドが重要な営業手法となっていることから、建築・不動産と同様に、顧客との関係強化を目的とされています。
主な目的:①②③

●IT・メディア
BtoB企業へのクラウドサービスを展開する企業等は、キーマンへのアプローチが重要であり、決裁権を持つキーマンへの営業ラウンドを目的として活用されていると考えられます。
主な目的:①②③④

●自動車・機械
「ゴルフ場への移動」に車は必要不可欠であり、非常に親和性が高い業種であると言えます。日本全国を転戦するツアープロの移動手段としても欠かせないものであり、自社製品のブランドアンバサダーとしてブランドイメージの向上を目的として活用されています。
主な目的:①②④⑤

上記から、社名や商品名の認知を目的とした「広告塔」としての活用だけではなく、多くの企業が「顧客との関係強化」を目的とした営業ラウンドに活用している事が分かります。
ツアープロを活用して重要顧客との関係を強化し、新たなビジネスを創出する機会として捉えていると言えます。

4.まとめ

・宮里藍プロの登場が女子ツアー人気再熱のキッカケとなった。また、世界で戦う宮里藍プロをみて「宮里プロのようになりたい」とゴルフを始めるジュニアゴルファーが増えた。

・近年の女子ツアーでは黄金世代やプラチナ世代といった若い世代のプロが台頭している。若い有望なプロが次々と台頭している事がツアーの人気を後押ししている。

・女子ツアーの主催や協賛企業に興味を示している企業が多くある事から、ビジネスにおいて女子ツアーの価値が高いことが分かる。

・ツアープロをスポンサードする業種は、14の業種に分けられ「建設・不動産」が全189社の内34社で1番多く、スポンサードの活用方法としては顧客との関係強化が目的であると考えられる。

・ツアープロのスポンサーシップは、社名や商品名の認知を目的とした「広告塔」としての活用だけではなく、多くの企業が「顧客との関係強化」を目的とした営業ラウンドに活用している。

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