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本棚に囲まれる幸せ。

『ランダムに選んだ過去の写真からインスピレーションを受けた小咄、コラム、戯言などを書き留める写真で二言三言。』

本好きたるモノ一度は夢に描くモノではなかろうか?
嗚呼、部屋一面本棚に囲まれて暮らしたいっ!と。

今では結構そのようなレイアウトの公共図書館もあったりして、本好きの隠された欲望を満たせる環境もあるようだが、そんな環境をプライベート空間で実現できたら...…

そんな欲望を独身時代のわたしは実践していたのである。
小学校低学年での伝記物シリーズを皮切りに読書に目覚めたわたしは、歳を重ねると供に小説に限らず実用書からなんやら、挙げ句の果てには活字さえ読めれば落ち着いていられると。
本というパッケージに限らずとにかく活字さえ羅列されていれば構わないというほどに立派な活字中毒患者と成り果てていた。

当然のことながら大学入学と供に上京して一人暮らしをするようになってからも夢見ていたのは壁一面の本棚!
いや、本棚という名の壁である。

そんな欲望がついに現実のモノとなったのは独身最後の居住地であった箱庭の街のマンションであった。
いずれ二人でも暮らせるように選んだそのマンションは独り身には間取りに余裕がありすぎるため、その一室をかねてからの夢である壁一面を本棚で埋め尽くす部屋を実現したのである。

床から天井まで屹立する本棚。一番上の段は脚立を持ち出さないと届かない。
でもいいのである。これぞわたしが幼少の頃から夢見ていた本棚の壁である。
一面が本棚で覆われ、さらにもう一面が本棚で覆われ、いつしか四面が本棚に覆われる悪魔の部屋と化した頃、そんな本棚の部屋よりも大切な女性と出会ってしまったのである。

かれこれ一年後、わたしは彼女の住む街の近くに引っ越すこととなり、二人暮らしとなるととても田舎の本屋ほどの物量の本を持っていくことも出来ず、当時のブックオフ新橋店の買取記録を更新するほどの本を処分し、必要最低限の本だけ新居に運んだのである。
今となっては妻からこの3脚の本棚に入るだけの本しか所有を許可されていない...…。

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