Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8Sを整備して,スナップ写真を撮ってみた
おつかれさまです.マイクロニッコールの中で,Ai Micro Nikkor 55mm F2.8は銘玉と呼ばれ,解像力に定評があるようである.私もジャンクで入手してNikon Zfcに社外品のマウントアダプター経由で装着して,マクロ撮影に限らず楽しんでいる.近頃はとっても気に入ってしまい,もはや常用レンズになっている次第である.
ただ唯一の不満点は,Exifに撮影時の絞り値が記録されないことである.以前所有していた一眼レフのD600では,Ai連動機構を利用してそれができていたのに,カメラをZfcに入れ替えた途端にできなくなってしまった.そこで,ニコン純正のマウントアダプターであるFTZを入手して,電子接点のあるAi AF Nikkorを揃えていこうと考えた.ちょうどFTZ IIの発売が発表され,FTZの中古が値下げされていたので,思ったより安価で入手できた。もちろんZfcではカメラ内にフォーカシング用のモーターがないのでAFは使えないが,レンズ情報はカメラに伝達されるし,絞りもカメラ側から制御できるのは大きい.
それで今回入手したレンズが,AFが付いた Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8Sである.このレンズは,Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8の実質的な後継機種で,等倍マクロ撮影が可能なのが特徴である.こちらに詳しい解説があるが,確かに鏡筒のメカが特徴的で,惹かれるものがある.ただスナップ撮影に使うには,少し大きくて重たいかもしれない.
入手してみると,AF/MFを切り替えるプラスチック部品の一部が壊れて脱落しているのと,例によってレンズがカビていて,分解して清掃が必要な状態である.脱落した部品はジャンクの同じレンズを以前入手していて,そこから拝借すればよい.早速,作業にとりかかろう.
分解・清掃
こちらを参考にして分解していく.フレキシブル基板を傷つけないように注意する他は,特に難しくないのだが,AFのギア機構があるので,組み立て分解にはMFレンズに比べて手間がかかるのも事実である.あと,プラスチック部品を留めているネジは,締めすぎるとすぐに舐めてしまうので,そこにも注意する.
フロント側からのアプローチ
一番内側のカップを,ゴムのレンズオープナーを使って外す.すると前玉が現れるので,溝にカニ目レンチをはめて回して外す.レンズには,カビは見られなかったが,念のため無水アルコールで表面・裏面を拭き上げる.清掃したら,元に戻せば終了である.
上が外したカップと前玉です.下が,3枚の後ろ玉・中玉です.
マウント側からのアプローチ
マウントを固定しているネジは,意外にも苦も無く回転した.ただ,ネジの長さが違うものがあるので,組み立てる際には要注意である.
一番後ろのこのレンズの絞り側が最もカビてました,幸いにも,クリーニング液を使って落ちました.仕上げに,無水エタノールで拭きあげれば完了です.
絞りリングを外すと,後ろ玉が露出するので,カニ目レンチを使って外し,レンズを両側から清掃した.次に,中玉を取り出すのだが,カニ目レンチを差し込むスペースが狭く,ちょっと苦労した.一番奥の合わせレンズは,レンズサッカーを使って引き抜くことができた.これで,全てのレンズを両側から清掃することができた.
さらにAFのギア機構を外して,鏡筒のカバーを外し,3個の芋ネジで固定されているリングを回して外し、脱落していたAF/MFの切り替えに使う部品を取り付けた.元通りに組み立てれば,こちらも終了である.
操作性の違い
ところでNikon ZfcにAi AF NikkorとFTZを使用した際には,絞りはカメラのコマンドダイヤルから設定する.社外品のマウントアダプターを使用した際には,絞りは絞りリングを使って設定できたので,これには戸惑ってしまった.FTZを介してCPUレンズを装着すると,カメラには「レンズの絞りリングを最小絞りにしてください」というメッセージが表示される.
これは,FTZにはAi連動レバーがないために,そうなってしまうようだ.これまで,絞りリングで絞りを調節するのに慣れてしまった私には,この操作性の違いには戸惑ってしまった.どうしても絞りリングで絞りを調節したいひとは,安価な社外品のマウントアダプターのほうが,むしろ幸せになれるかもしれない.
まとめ
今回は,全てのレンズを両側から拭けて気持ちが良かった.フォーカスのカップリング機構と電子接点が付いたAi AF Nikkorは,MFレンズに比べて部品点数が多く,分解していくのに手間がかかる,今回は脱落部品を取り付ける作業があったので少し工数が増えたが,レンズを清掃するだけであれば,鏡筒を分解していく必要はなく,比較的簡単である.
FTZの出っ張った三脚座は評判悪いですが,カメラを置いたときに安定するのは良いですね.シャッターボタンの手前にある小さな液晶窓にもF値が表示されます.
正直なところ,プラスチックの外装がいかにも残念な感じで,フォーカシングリングにもヌメリ感がなく,Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8に比べるとピントを合わせるのが難しい.しかしFTZと併用して,設定なしでExifにレンズ情報が記録される利点は,私には代えがたいものがある.昭和末期に設計された,チョイオールドレンズも,令和のNikon Zfcと似合っているような気がする.
ちょっとだけ作例
ドングリです.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F5.6, SS1/160, F2.8, ISO1400
キノコのヒダです.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F5.6, SS1/30, F2.8, ISO51200
アサガオです.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/800, F2.8, ISO400
ランタナです.7角形の玉ボケができてます.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/160, F5.6, ISO100
ムラサキカタバミです.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/250, F5.6, ISO280
だれかが置いた傘
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/160, F5.6, ISO100
都電荒川線町屋駅.京成町屋駅高架ホームより.
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/30, F8, ISO16000
スカイツリータウン4F,スカイアリーナにて
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, F2.8, SS1/60, ISO 280
ライトアップされた街路樹から覗くスカイツリー
Nikon Zfc, Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8, SS1/100, F8, ISO2000
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