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北海道新篠津村|IoTで灯油残量を可視化して配送業務を効率化、配送日数を1/3へ

北海道新篠津村は、札幌の北東に位置し、札幌市街から車で1時間ほど行ったところにあります。

IoTを活用した農山漁村の事例です!


ライフラインの灯油が手に入らない「灯油難民」が生まれている

以前もご紹介したように、北海道では全国平均を上回るスピードで人口減少・過疎化が進んでいます。そうなってくると、農山漁村(農村、山村、漁村の総称)で影響が出てきます。

そして現地に住む人達にとって大きな影響が「灯油が手に入らない」という課題です。

人が多い場所にはガソリンスタンドも多いため、灯油の配送を効率的に行うことができます。一方、人が少ない場所にはガソリンスタンドも少なくなるため、極端に言うと、数時間かけて1箇所のガソリンスタンドだけに配送しなければならない状況になり、配送コストが高くなります。

こういったことが現実に起きていて、配送業者の採算性が悪化、人手も不足、そしてガソリンスタンドも減少・・・となっており、灯油が手に入りにくい状況(高齢者が遠くのガソリンスタンドへ行って灯油を手に入れなければいけない)が生まれています。これが「灯油難民」です。


スマートセンサーで灯油残量を1台ずつ測定

低コストなスマートセンサーと低コストの通信サービスを導入することでこの課題を解決しました。

各家庭のタンクの灯油残量を測定できるよう、1台1台にセンサーを取り付けます。センサーが取得した情報を基地局が受け取り、その情報をJAへ展開します。JAと配送業者が連携して、必要なタンクに必要なだけ灯油を積んで、必要なエリアに対して配送します。そうすることで配送業務の効率化を実現しました。

※画像が小さくて見づらいのですが…タンクの灯油残量を測定するセンサーは蓋一体型のため、工事不要で誰でも簡単に取り付けできます。

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この取り組みには、地方自治体だけでなく、センサーを提供するゼロスペック社、基地局や低コストの通信サービスを提供する京セラコミュニケーションシステム社、さくらインターネット社、といった民間企業も協力して行っています。

事例広告-5

※京セラコミュニケーションシステムさんの事例から画像をお借りしました。ありがとうございます。



配送日数を1/3へ、154日間で約33万円の効果

154日間、僅か83戸に述べ97センサーを設置するだけで、大きな効果を得られました。

配送日数がこれまで96日かかっていたところ、約1/3の35日まで減少したのです。金額に換算すると、システム導入費用を差し引いて、約33万円の効果が出ています。

導入戸数が少なく、たった97センサーだけでもここまで大きな成果が得られているため、道内5都市へ数千台を供給することにもなっています。


ポイント

今回のポイントは2つあります。

1つ目は、まずは97センサーという小さな数からスタートした点です。IoTを使う場合は実証実験が必要となることが多いため、当然かもしれませんが、いきなり大規模な仕組みへ取り掛かるのではなく、まずは小さくスタートして成果が出るかどうかをしっかり検証した点は重要なポイントです。

2つ目は、民間企業と協力して行った点です。低コストでセンサーや通信を行ったという民間企業側の努力が今回成功した大きな要因の一つだと考えられます。現実問題として、もしセンサーの導入費用が高価だった場合、導入数を増やしていくということが難しいからです。

導入コストの話しになると、地方自治体側では対応できない領域になるため、いかに民間企業を巻き込んで、目的に向かって一緒に進められるか、というところがポイントになります。

周りを巻き込んでいく、というのは成功している事例の共通点ですね。


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