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性別の変更は効果的ではない、という研究者の見解 "Sex changes are not effective, say researchers" (英国ガーディアン誌 翻訳記事)

英国The Guardian 記事 Fri 30 Jul 2004 (David Batty記者)

性別変更手術がトランスセクシュアル(TS)(訳注:TSとは、性同一性障害で性別適合手術を行った、またはその待期中の人々を指す)の人々の生活を向上させるという決定的な証拠(エビデンス)はなく、術後も多くの人々が深刻な苦悩を抱え、自殺願望さえ持っていることが、ガーディアン・ウィークエンド・トゥモロウのため今回、独占的に行われた医学的レビューで明らかになった。

英国バーミンガム大学 積極的研究情報機構 aggressive research intelligence facility(ARIF)による、手術後のトランスの人々に関する100以上の国際的な医学研究のレビューでは、性別適合手術が臨床的に有効であるという確実な科学的エビデンスは見つからなかった。

『ガーディアン』紙は、性別変更を後悔している人や、受けた医療が新しい生活への準備に失敗したと考えている人たちに話を聞いた後、ARIFにレビューの実施を依頼した。彼らは明日(7月31日)のウィークエンド誌で、性別変更に不満がある理由と、その結果にどのように対処しているかを説明している。

英国バーミンガム大学 ARIF(aggressive research intelligence facility)のディレクター、クリス・ハイド氏は述べる。

「性別変更(性別適合手術)が良いことなのか悪いことなのかについては、現在のところ確実なエビデンスがなく大きな不安があります。適切な患者が性別適合手術を受けられるように、英国においては細心の注意が払われていることは間違いありませんが、手術を受けたにもかかわらずトラウマを抱えたままの人たちが大勢います。そして、ときに自殺に追い込まれる場合もあるのです」

ウェスト・ミッドランズ州のNHS(英国国民保健サービス National Health Service)に医療的治療に関するエビデンスについて助言しているARIFは、性別適合治療に関する医学研究のほとんどは、性別変更手術が有益であることをあえて示唆するように結果を歪めているものであり、不十分な研究であることを発見した。

そのレビューでは、研究者が参加者の半数以上のその後の経過を追うことができず見失ったため、多くの性別適合医療の研究結果は不健全である、と警告している。例えば、昨年発表された727人の術後性別変更者を対象とした5年間の研究では、495人が原因不明で脱落している。ハイド医師は、この高い脱落率は、術後性別変更者の不満の高さ、あるいは自殺を反映している可能性がある、と述べた。彼は、より多くのエビデンスを提供するために、彼らの死因を追跡調査することを求めた。

ハイド氏は言う: 「要するに、性別適合手術でうまくいく人がいることは明らかですが、どれだけの患者がうまくいかないのか、うまくいかないとしたらどの程度なのか、現時点で利用可能な調査では、ほとんど安心できないということです」。

トランスジェンダーの運動団体プレス・フォー・チェンジ(PFC)によれば、英国には約5000人の術後性別変更者がいるという。今年、NHSと個人で行われる性別転換手術は400件にのぼると推定されている。NHSでは1回の手術に約3,000ポンド(約55万円前後)かかるが、民間では8,000ポンド(約150万円〜)以上かかる。

PFCのクリスティン・バーンズ氏は、この運動団体の調査によると、大多数の性別変更者は手術後、ずっと幸せな生活を送っている、と述べた。

バーンズ氏は、性別適合治療に関する医学文献の最大の欠陥は、性別変更者に同情的でない研究にあると付け加えた。例えば、ある研究はシカゴのゲイバーでインタビューした7人のトランス治療後のセックスワーカーの調査に基づいている。

「研究がうまく組み立てられていないという事実は、トランスジェンダーの人々を適切に映し出していないというよりも、私たちのケアを信頼できてもよいはずの人たちを適切に捉えていないという問題なのです。彼らが追跡調査できるはずの患者の半分を追跡できないとしたら、問題はその理由です。私たち自身が繰り返し指摘してきたように、トランス当事者に名乗りを上げてもらい、トランスの人々の真の幸福を念頭に置いて適切に行われる研究に協力してもらうことは、本当に難しいことではないのです」

アメリカやオランダの調査によれば、患者の5分の1が、性別変更手術を後悔しているという。NHS執行部の研究開発局による1998年のレビューでは、性別適合治療に関するいくつかの医学的研究において、自殺未遂率が最大18%にもなっていることが指摘されている。

メンタルヘルス財団のアンドリュー・マッカラクCEOは、ロージー・ウィンタートン精神保健大臣に、性別変更手術の長期的影響についての「徹底的な評価」を要請する手紙を出した。彼は、NHSでどのような治療を受けるべきかを決定する英国国立医療技術評価機構(Institute for Clinical Excellence)に、性別適合医療に関するガイドラインを作成するよう求めている。

患者が性別変更すべきかどうかを評価するジェンダー医療の精神科医は、より科学的な研究が必要であることに同意している。しかし、英国王立精神医学会の性同一性障害に関するワーキング・グループのケヴァン・ワイリー委員長は、彼が担当するすべての患者の生活は、性別適合手術後に劇的に改善したと述べた。

ワイリー医師は、性別の変更は「非常にまれな経験」であるため、性別適合手術の結果について研究を行ったり、代替治療とその効果を比較したりすることはきわめて難しい、と付け加えた。過去4年間に200人以上の性別変更手術を行ってきた泌尿器科外科医のジェームス・ベリンジャー氏は、ホルモン剤と手術を否定されたトランスセクシュアルの患者との対照群を比較するような研究を行おうとするのは、とても非倫理的であると主張した。

ロンドン西部のチャリング・クロス病院にあるNHSの主要なジェンダークリニックに勤務するベルリンガー氏は言う。「性同一性障害(トランスセクシュアル)の患者の治療を否定するような研究が倫理委員会を通過するとは思えません。いまのところ他に有効な治療法はありません。手術を受けるか、悲惨な人生を送るかです。治療を受けない人の5分の1は自殺に追い込まれているのです」

原文は、英国ガーディアン(The Guardian)紙・オンライン版より:
https://www.theguardian.com/society/2004/jul/30/health.mentalhealth


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