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学生時代の努力の結晶①

学生時代に研究した論文をここに残そうと思います。

大学4年間の中で一番、勉強したし、熱中した研究になりました。

※大学名は○○にしときます笑

2019年卒です。


ざっとまとめるとこんな感じです↓↓↓

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長いですが、興味があれば読んでください。

あと、スキもください

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1 はじめに

 筆者は大学4年間の内に2度の海外ボランティアを経験した。2度の経験から、海外ボランティアというものを難しく考えるのではなく、ボランティアをする内容の知識や技術がなくても、大学生は海外ボランティアをすることができるという実感がある。端的に言えば、大学生の海外ボランティアは気軽にできるということだ。国内にもボランティアを必要としている人がいる中、なぜ海外ボランティアをするのか。大学入学当初からボランティアに興味があり、また、行ったことがない国に行きたいという、筆者の想いがあった。しかし、国内ボランティアをしたことがないわけではない。

 本研究では、海外ボランティアに興味があるが、海外ボランティアに行ったことがない人にはどのような阻害要因があるのか、海外ボランティアをする前とした後で、どのような心情の変化があったのか、また海外ボランティアをした人は海外ボランティアをメインで活動し、現地での観光をしたいと考えているのかをそれぞれ明確にしたい。ボランティア・ツーリズムの可能性として、海外ボランティアの前後で一定の期間を確保し、観光することによって、現地に経済効果を与えることができるのではないか、と考えている。大橋(2011)は「ボランティア・ツーリズムにより、その地域の人たちが貧困から抜け出せるかという考えは、とられるべきものではない。それは、明らかにボランティア・ツーリズムの射程外の問題である。」(大橋 2011:14)と、述べているが、筆者はそうは考えない。貧困地域が取り残されないように先進国は考えていくべきだ。そこで、注目するのは、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsである。この目標1で掲げた「あらゆる場所のあらゆる貧困を終わらせる」という目標を達成するためにボランティア・ツーリズムは有効なのではないかと考えている。

 本論文では、ウェブ調査、文献調査、ウェブアンケート調査、所属していたサークルでメンバー座談会を実施した。

 ウェブ調査では、Students lab produced by Smart Campusによる、「海外ボランティアに対する大学生意識調査。恐怖心を感じる大学生もやや多め」を参考にしている。このウェブでは、2016年7月12日~7月15日にウェブ調査が実施され、延べ448人から回答を得ている。

 文献調査では、「若者におけるボランティアとその経験効果」(妹尾 2008)を参考文献としている。この文献では、2002年1月に福祉系専門学校生、延べ163名から回答を得ている。日本で行われたボランティアと海外で行うボランティアでは参加者の心情に差はあるのかを比較する。
筆者が作成したウェブアンケート調査では、○○大学☐☐学部1年~4年生以上を対象に実施した。

 メンバー座談会では、Karon(所属していたボランティアサークル。国際NGO団体Habitat for Humanity Japanの○○大学学生支部の団体名。「以下、ハビタット」と表記)のメンバーに協力を得て、ディスカッションを行った。

 本論文の以下の構成は次のようになっている。第2章では、本論文で使用する先行研究について述べる。第3章では、ウェブアンケート調査をまとめ、第4章では、Karonメンバー座談会のディスカッションの結果をまとめる。第5章では、第3章と第4章の総合考察を行う。第6章では、ボランティア・ツーリズムの可能性を考える。第7章では、本論文の結論と筆者の想いを述べる。なお、付録として、今回、実施したウェブアンケート調査の原本をまとめておく。


2 先行研究

 2.1 大学生の海外ボランティアに対するインターネットでのアンケート(Students lab produced by Smart Campusによる調査)

 Students lab produced by Smart Campusによると、海外ボランティアをしたことがある人は全体(n=433)の5%、23人である(図1)。海外ボランティアに参加したいという学生は4割弱となっている(図2)。海外ボランティアに対する恐怖心を感じているのは「ある」、「ややある」、「あまりない」を合わせると93%である(図3)。しかし、このアンケート結果では、海外ボランティアに参加したことがある人が恐怖心を感じたのか、判断できない。そこで、筆者が作ったウェブアンケート調査には、海外ボランティアに参加したことがある人に対しても、恐怖心があったのかを聞いている。海外ボランティアを勧めるにあたって、「恐怖心」というのはキーワードになってくる。この感情の払拭をしなければいけない。しかし、他の理由もあるのではないか、恐怖心だけが先行しているわけではないと考える。

図1 海外ボランティア参加経験の有無

スクリーンショット (93)

引用:Students lab produced by Smart Campus
「海外ボランティアに対する大学生意識調査。恐怖心を感じる大学生もやや多め」 
を参考に筆者作成
閲覧日:2018/12/6

図2 海外ボランティア参加意向の有無

スクリーンショット (94)

引用:Students lab produced by Smart Campus
「海外ボランティアに対する大学生意識調査。恐怖心を感じる大学生もやや多め」
を参考に筆者作成
閲覧日:2018/12/6

図3 海外ボランティアに対する恐怖心

スクリーンショット (95)

引用:Students lab produced by Smart Campus
「海外ボランティアに対する大学生意識調査。恐怖心を感じる大学生もやや多め」
を参考に筆者作成
閲覧日:2018/12/6


 2.2 ボランティア活動後の心情の変化

 妹尾の「若者におけるボランティア活動とその経験効果」(2008:37)では、ボランティア活動内容は国内の福祉施設内で生活介助や子供や障害者、老人を対象としたイベント活動などを一日もしくは数日間経験するというものであった。ボランティア活動を経験して得た援助成果の構造を明らかにするために5段階評価をした。

 〈1〉「活動を通じて自分自身が成長できた」(4.12)、「活動そのものが楽しめた」(4.07)、「活動を通じて喜びや感動を経験した」(4.04)、などがあり、若者はボランティア活動の経験が自分自身に成長や満足をもたらしたことで共通していることから、「自己報酬感」と命名した。

 〈2〉「日常生活の中での人との対応が好ましい方向に変わった」(3.61)、「対象者の幸福・安寧のための新たな目標が生まれた」(3.46)、「人や社会に貢献しようとする気持ちが芽生えた」(3.40)、であり、これらは、他者のためと自分の行動や認識が愛他的になる点で共通しており、「愛他的精神の高揚」と命名した。

 〈3〉「仲の良い友達ができた」(2.60)、「新しい出会いがあり、人間関係の輪が広がった」(3.04)、であり、これらは、人間関係が充実した点で共通しており、「人間関係の広がり」と命名した(妹尾 2008:38)。

表1 援助成果の構造

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注)回答は1=全く当てはまらない、3=どちらともいえない、5=非常にある 
出所:若者におけるボランティア活動とその経験効果 妹尾香織 2008 P38 Table1

 この結果は、日本でのボランティア活動であり、海外ではいくつかマイナスな面もあるのではないか、そして、海外でのボランティア活動を終了し、帰国後にどのような心情の変化があるのか、日本で行うボランティア活動と海外で行うボランティア活動の心情の変化を比較する。


 2.3 ボランティア・ツーリズムの定義

 ボランティア・ツーリズムとは、その理論的創始者といってもいいウエアリング(2002)によると、「ツーリストであって、様々な理由から、その休暇を、何らかの仕方でボランティア活動のために、すなわち、何らかの形で困窮状態にある人々の援助や支援、様々な環境の維持・調査・研究などの活動に従事するために、過ごすことをする者たち」(大橋 2011:9)のことをいう。

 しかし、この定義では、ボランティアと観光の要素が十分に反映できていないという意見もある。日本で最初のボランティア・ツーリズムに関する研究といえる中村他(2008)によると、ウエアリングの定義では、ボランティアを通じて見出せる“自己実現”の要素や、観光の特徴の1つである“移動”の概念が含まれていないと指摘している(森重,依田 2010)。ボランティア・ツーリズムに関する研究は緒に着いたばかりで、研究者の間で広く共有された定義はまだ存在していない(森重・依田 2010)。 

 本論文での、ボランティア・ツーリズムの定義は、次のように定める。“海外ボランティア”と“現地での観光”の2つの要素があるものを、ボランティア・ツーリズムと呼ぶことにする。


  2.3.1 海外ボランティアの定義

 海外ボランティアの定義については、大橋(2011)を参照し、以下のようにまとめる。

 海外ボランティアの定義として、まずボランティア活動の位置について、ステビンス(2004)は、余暇活動について「シリアスな」分野と「カジュアルな」分野とに分けることから出発するとしており、シリアスな余暇活動とは、何らかの目的意識的活動をいい、具体的にはアマチュア的活動、趣味活動、ボランティア活動の3種に従事するものである。これに対しカジュアルな余暇活動とは、それ以外の、特段の目的意識もなく、受動的無意味的に、漫然と過ごす余暇活動をいう。

 シリアスな余暇活動は、上記のように、ボランティア活動などを3大領域とするものであるが、次の6つの特質によって特徴づけられる。第1に、困難を乗り越えて進む忍耐、持続性があること。第2に、学習・訓練・修練によって上達するキャリア性があることである。第3に、そのための努力を必要とすることである。第4に、その結果、何らかの成果があり、それが、その人に達成感や自己実現感を与え、自己満足・自己充実感を可能にすることである。第5に、このため人はそこに自己アイデンティティを見出し確保しうるものであることである。第6に、ユニークなエトスを持つことである。

 現在のボランティア活動はさらに広い範囲のものとなっている。旧来主流であったのは、生活上もしくは身体上で支援を必要とする人たちへの支援を中心とする「必要を充たすボランティア」であったが、今ではそれはさらに広いものとなり、社会的に弱い立場の者をそもそも考え方において支援するような「思想的支援ボランティア」も必要になっているし、さらに人種的民族的偏見に反対することを支援する「人種的民族的共同体ボランティア」も不可欠となっている。

 アレクサンダー/バキル(2011)のボランティア活動についての考え方の一端は、次の5点において特徴づけられるものである。

 1.選択可能があること。ボランティア活動者は、どの仕事や業務に就くかを自ら選択できる。これは、ボランティア活動をするかどうかの決定も含むものである。

 2.ボランティア活動の領域。ボランティア活動の対象は、生活困難者や通常活動困難に対し援助が必要な事柄について支援をすることを始め、植物・動物や建造物等の消滅・崩壊・衰退などを阻止するための活動、災害時の救援活動である。困った状態にある人・動物・植物・建造物等に対する博愛主義的行為である。

 3.金銭的支出。少なくともボランティア活動の一環として募金活動は広く行われており、そうして得られた慈善的収入の一部が、ボランティア活動自体の費用の一部に充てられることは、広く認められていることであるが、搾取的なものになることは許されていない、という点が眼目である。

 4.時間。ボランティア活動は基本的に余暇活動であるから、このことによる時間的制約がある。

 5.目的。上記の2、ボランティア活動の領域のなかで、それぞれのボランティア活動者が選択したものが、直接的には当該ボランティア活動者の活動目的となる。

 これらのことから踏まえて、本論文での“海外ボランティア”というのは、途上国でボランティアをし、見返りを求めず、大学生が長期休みの時に行くものを“海外ボランティア”とする。 


  2.3.2 現地での観光の定義

 現地での観光の定義については、大橋(2011)を参照し、以下のようにまとめる。

 ツーリストであって、ボランティア活動をするものであり、ある意味では、ツーリストとして何らかの期待をもって、ツーリズムの一環としてボランティア活動をするものである。

アレクサンダー/バキル(2011)によると、主として次の4点である。
 1.ツーリストとしての期待。ここでいう期待とは、義務的なものを含むものである。
 2.ツーリストたるための問題。ボランティア・ツーリストとしては、旅行上で乗り越えなければならない障害があることが予想される。
 3.動機。ツーリストとしての動機では、例えば非日常的なことをしたいとか、他の文化に触れてみたいといった動機がある一方、ボランティア・ツーリストとしては、世の中のことに役立ってみたいとする動機があるはずであるといった点が指摘されている。
 4.インパクト。ここでインパクトとして挙げられているものには、ツーリズム一般の発展による。例えば地方の歴史的文化的社会的環境の変化もあれば、ボランティア・ツーリズムの発展によるメリットもしくはデメリットもある。後者では、ツーリストとしてのネットワークが大きくなることや、達成感が生まれることなどが挙げられている。

 これらことから踏まえて、本論文での“現地での観光”というのは、海外ボランティアに行った国で、短期間から中期間の観光をすることを言う。数時間で終わる買い物やご飯を食べに行ったことは現地の観光として、本論文での考えには入らない。


 2.4 ボランティア・ツーリズムの類型

 ボランティア・ツーリズムには、様々な形態がある。その中で、Callanan and Thomas(2005)が整理した「浅い(Shallow)」、「中程度(Intermediate)」、「深い(Deep)」というボランティア・ツーリズムの類型は、ボランティア・ツーリズムの多様性を理解する上で参考になる(森重・依田 2010)。

 「浅い」ボランティア・ツーリズムよりも「深い」ボランティア・ツーリズムが良いというわけではない。これらに共通することは、これまで観光地では優れた地域資源を探し、それに磨きをかけることが重視されていたが、ボランティア・ツーリズムでは地域活動の場そのものが観光資源になり得る一方、参加者も自己実現や社会貢献といった満足感を得るということである(森重・依田 2010)。

表2 ボランティア・ツーリズムの類型

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出典:Callanan and Thomas (2005)
出所:ボランティア・ツーリズムを通じた新たな都市・農村交流の可能性に関する研究 特定非営利活動法人 金沢創造都市フォーラム 森重昌之 依田真美 2010 P38 表-1 を基に著者作成


3 ウェブアンケート調査

 本論文では、ウェブアンケート調査を実施した。○○大学☐☐学部1年生~4年生以上(2018年度)、男女178名から回答を得た。実施日は、2018年11月1日~同年11月21日の21日間である。

 3.1 ウェブアンケートの方法と目的

 ウェブアンケート調査はGoogle Formで作成した。ウェブアンケートの内容に関しては、付録を参照してほしい。

 ウェブアンケート調査の拡散方法として、著者のグループLineで拡散し、個人Lineも送った。また、SNSでもウェブアンケートのURLを添付した。そして、◇◇論(講義名)と△△論(講義名)でアンケートの回答の協力を得た。

 ウェブアンケート調査の目的は、海外ボランティアに参加したことがあるかの有無、そして、海外ボランティアに参加したことがないけれど、海外ボランティアに興味を持っている人にはどのような阻害要因があるのか、海外ボランティアに興味がなく、国内ボランティアに興味がある人はどの程度いるのか。海外ボランティアをし、現地での観光は行っているのか、海外ボランティアをしたことがある人も、海外に対する恐怖心があるのか、その理由もウェブアンケート調査で聞いた。そして、海外ボランティアに行く前と行った後での心情に変化があったのか、も聞いた。


 3.2 ウェブアンケートの仮説

 筆者は、△△学科に所属する学生の方が◇◇学科の学生より、「海外ボランティアに参加した割合」および「参加したことはないけれど多少なりとも興味がある人の割合」は高いのではないかと考えている。なぜなら、△△学科には授業のカリキュラムでボランティアや国際協力に関しての講義があり、またKaronには△△学科の学生が多く所属し、ボランティアに興味がある学生がいるから。

 海外ボランティアに行く前と行った後で心情に変化があった人は多くいるのではないかと考える。筆者自身も2度の海外ボランティアを経験し、心情に変化があった。1度目の海外ボランティアの時は、大学1年生の夏にインドネシアのジョグジャカルタで住居建築活動を行った。

 海外ボランティアに行く前は、海外でボランティアをしてみたいと考えていた。東南アジアに行くことが初めてだった為、非常にワクワクしていた。そして、現地の人と仲良くなりたい、コミュニケーションをたくさんとりたいと考えていた。不安や恐怖心は少しあったが、楽しみが勝っていた。

 海外ボランティアをした後で、日本に帰国し、海外ボランティアを振り返ってみると、自分の欲を満たしているだけではないのか。例えば、相手に感謝されたかった、海外ボランティアをしてその経験を就活に活かしたかったなどの感情があった。そして、途上国の人を助けることで筆者自身達成感があった。しかし、ボランティア中は支援者としてボランティアをしていたが、住居建築活動が終わったら、日本に帰り、他人になってしまった。寂しい感情があった為、翌年の夏に、同じチームの同期のメンバーで2度目のインドネシアに行った。1番の目的は、完成した家を見に行くことであった。その後は観光である。家は無事に完成しており、筆者がいたチームを覚えていた。すごく感動した。ボランティア時は、遠く離れている日本の大学生で、しかも、建築に関して何も知らないのに、快く受け入れてくれていた。

 海外ボランティアの動機に関して、多くの人は、「途上国の人を助けたい」や「現地の人と交流したい」というところが非常に当てはまる人が多いのではないかと推測している。なぜなら、筆者自身、途上国の貧困に問題意識があり、実際に現地に行き、微力だが助けたいという気持ちがあるから、またそういう学生は他にも◇◇学部にはいると考えられる。また普段の観光では、現地の人と交流することはあまりできない、だから、海外ボランティアでは現地の人と交流がしたいのではないか。

 海外ボランティアには興味があるが、行ったことがない人に関して、「国内ボランティアがしたいから」に非常に当てはまると答えた人が多くなるのではないかと推測する。なぜなら、海外ボランティアより、国内ボランティアの方はお金がかからず、治安面も気にせずに、ボランティアができるから。


 3.3 ウェブアンケートの結果と考察

 ウェブアンケート調査の基本情報を載せる。

図4 性別

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図5 学年別

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図6 学科別

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  3.3.1 両学科で、海外ボランティアに参加したことがある学生の割合について

表3 海外ボランティアに参加したことがある学生

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 △△学科の学生と◇◇学科の学生を比べると、海外ボランティアに行ったことがある人は△△学科の学生の方が割合的に2倍以上高い。しかし、両学科共かなり小さい割合となっている。なぜ、△△学科の学生の方の割合が高いか、2つの要因があると推測される。1つ目は、大学生入学時から、ボランティアに興味がある学生が進学していると推測される。ウェブアンケート調査の中でも、数人、大学生以前に海外ボランティアに参加している学生がいた。2つ目は、△△学科のカリキュラムにある。学生にボランティアに興味を持たせるような授業が盛り込まれている。この2つのことから、◇◇学科の学生より、割合的に高くなっていると推測される。

 海外ボランティアの動機はどのようになっているのか。

表4 海外ボランティアの動機

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平均値は少数第3位四捨五入、SDは少数第4位四捨五入


 一番平均値が高かったのは、(3)「現地の人と交流したい」(4.71)だ。ここから、異文化にも興味があるということが分かる。ボランティアをするにあたって、ボランティアをする相手に直接会うことによって、現地でのボランティアのモチベーションにも繋がるのでないか、また、直接インタビューができ、生活の現状を聞くことができる。

 一方、平均値が低かったのは、(4)「友達に誘われた」(2.46)だ。ボランティアする人は自ら行動していることが分かる。

 意外と平均値が低かったのは(6)「人助けしている実感がほしい」(2.91)だ。これは、ボランティアする前には感じることはないのでないかと考える。海外ボランティアをした後で感じるものかもしれない。人助けしている実感が欲しかったのだという欲が後から改めて感じるものかもしれない。海外ボランティアをする前後の心情の変化に関しては3.3.5でまとめている。

 (7)「思い出作り」(3.46)にも自分の欲を満たすことに当てはまり、海外ボランティアで人助けはするが、結局は大学生の海外ボランティアというものは思い出作りになってしまうのだ。


  3.3.2 海外ボランティアで訪れた国について

図7 海外ボランティアに行った国(複数回答)

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 ここから分かることは、大学生の海外ボランティアは東南アジアが多く、「安近(あんきん)」海外ボランティアが目立つ。安近海外ボランティアとは、航空券代が安く、日本から近い地域に海外ボランティアに行くことを言う。安近短旅行(費用が安く、距離が近く、日程が短いこと。)と似ていて、旅行の部分を海外ボランティアとし、海外ボランティアでは、長期で行うボランティアと短期で行うボランティア、どちらが正しいという訳ではないので、安近「短(たん)」の短は表記しない。

 筆者が所属していたハビタットは、主に、アジア太平洋地域の支援に力を入れている。そのことを踏まえると、大学生のボランティアは安近海外ボランティアの学生が多いことが分かる。そして、ヨーロッパやアフリカなど、時間もお金もかかる国には海外ボランティアに行く傾向がほとんどないことが分かった。大学生の海外ボランティアは安近海外ボランティア志向がある。


  3.3.3 △△学科の学生と◇◇学科の学生はどちらが海外ボランティアの興味があるのかについて

表5 両学科学生の海外ボランティアへの興味の有無

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 結果として、△△学科の学生は、海外ボランティアには行ったことがないが、興味が◇◇学科の学生より、海外ボランティアに対する、興味はある。◇◇学科の学生も多少なりとも、海外ボランティアには興味があるそうだ。

 表3、表5からも分かるように、△△学科の学生は3.3.1で述べたように2つの要因があり、興味を持っていると推測される。◇◇学科の学生も高い割合となっている。これはなぜか、おそらく、大学生時にボランティア活動に参加し、なにかしらの貢献をしたいと考えているのではないかと推測する。そして、現地での観光も行おうとしているのではないかと考えられる。


  3.3.4 海外ボランティアの阻害要因について

表6 海外ボランティアの阻害要因

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平均値は少数第3位四捨五入、SDは少数第4位四捨五入


 1番平均値が高いのは、(2)「お金がない」(4.38)だ。本当にお金がないのか、他の趣味や生活費でお金を使い、海外ボランティアに参加するための資金がないのか、理由はたくさんあるだろう。海外ボランティアが、現在よりも一層低コストで参加できるのなら、「お金がない」ということにはならないかもしれない。

 次に、(1)「時間がない」(3.95)、(3)「余裕がない」(3.94)だ。これは、予想通りの結果になっている。大学生の特有の言い訳に聞こえる。もちろん、(2)「お金がない」(4.38)もその中に入る。

 一方、平均値が1番低いのは(5)「親の反対」(2.33)だ。大学生にウェブアンケートを行っただけでは、親の本心はこのウェブアンケートでは確認できない。しかし、学生は親に反対されずに海外ボランティアに参加できるのではないかと考えているみたいだ。また、筆者が所属していたハビタットでは契約上、未成年の学生は、海外ボランティアに参加するために、親の同意が必要である。そこで、親から海外ボランティアに参加することが拒否されてしまったら、行くことができない。あとは、本人による親の説得に限る。なかには、成人の学生でも、親に海外ボランティアへの参加拒否されてしまう件もある。親の価値観も影響する。親に海外志向がなければ子供には勧めないだろう。色んなことが学べる海外ボランティアに参加してほしいと筆者は考えている。自分の知らない世界を感じることは自分の価値観が変わるものである。

 (15)「国内ボランティアをしたいから」(2.85)という項目については、海外ボランティアに参加したことがなく、国内ボランティアに力を入れている学生がいるのではないかと考え、ウェブアンケート調査に入れたが、平均値が下から数えた方が早い結果になった。国内ボランティアより、海外ボランティアに興味があるのではないかと考える。筆者の考えは、ボランティアは見返りを求めるものではないが、その土地でボランティアの他に観光で記憶に残る体験をしたい。せっかく海外ボランティアをしに行くので、現地の観光を行いたいと考えている学生がいるのではないかと考える。○○学部の学生は比較的に海外志向が高い学生が集まっていると考えられる。

 次に、海外ボランティアに参加したことがある学生で、海外ボランティアに参加する前後での心情の変化についてまとめる。


  3.3.5 海外ボランティアをする前後の心情の変化について

 まず、どのくらいの人が海外ボランティアに参加した後に心情に変化があったのか。図を用いて見てみたい。

図8 海外ボランティアに参加した後に心情に変化があったのかの有無

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 海外ボランティアに参加したことがある学生のほとんどが、海外ボランティアに参加した後に心情に変化があったことが分かる。心情にどのような変化があったのかをまとめる。

 2.2 ボランティア活動後の心情の変化で紹介した妹尾(2008)の分類を援用し、〈1〉「自己報酬感」、〈2〉「愛他的精神の高揚」、〈3〉「人間関係の広がり」をまとめた。ウェブアンケート調査で自由記述していただいたものがどこに分類されるか見てみる。

〈1〉「自己報酬感」・・・自分自身に成長や満足をもたらしたこと
・価値観が変わった
・物の見方が変わり、視野が広がった
・前向きになった
・海外に行ったという達成感
・海外ボランティアはなかなか大変であり、貴重な経験でもあったので、あの時できたから出来ると自信に繋がっている
・誰かから聞いたことやインターネットで調べて得た情報ではなく、実際に自分の目で見て自分の耳で聞いて得たという自信になった
・自分が頑張ると喜んでくれる人がいると知った
・実際に非支援者の方々と関わることで、現地での生活を自分の目で見ることができて、その後の授業などで活かすことができた
・英語や現地の言葉が話せないなかでコミュニケーションするのは、難しいと思っていたが、実際はボディーランゲージなども含め現地の方と交流することが楽しいと感じた

〈2〉「愛他的精神の高揚」・・・他者のためと自分の行動や認識が愛他的になる点
・自分のやりたいことが人の役に立つことの嬉しさを知った
・これが本当に現地の人のためになっているのかよくわからなくなってしまった。理由は現地の人の家よりも風通しが悪かったりする家を建てたことと、お金を出すならプロが作った方がいいのではないのかと思ったからだ

〈3〉「人間関係の広がり」・・・新しい仲間、仲間と仲良くなった
自由記述では、「人間関係の広がり」についての記述した方はいなかった。仲間との仲良くなったことが重要ではなく、途上国の人に対しての思いやりや、日本と途上国を比べて、感じたことを書く方が多くいた。

〈4〉その他
≪A≫「人助けしている実感が自分の欲を満たしている」
・ボランティアとは何なのか、ただの思い出作りになってしまい、自分の中で疑問が残った
・就活のためや、ボランティアをしている自分がかっこいいみたいな人が現地では逆に迷惑をかけているのだと感じた
・短期間に一度だけ行くのは人助けでもボランティアでもなくただの自己満足にしかすぎず、観光化している印象を受けた

≪B≫「ボランティア活動とは」
・「ボランティア」に対して複数の見方ができるようになった
・よりボランティアの意義について考えるようになった
・ボランティアのあり方について考えるようになった。なにかをしたということだけでなく、継続的に彼らとの関係を築いていくことが大切だと考えるようになった

≪C≫「改めて気づくこと」
・水や電気のありがたさを知り、大切にしようと考えた。途上国を目の当たりにして、日本がいかに先進国で情報やモノに溢れているかを知り、贅沢な暮らしをしているのだ、という気持ちが強くなった
・日本の贅沢さ便利さを、もっと多くの日本人が自覚を持って欲しいと考えるようになった
・自分の当たり前と海外の当たり前は違うこと。 日々の出来事により一層感謝するようになった
・先進国第一主義が違うと思った、途上国にも興味を持つようになった、世界が広がった
・途上国の人たちの暮らしに対する考え方が変わった
・世界には様々な人々がいる、本当に貧しいことに困っている人はいる、貧しさにも様々な種類がある、世界について全然知らなかったと感じた
・自身の生活、生き方について見直した
・どんな環境の国にも幸せがあること、その幸せは人が創り出していること
・日本の豊さを感じた。いろんな国に行きたいとさらに考えた
・自分が恵まれた環境で生活していることを実感して、日々の生活に感謝するようになった
・家族の大切さなどを学んだ
・団体の中での自分の立ち位置を考えることができるようになった

≪D≫「将来につながる思い」
・仕事にしたいと思った

 ≪A≫「人助けしている実感が自分の欲を満たしている」では、思い出作り、話題作りになってしまっているのではないか、と海外ボランティアをしたが、どこかに自分自身にも利があることを結び付けようと考えているのではないか、と考えられる。

 ≪B≫「ボランティア活動とは」では、自分たちが行った海外ボランティアは本当に正しかったものなのか、改めて考えることができたという意見をもらった。継続的支援に関して、筆者自身、1回目の住居建築活動の海外ボランティアでは、家を全て完成するところまで携わることができなかった。そこで、翌年の夏に、海外ボランティアではなく、完成した家を見に行った。自分たちで建てた家の経過を最後まで見たいという考えもあり、現地に向かった。しかし、ハビタットでは、そこの家の住民に迷惑がかかるという理由で再度行くことはあまりいいものではないと言われている。しかし、責任をもって、経過を見に行くことは大切なことだと考えている。

 ≪C≫「改めて気づくこと」では、日本と途上国の発展の違いや日本で生活していることの贅沢さや便利さを改めて再確認することができたそうだ。

 ≪D≫「将来につながる思い」では、将来につながる体験をし、途上国開発など、そういう方面の仕事をしたいのかと考える。
このように、海外ボランティアをする前とした後では、多くの人が心情に変化があることが分かった。


  3.3.6 海外ボランティアに参加したことがある人の海外ボランティアに対する恐怖心について

図9 海外ボランティアに対する恐怖心

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 図9から、海外ボランティアに対する恐怖心が「ある」、「ややある」、「あまりない」と答えた45.7%の人が少しでも、海外ボランティアに対して、恐怖心を感じている。どのような要因が恐怖心を覚えるものかまとめてみる。

≪現地にたどり着くまでの恐怖≫
・目的地にたどり着くまで
・飛行機が墜落すること
・どんな環境でボランティアをするのかが分からない

≪現地での恐怖≫
・治安
・感染症
・衛生状態
・テロ
・食べ物
・異国の地でのワーク
・体調面
・言語の壁
・窃盗
・自然災害
・虫

 多く挙げられていたのは「治安」である。確かに、日本とは違う国に行くとき、全ての人が気になることだと考えられる。しかも、東南アジアに海外ボランティアで行くことが分かっているので、衛生面も気になるとこだ。

 現地にたどり着くまでの恐怖感もあるみたいだ。飛行機の事故をたまに聞くことによって、不安や恐怖に感じることがあるみたいだ。

 海外ボランティア自体、多数種類があるが、筆者が行った住居建築活動では、メインは家を建てることだ。しかし、環境に関しては、現地に行かなければ分からないものだ。そこに不安や恐怖感が表れているのではないかと考えられる。


付録

 付録では、本研究で実施したウェブアンケートを載せる。

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残りの4章~7章は次の記事に載せます。

参考文献、参考サイトは『学生時代の努力の結晶②』の最後に載せます。


最後まで見ていただきありがとうございます。


↓↓↓↓  続きです




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