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言の葉譚<011>翻訳しながらつくづく思ひ知る、日本語の表現力

お断りしておくが、この言の葉譚は英語習得のマニュアルなどではない。それならばネット上に無数にあり、長短あれど己れに似合った奴を選んで貰えばいい。ここはずばり、ある老爺の問わず語りの場だ。何の因果か言の葉に凝り英語にはまって、戦後間もない剣呑けんのんな頃にアメリカに留学して頼みもしない苦労をしていま八十七歳、まあ英語漬けの一生を送って晩年に至った、吾輩の言葉の足跡だ。

経験は数多あまたあれど、年月を経ねば得られぬ経験だけは、現に歳を重ねたものだけのものだ。それに英語を薬籠中やくろうちゅうに入れ、外務畑で過ごしつつ日本語と合わせて編み上げた吾輩の言の葉の曼陀羅は、我田引水を承知で言えば、充分他人様ひとさまを振り向かせるに足る筈、とまあ思い込んでの問わず語り、精々せいぜい贔屓ひいき願えれば望外だ。

全百話を目論む試みで本稿は011、「日本語の表現力」についてのお粗末、先ずはお目を汚させて頂く。

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