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回転寿司

 ついに開発できたッッ!この回転寿司レーンこそ、人類の救いだ。14世代にわたる開発によって人類の悲願が達成された。今までは自然現象に任せるままの「輪廻転生」を、これで機械化できるのだ。自然に対する文明の勝利、人類の魂の力の結晶、それが「回転寿司レーン」なのだ。

 あれから百五十年、飛躍的に進んだ科学技術の進歩は、もはや回転寿司の当初の意味を忘れていた。リニア化・量子テレポート化された回転寿司では、本来の回転寿司レーンが持つ魔術的な意味には足りなかったのだ。世間の誰も気づいていなかったが、回転寿司店舗の減少に合わせて、輪廻転生の数が減っていた。

 そんな中、ただ二店舗のみ、本来の回転寿司を守っていた。そう彼らこそ、回転寿司の開発一族である。大阪と京都で約千年にわたり、彼らは世界の量子的バランスを保つために、輪廻転生の人工化を研究し開発・維持して来たのだ。

 あるクリスマス、ついにそのときがやってきた。輪廻転生の減少を観測した「アブラハムの宗教同盟」が、大阪と京都の二店舗の存在を突き止めた。両店舗の回転寿司を止めさえすれば、増え続けるヒンドゥー教と仏教の息の根を止めることができる。少なくとも輪廻転生して来ないから、今生の者を相手にするだけでいい。

 後に「赤いクリスマス」と呼ばれるその日、日本は戦火に包まれた。ユダヤ教からは原理主義ネオ・サドカイズム、根源主義ノイエ・ファリジアー、キリスト教からはウルトラ・カトリシズム=オルソドクシア連合体らがイスラム武装勢力と結託し、日本を襲撃した。

 応戦するは米軍と自衛隊、国防呪術體、しかし世界最大の宗教が結託した「アブラハムの宗教同盟」の物量の前には為す術なく、じりじりと後退を迫られていた。しかし、そこに表れたのは「眠れる獅子の咆哮」の大部隊。そう、中国が動いたのだ。同時に現れたのは「アブラハムの宗教」の中でも穏健派の人々の義勇軍だ。北からは「亜使徒プーティンの剣」義勇軍部隊が現れ、アブラハムの宗教側からは「終末のトランペット戦線」が対峙した。

 かくして第5次世界大戦は勃発。老若男女神、世界の宗教N巴の戦いが始まった同時刻、第二校(元・大阪大学)と第三校(元・京都大学)では、関西全域を用いた超粒子加速器により、ある実験が行われようとしていた——果たして日本に2店舗のみ残されたオーセンティック回転寿司屋をめぐる世界宗教大戦の行方やいかに!?いま人類史をかけて、「生まれ変わり」の希望と「一度きりの生」の輝きが衝突する…!!!

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波勢邦生 拝

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