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キリスト教について

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「キリスト教理解」の理解について
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#人文学

神の五指としてのキリスト教

 キリスト教とは何か。多くの日本人にとって、難しい問いだと思う。質問も答えも、立場によって少しずつ異なる問いかけだ。おそらく一般的には、キリスト教の印象は、まず「結婚式」、次に「エクソシスト」などのオカルト関係になるだろう。または荘厳な礼拝堂や絵画だ。つまりサブカルチャーの背景文化として思いつくものがキリスト教だ。それ以外は「欧州の宗教」だとか「イスラム教と仲悪いの?」とかにとなるだろう。  キリスト教とは何か。多面的な問いだから、答えも複眼的になる。  歴史的には「五大

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やっぱり駄目だと思う

 何の話か。学会発表の話。  ぼくは博士課程在学期間の8割を兼業しながら行った。また満期退学後も、ほぼ一年間をフルタイム労働に費やしてしまい、研究が微塵も進まない期間があった。結果、研究に割ける時間はあまりなかった。指導教官が退官し、他の大学へ移る際、最後の指導にいたっては3月にお願いするハタ迷惑なことになり、さらに提出した内容は最低だった。後味の悪い幕切れとなった。  もっとも教授と学生の関係は「指導」という怜悧なところもある。だから猛省のち、新たな指導教官に反省を反映

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トンビと鼠とキリスト

  著名な児童文学作家で、谷真介がある。相当な数の作品を発表しているが、彼の仕事のひとつに「キリシタン童話昔ばなし」がある。おそらく、その仕事の集大成、または基礎となった著作が、新版『キリシタン伝説百話』(新泉社、2012年)である。  控え目にいっても珠玉にして出色、最高峰のキリシタン文学短編集だと思う。本書が収録するのは、日本土着の民話とキリシタン伝承の融合した諸伝説である。一話毎に感想を綴りたいほどに美しい。誤解を恐れずにいえば、これこそ、日本語で書かれた福音書と言っ

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聖書を聖書によって読むこと

 「ユダヤ教の聖書の読み方ーー詩篇とヨブの祈りーー」という、約4万字に及ぶ論考がある。出版は11月。幸いにも先日、この論考を事前に読む機会を得た。というか、編集者に渡す前の段階で校正した。執筆者は、ユダヤ文献学・ヘブライ思想の専門家・手島勲矢。ヘブライ大学、ハーバード大学を経由したユダヤ文献学の碩学である。ぼくにとっては3人目のヘブライ語の恩師だ。  この手島先生の論考が素晴らしかった。具体的な内容については、論考の出版に譲りたい。しかし、あまりにも素晴らしかったので、ご本

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聖書主義へのレクイエム

 日本人で「聖書主義」という単語を知る人はあまりいないだろう。耳慣れない言葉だと思う。だから、多くの日本人にとって、今からぼくが述べる「聖書主義」に関するアレコレは、不要なぼやきとなる。  では「聖書主義」とは何か。要するに、キリスト教神学なりキリスト教思想なりにおける専門用語である。平たくいえば「旧新約聖書66巻は、信仰と救いにおいて完全な神のことばである」という「聖書」に関する主義主張、イズムだ。  以下に述べることは「キリスト教学」においては当然の前提であるし、同時