もののけ姫と夏

きっと大半の人が、想像していた2020年夏とは違っていただろう。この現代に、疫病が流行するなんて。

東京オリンピックも延期になった。わたしはオリンピックが好きだ。今年の東京でのオリンピック開催も、とても楽しみにしていた。選手の特集もよく見ていたし、今年もあの感動をたくさん味わいたいと思っていた。でも、正直今は、もうオリンピックよりも、早くあの平凡で刺激的な、普通の夏に帰ってきて欲しいと思ってしまっている。実家に帰省して、高校球児をテレビで応援して、地元の友達と飲みに行って、音楽フェスで騒いだり、夏祭りに出かけたり。

でも2020年の夏は二度と戻っては来ない。帰省もしなかったし、こんなに家に篭る夏もなかなかないな〜と思う。そんなわたしの今年の夏にとても心に残ったことは、映画館でもののけ姫を観たことだ。

子どもの頃から金曜日ロードショーなんかで、何となく何度か観たことがあるような気がしていたけど、実際は序盤の祟り神のニョロニョロの気味の悪さに怯え、ものすごく怖がりだったわたしはまともに観たことがなかった、と今回わかった。
もののけ姫はすごかった。当時日本アカデミー賞の作品賞をアニメで初めてとったと後から知って、そりゃそうだと思った。
まず音楽がすごい。映画館の音響でアシタカせっ記が流れた瞬間、震えた。わりと序盤で泣きそうになった。アシタカの強さにも、サンの真っ直ぐさにも心を打たれ、山犬とヤックルが大好きになった。大人になった今だからこそ、山の主たちの気持ちも人間側の気持ちも理解できて、とても深い内容だった。映像もとても綺麗で、その上やはり音響が最高だった。めちゃくちゃ感動した。家に帰ってから、もののけ姫のことしか考えられなくなって、サウンドトラックをダウンロードし、考察を調べて読み耽った。映画のキャッチコピーが「生きろ。」なことにも震えた。しばらくもののけ姫以外のことを話したくなかった。

そして数日後、ひとりで2回目を観に行った。2回目も良かった。考察でアシタカの孤独についても学んでいたため、やはり序盤から泣けた。何度でも観れるなと思って、本気で3回目を行こうかと考えている。今でも相変わらずサウンドトラックを聴きながら洗い物したりしている。

やはり名作は時を越えても名作だし、映画を映画館で観ることの素晴らしさを感じた。
最近のサブスクの流行やらで家のテレビでよく映画を観る。でも映画館で観ると、作品に没頭できるし、音響の素晴らしさに気づくことができるし、集中して観ることができる。その結果、テレビで観る何倍もの感動体験ができるのだ。これからはできるだけ、映画館で観る価値のありそうなものは映画館で観るようにしたい。

ジブリのリバイバル上映、数年に一度で良いからやって欲しいなあ。10年後くらいに、また映画館でもののけ姫が観たい。

わたしの2020年夏は、もののけ姫に感動した夏だったと言っても良い。たいしたこと無い夏だと思われそうだけど、自分的にはすごく思い出に残る夏だ。
心が震えるような感動体験なんて、1年にできても数回だ。大人になって、その貴重さに気付いた。

映画館でもののけ姫のエンドロール眺めていた時に思った。ここに名前がある人は誇り高い仕事をやったんだなあと。少ししか関わってない人もいるだろうけど、それぞれにこの作品に携わっていて、顔も知らない大勢がものすごくカッコ良く見えた。アシタカせっ記がそれをより増長させた。

わたしはこの人生であと何度心が震えるほど感動できるだろう。良い夏だった。

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