映画『ゴジラ -1.0』感想

皆さんこんにちは。直江津高校3年生、羽川翼です。

タイトルを見てお分かりかと思いますが、今回は遊戯王に全く関係ない記事です。

ええ、見てきましたよ。今話題の映画『ゴジラ -1.0』。
何を隠そう、子ども時分から家にはゴジラのビデオが大量にあり、毎年ゴジラの映画を家族で見に行っていた私羽川。家にあったライティングデスクにはゴジハムちゃんとメカゴジハムちゃんが並んでいました。

今月は遊戯王について書くことがちょっと思いつかなかったので、この映画の感想記事を書こうと思います。あんまりまとまった内容になるかはわかりませんが、自分の脳内整理も兼ねて。
以下ネタバレ注意










・ゴジラの描写

一番大事なとこですね。

まずデザイン面。
ハリウッド版の『GODZILLA』シリーズ(2014〜)では、首が短く胸厚、正三角形に近いシルエットで常に前傾姿勢という、いかにも「動物・恐竜」感の強いデザインでしたが、
『シン・ゴジラ』(2016年)では首が細くて長く、小ぶりな上半身に太い下半身、細めの三角形のシルエットで直立姿勢という、「特撮スーツ」感のあるデザインでした。
個人的には、「怪獣」は動物や恐竜と一線を画す存在でいてほしいのと、どことなく人間臭さが漂ってる方が好みなので、『シン・ゴジラ』の方が好きなデザインです。

で、今回はどっちになるのかと思っていたんですが、比較的『シン』寄りかな?という印象でしたね。いわゆる「ミレニアム」シリーズのゴジラに近いかもしれません。これは結構好みでしたね。

動きなどに関しても、重巡「高雄」の砲撃を食らってよろめくとことか、銀座を破壊するシーンの動き方とかも、「デッカい動物が暴れてる」のではなく、「怪獣が戦い、破壊している」って雰囲気が出てたと思います。

ただ、背ビレで放射熱線がカウントダウンされる演出は過剰だったかな……
もちろん、あんな光線をポンポン吐かれたら絵面的にもお話の都合的にも困るので、「とっておきの必殺技」感を煽る演出をすることで、乱発しないことに説得力を持たせたいのは分かるんですけどね。良く言う「ウルトラマンはなぜ最初からスペシウム光線打たないのか問題」と一緒。
とはいえ、さすがにテンポ悪くないかな〜と感じてしまった。背ビレの発光と熱線が連動する演出自体は嫌いじゃないので、もうちょっとリズム感良かったら気に入ってたかも。

あと、銀座を破壊するシーンはもうちょっと尺を取ってじっくり楽しみたかった気がする。やっぱり怪獣が街を破壊するのは、怪獣映画の一番の見せ場だからね。
ただこれも、相手怪獣がいない中だと、破壊の絵面に変化を持たせにくいから仕方ないかもしれない。あれ以上だと間延びしちゃったかもしれないし、その中でも電車襲撃や取材班の転落、仕上げに放射熱戦と、テンポ良くゴジラの破壊シーンをまとめ上げたのは見事だとも言える。

・シナリオ全体について

シンプルで割と悪くなかったと思う。テーマも分かりやすかったし、語り口も決してくどくなかったから、雑音になることなく楽しめた。

大戸島でゴジラ出現→東京へ侵攻→海で撃破、の流れは完全に1954年の初代『ゴジラ』へのオマージュ。銀座での電車襲撃とかも多分そう。「-1.0」を謳うだけあって、その辺はかなり強調されていたと思うし、それが一つの楽しみにもなっていると感じた。
一方で、単に初代をなぞるだけではなく、「戦争」をより直接的に描写し、PTSDの問題を書き加えた点は意欲的に感じたし、その「戦争」や「PTSD」、そして「核」というテーマがゴジラに投影されているから、人間側のお話パートでも、常にゴジラの影を感じられて、『ゴジラ』という映画を見ているという感覚に没頭できた点も上手いなあと思った。そこはシナリオ構成の妙だったと思う。

これは個人的な好みなんだけど、『シン』みたいに、完全に舞台装置として扱われてるゴジラは好みじゃなくて、個性というか、性格が出ている方が好きなんだよね。ゴジラの描写のところでも書いたけど、やっぱり怪獣も生き物であって、それでいて単なる動物ではない、微妙な人間臭さを持つのが好きで、だからこそ怪獣が暴れていると恐怖と同時に爽快感があるし、娯楽として楽しめると思ってる。そこはハリウッド版のゴジラの方が好き。
その点、今作のゴジラは、舞台装置としての役割が大きい中でも、良い具合に性格付けができてたのかな。もっと色濃くゴジラに味付けしても良いんだけど、そうするにはやっぱりハリウッド版みたいに敵役の怪獣が必要になりそう。

シーンごとの雑感

大戸島〜帰京

瓦礫の山と化した自宅前で、空襲で死んだ両親に「生きて帰ってこいと言ったのに」と呟く敷島。敷島はまだ、親に守られる存在であり、守るべきは自分の命なんだなと。
この後、典子・明子らと出会って状況は変わるも、隣の澄子さんに助けられたり、金がなかったり、大戸島の悪夢にうなされたり、まだまだ葛藤しているご様子。敷島の「まだ俺の戦争は終わってない」とのセリフは分かりやすいね。

ゴジラと再会〜銀座壊滅

口に機雷突っ込んで爆破するとこはジョーズやん!!!!!ってツッコミ入れたくなったし、電車で典子が落ちそうになるとこはミッション・インポッシブルの最新作やん!!!!!ってツッコミ入れたくなった。意図してんのかは知らんけど。
この辺のゴジラの動きとか雰囲気は上記の通り好みだった。

ゴジラ対策会議〜震電改修

誰かが貧乏くじ引かなきゃならない」は、ゴジラ足止めに向かう時の艇長の言葉のリフレイン。今作はこういうリフレインが多く、テーマを理解しやすくし、シナリオの雑音感を消すのに一役買ってるなと感じた。

この辺では完全に「死んでも殺す」状態の敷島。典子によって再び「守られ」、自分は典子を「守れなかった」ことで、プッツンしちゃったわけだけど、ある意味でそれも、ただ逃げるだけだった大戸島からの成長だろう。
橘に特攻案を示して震電改修の話を通したのも、その成長と覚悟の賜物なわけだしね。

その後、ゴジラ出現の報を受けての会議で、学者が演説するくだりで「脱出装置の無い戦闘機」と言い出したとこで、「ああ、これは震電に脱出装置ついてて、最後は敷島も助かりますね」と分かっちゃったので、この辺はキーワードとかをリフレインさせる手法が、ちょっとやりすぎになってたかな〜と感じた。
まあ、最終的に予想は裏切られたんですけどね。その予想を立てさせて裏切るために、あえて強調したんだとしたら、そりゃもうスタンディングオベーションですわ。多分違うと思うけど。

ワダツミ作戦

ゴジラと敷島の震電のやり取りも、結構迫力あって格好良かったですね。

ただ、水島が呼んできた軍艦やら漁船やらでゴジラを引っ張り上げようとするとこ、あれはさすがに無理がないか?
基本的に「宇宙空間で爆炎や爆発音は出ない」的なツッコミは野暮だと思ってるんだけど、「荒唐無稽さを楽しむための最低限の説得力」ってのは必要だと思う。
例えば初代ゴジラなら、オキシジェンデストロイヤーという荒唐無稽な兵器でゴジラを倒すわけだけど、そこにはいかにも只者じゃない雰囲気の芹沢博士という人物がいて、「そうでもしないとゴジラは倒せない」という必然性の感覚を劇中で与えてるから、「天才科学者が驚異的な科学力で作り出した奇跡の兵器」みたいなご都合主義に説得力を与えて成り立ってるんだよね。

振り返ってあの水島が頑張るシーン、普通に考えて2万tの巨大生物(まだ生きてる)をあれで引っ張っても、減圧によるダメージを与えられるようなスピードで引き揚げられるか?無理じゃね?
それで上がってきて「ダメージが足りない!」って、そらそうよ、お〜んとしか……
「沈めてダメージ与えたけどまだ生きてます!引き揚げ用の浮き輪食い破られました!」→ゴジラが自分で浮上してきて熱線打とうとしてきて絶望→敷島突っ込む、の方が、何なら流れキレイじゃないかと。

そもそも、「戦争に行かないことは幸せなんだ」という艇長の言葉、響いてなかったかんか?
水島は劇中を通じて、蛮勇に逸る若者って描かれ方をしてて、それが「強大な敵に命をかけて立ち向かう」という、ともすれば戦争賛美的描写に傾きかねない展開に対しての、強いアンチテーゼとして機能していたと思う。
それが最後、戦場に勝手に登場してガッツポーズって、それはなんか違くないかって。
逆に、あのまま取り残されて、「俺も戦いたいんだ!」って言い続けてる方が、水島の愚かな若さが強調されてよかったんじゃないかと。後味は悪かったかもだけど。
今作の展開にするなら、もうちょっと水島の成長やらを掘り下げた描写が必要だったんじゃないかと。

ただ、そういうゴチャゴチャは最後の敷島の特攻のシーンでひっくり返された。
絶対に、橘が「爆弾の安全装置だ」って言ってた赤いコックが実は脱出装置のスイッチで、敷島は死ぬつもりで突っ込もうとするけど命を拾ってめでたしめでたし、になると予想してたから、赤いコックを引いても脱出せず、普通に突っ込んでくの見て「え、マジ?」ってなった。
けど、その直後に、ちゃんと脱出装置がついてて、敷島は自分でそれを起動した、ってことが明かされて、「やられた〜」となった。
確かに、私の考えた結末だと、敷島は結局誰かに「守られる側」のままなんだよね。特攻でゴジラを倒して、誰かを「守る側」にはなれるかもしれないけど、「守られる側」を抜け出せない。それだと、戦後東京に帰還した当初から変わってないことになる。
でも、敷島が自分で「生きる」という選択をしたこの結末では、「守るべきものを守る」ために、「自分を守る」ことができるようになっている
両親に言われた「生きて帰ってこい」の言葉を頼りに、自分の命だけを守ろうと怯えていた、大戸島の時の敷島はもういないのだ。

ワダツミ作戦のシーンが一番文量が多いことからも分かるように、ここが一番「う〜ん?」ってなりながら見てたけど、このラストで持ってかれた。これでシナリオ構成の評価マジで爆上がりしたね。

ラストシーン

まあ、このくらいのご都合主義はご愛嬌。もし死亡届とか出しちゃってたらどうなるんだろうな……ってちょっと思った。

まとめ

ところどころケチもつけたけど、全体的にはかなり面白かったです。2回目までは絶対に面白く見られるだろうなってレベル。
ハリウッド版が生まれて以来、ちょくちょく新作ゴジラが日米で作られてるけど、その中でもかなり上位に来る面白さだったと思う。
オススメです。

では今回はこの辺で。
なんでもは知らないけれど、ゴジラのことは知っています。羽川翼でした。

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?