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メイクはいけないこと?初めてメイクが好きと言えた私の話

コスメを見るとドキドキした。
キラキラしたグリッター、赤い発色が綺麗なグロス、パッケージが魔法使いの道具みたいなアイシャドウ、、。見るたびに「はぁ、、」と勝手に溜息がでるくらいコスメというものは可愛い。


友達とコスメ売り場に行ってテスターを試しては「これがいいかな」「この色の方が似合うよ」とはしゃぐ、あの時間が大好きだった。
はじめてのアイシャドウはドキドキしながら買った。
はじめて引くアイラインは上手く引けなかった。
沢山メイク動画を見た、雑誌を見てキラキラしたモデルに憧れた。
私もこんなメイクをしてみたい。こんな風に自分をメイクで表現したい、高校生の私はそんな風に思った。


学校ではいつもメイクが禁止されていた。
透明なマスカラ、薄い色のアイライナー、ブラウンのアイシャドウ、色付きのリップクリームは先生にばれないと言われていたスクールメイクの必需品だった。
学校にメイクをしていった友達が先生に叱られていたのを聞いた。
「なんで学校はメイクが禁止なのに、社会に出れば必須になるんだろう。」そんな疑問を友達との間でも話したことは、きっとおかしいことではなかったはず。そういう校則がある学校だっただからだろうか。メイク=いけないもの、大人のものというイメージが私には潜在的に刷り込まれていた。この意識は大学生になった今、やっと解けていった。そんなことはないはずなのに。メイクは、自分にとって自分を表現する方法の1つで、癒しで、趣味なのに。

私はナチュラルなメイクも好きだけれど、何よりもその人の個性を表現したメイクを雑誌とかで見るのが大好きだった。特に中学生の頃に初めて見た「NYLON」という雑誌は衝撃的だった。プロのヘアメイク、完璧な世界観を表現したセットに度肝を抜かれ、普段見る俳優たちが別の顔をしてそこにいた。こんな表情をするんだ、まつ毛こんな風になってるんだ、目の形がこうだからアイラインをこう引くんだ、、。写真から伝わる迫力に一瞬で憑りつかれた。何よりも、性別的に男性も女性も関係なくモデルがメイクをしていて、正直、当時知識がまだ足りなかった私は驚いた。そうか、メイクって性別とか関係ないんだ、とその時初めて知った。

「メイクが好き、もっと上手くなりたいんだ」
そんな風に口に出して人に言うことは私にとって怖いことだった。
「メイクで女の人って変わるよねー」
「メイクって詐欺だよね」
メイク動画を見ると、こんなコメントをたまに目にする。メイクは性別が関係ないものだと思っているし、私は自分が楽しくてメイクをする。
校則の無意識なイメージと、感覚としてあったからか、「メイクが好き」と言うことに勇気が必要だった。
世の中には沢山の美の価値基準があるけど、数年、いや、数週間で変化していくこともある。こないだまで「かわいい、綺麗」と言われていたものが大量に量産されて大量に消費されていくことが多い。InstagramやTik Tokを見ているとそんな風に思ってしまう。
ずっと変わらない美をもつことなんて出来るのだろうか。

たまたま立ち寄った化粧品売り場で出会った、ある美容部員さんが大好きだった。手先や髪まで美しくて、いい香りがして、輪郭にそって綺麗に縁取られた品のあるリップや目の形にあったアイメイクは見ていてほれぼれとした。
ぱっちりとしたまつ毛に塗られたマスカラ越しに目が合って、「この色、あなたにお似合いですよ」とアイシャドウを見せてくれた。5月の色に丁度いい、エメラルドグリーンのアイシャドウ。手の甲に取ると、キラキラしていて、なめらかに発色していた。
「これね、新作の色なんです。緑色が綺麗でしょ?少し普段のメイクには使わない色かもしれないけど、こうね、少しここにのせると、ほら可愛いですよね!」
そう言って、目尻に近い部分に丸く色をのせてくれた。頭を左右に揺らしながら鏡をのぞくと、キラキラしているその色が可愛かった。

メイクの技術はもちろんだけど、言葉遣い、接客の態度、笑顔がとにかく魅力的な方だった。この後も何人か別の美容部員さんと会ったけど、こんなに内側から品が溢れてる人はそうそう出会えなかった。
”ああ、私もこんな人になりたい”、そう思った。

大学生になって、私は「マイプロジェクト」と出会った。
自分の好きなものと向き合うそのプロジェクトは、「マイ感」を大切にしていた。マイ感とは、”自分の”気持ちを大切にすることかなと思っている。私はそれを「主観的な好き」とイメージしている。他人の需要じゃない、私にとっての需要。心の真ん中を突くような、そんな主観性。
主観的な好きとは反対の「客観的な好き」を選んでいたそれまでのプロジェクトから、別のプロジェクトに変えるとき、私はメイクがパッと思い浮かんだ。「あ、私やっぱりメイクが好きと言える自分になりたい。」と思って、初めて勇気を振り絞って、メイクが好きなのとメンバーにメイクをテーマにしたプロジェクトを相談したら、いいね、すごく面白そうと褒めてくれた。すごく嬉しかった。


プロジェクトをやるにあたり、もう一つのテーマとしてジェンダーについて勉強をしていた。そんな中で、就活に求められるメイクや髪形、学校で強制的に地毛の茶色を黒に変えさせられたことなどのニュース記事を読んだ。
私自身も生まれた時、地毛が茶色に近くて、頭髪検査に将来私が引っかからないようにと、母は幼い頃、髪色を写真に撮っていてくれた。高校の時、染めてはないけど、夕日が当たると結構茶色に見えたので、友達や先生に茶色だねとよく言われたことがある。そんな自分の髪の色を気に入ってはいたけど、世の中にはその個性すら引っ込ませようとする人がいるのかな、とニュースを見て思った。

そのときのTPOに合わせる場面も確かにあるし、必要なことかもしれないけど、皆が個性を表現できるメイクってできないだろうかといつも考える。もしくは、「アート」みたいなメイクを発信できる場をつくりたいなと。

性別も、国籍も、年齢も超えて、メイクはその人のもつ魅力を引き出してくれるものなんじゃないかなと思っている。そんなボーダーラインを越えていけるツールなんじゃないかと考えている。

その色きっとお似合いですよ、と言って初めてメイクした私を褒めてくれたあのときの美容部員さんの様に、私も誰かにメイクでそんなドキドキを与えられるようになりたい。
それを引き出せるような場を、今、頑張って創っている。


(4/10 しまねスタートアップゼミ編:番外)

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