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WSMR-5: イーロン・マスクの社長就任後、Twitter上の反ユダヤ主義が2倍以上に増加

ソーシャルメディアニュース

ChatGPTは政治的に偏っているし、偏らせることができる

ChatGPTが爆発的に普及したとき、ChatGPTに政治的偏りを試すテストを行った人がいました。10の質問により行うもので、結果は明らかな「リベラル」だったそうです。そこで今度はChatGPT対して、明らかに保守的な傾向の質問に答えるように訓練もしてみたところ、実際に右寄りの答えを返すようになったそうです。しかもこのfine-tuningは約5,000点のデータと300ドル程の費用という手軽さをもってなされたそうで、今後様々な政治思想を持ったチャットAIが出現するかもしれません。

GESISがAwesome Computational Social Scienceを公開

海外でよくあるAwesomeシリーズ、つまり有用まとめリンクページですが(機械学習や、生成AIもあります)、なんと今回ドイツの著名な研究グループGESISの計算社会科学研究チームが、計算社会科学のAwesomeリストを公開しました。学会や読むべき本、論文などがまとまっています。計算社会学に入門された方は一見の価値ありです!

イーロン・マスクの社長就任後、Twitter上の反ユダヤ主義が2倍以上に増加

FacebookやTwitterなどの企業はこれまでにプラットフォームの健全さを保つため、過激主義やヘイトスピーチ、ハラスメントに対応する「モデレーション」に取り組んできました。しかし、マスク氏はTwitter社長就任後、短期間でTwitterのTrust and Safety Councilを解散させ、banされていたアカウントを復活させ、ヘイトスピーチポリシーを執行する責任者も含めてTwitterのスタッフを半数以上解雇しました。これによる結果は顕著で、マスク氏の社長就任前後で、1日平均の反ユダヤ主義のTweetが105%増加したことがわかったそうです。

米国著作権局が生成AIに関連する法律の整備に取り組む

米国著作権局は、近年の生成AIが個人および企業によるその利用が急速に拡大していることを受けて、AI生成コンテンツを含む著作物の扱い方について検討をはじめました。事務局は、アーティスト、クリエイティブ産業、AI研究者、およびこれらの問題に取り組む弁護士による公開公聴会を開催する予定です。今後法律がどのように整備されていくか注目してきたいです。

https://medium.com/the-generator/ai-and-the-law-what-you-need-to-know-bfebb51b7d53

気になった論文

有向ネットワークにおける強い結合性

ネットワークの強度の理解は様々な場面で役立ちますが、多くの研究は無向グラフについてであり、有向グラフの研究は比較的少ない状態です(しかし現実世界は有向グラフは多いですよね)。本研究では、あらゆる有向ネットワークの強度を解析的に予測できる枠組みを提案、検証しています。これにより、強く結合するネットワークの特徴を発見し、現実世界によくある高密度ネットワークの多くが強く接続されていない理由の説明も行っているそうです。さらに、全体の方向性に反する辺を攻撃することで、最小限の労力で結合構造を破壊できることを示し、ネットワークの強さがごく一部のエッジに大きく依存する可能性があることを示唆したそうです。

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2215752120

極右SNS「Parler」の停止後、ユーザは他のSNSで活動を継続

SNSを管理する立場の企業は、そのSNSで問題が起こるとユーザをBanしたり、プラットフォームを部分的に閉じたりして対応します。Parlerはもともと極右に人気のSNSでしたが、それでも米国議会議事堂の襲撃に活用されたという報告を受けると、AWSがParlerへのサーバー提供を停止しました。つまり今回の場合はSNS企業自体というよりはそのSNSを支える企業(アマゾン)の対応が行われたということになります。

しかし問題としては、そこで居場所を失ったユーザたちが、今度は違うプラットフォームで活動を始めたために、アマゾンの対処の意味合いが薄れているという事態が議論されています。この論文ではParlerの停止後しても、GabやRumbleといった周縁SNSにユーザが移行し、全体の活動量はむしろ向上したことを示しました。つまり、単一のプラットフォームが停止されても、他のプラットフォームに逃げ場がある限りは、対処の効果が薄いということが示唆されています。

“Text as data”手法のジャーナリズム研究におけるシステマティック・レビュー

自然言語処理の手法が発達は、ジャーナリズムに大きな影響を与えます。このレビュー論文では、ジャーナリズム研究における自動コンテンツ分析の利用をまとめています。その結果、コミュニケーション科学者による計算機科学的手法の利用が増加していること、一方で、分野の学際性は思ったよりも高まっていないことを示しました。

Tweetデータ処理のためのライブラリが公開

TweetNLPはTwitterのテキストデータを上手く処理するためのライブラリのようです。しかしAPIが使えなくなりそうな昨今、このライブラリの有用性もどうなるのか。。

https://github.com/cardiffnlp/tweetnlp

社会科学のための計算機科学的テキスト解析手法の3つのギャップ


本論文では、近年発達している社会科学研究のための計算論的テキスト分析法(CTAM)の有用性について、その進歩を妨げる3つのギャップを掲げています。第一にCTAMの開発は、妥当性の問題よりも技術的な問題を優先しすぎていること、第二にCTAMが特定のコンテンツや文書レベルのパターンを抽出することに重点を置いていることと、第三に英語版ツールの優位性が英語以外の言語の研究の包括性を低下させていることを主張しています。最後に、これらのギャップを埋めることで、CTAMの有効性、有用性、包括性を向上させることを目的とした研究課題を提案しています。

ChatGPTは米国の仕事の19%を破壊する可能性

OpenAIによって公開された本論文では、ChatGPTによって米国の約19%の仕事において、作業全体の少なくとも50%に影響を与えると推定しています。特に影響を受けると言われている職業は、通訳・翻訳者、詩人・作詞家・創作家、広報専門家、作家・ライター、数学者、税務申告者、ブロックチェーン・エンジニアなどが挙げられています。人の創造性に依存すると考えられていた多くの職業がすべて置き換わるとは言えませんが、業務の大部分がChatGPTを扱いつつ遂行することが多くなりそうです。

ChatGPT、テキスト注釈のタスクでクラウドワーカーを凌駕する性能を発揮

多くの自然言語処理アプリケーションでは、教師データの作成のためにアノテーションが必要です。これまでの多くのタスクで、MTurkのようなクラウドソーシングが利用されてきました。しかし一方で、近年はMturkの信頼性も指摘されています。そんな中、本研究では、2,382のツイートのサンプルを用いたいくつかのアノテーションタスクにおいて、ChatGPTがクラウドワーカーよりも優れていることを実証しました。しかもChatGPTのアノテーション単価は0.003ドル以下であり、MTurkの約20倍の安さだったそうです。(この結果は色々考えさせられますが、とりあえずアノテーションにChatGPTを使いたくなりますね。)


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