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琥珀のウイスキー、金のウイスキー

ワシじゃ! ミーミルじゃ。

入門編その2じゃ!

ウイスキーは美味しいんじゃ。前回記事で、とりあえずブレンデッドとシングルモルトのどっちなのかがわかるようになった筈じゃ。

今回は、色について、樽についてじゃ。色はそのウイスキーの味の傾向とある程度結びついており、期待をあおる。テイスティングでもまず最初にやることは色チェックなんじゃ。

ウイスキーにはざっくり2種類の色がある! 琥珀色と金色じゃ。カバランというウイスキーが、例として完全にわかりやすいので、商品画像を見比べてみてほしいんじゃ。


琥珀色のウイスキー


金色のウイスキー

どうじゃ? Amazonの商品画像でもひと目でわかるくらいに歴然と色が違うんじゃ。勿論、味も違う。この色の違いは樽(カスク)の違いによって生み出される。上記商品をもう一度見てほしいんじゃ。上のやつには「シェリーオーク」と書いてあり、下のやつには「バーボンオーク」と書かれていることに注目しておいてほしいんじゃ。


ウイスキーは最初は透明

蒸留器から蒸留されてきたウイスキーは無色透明なのじゃ。ウォッカやジンと同様の無色透明の液体じゃ。そもそもウイスキーの歴史において、最初のウイスキーは透明だったんじゃ。それを、まあ色々あって、山奥で酒樽に詰めて隠しておいて、後で見にきたら茶色くなっていて味も美味くなっていたという歴史があるんじゃ。

そう、樽に詰めて何年も寝かせておくと、ウイスキーは熟成されて、樽の成分がアルコール・スピリッツに溶け出し、蒸発や化学反応が複雑に繰り返されて、その結果として色がつき、味が深まるというわけじゃ。どんな樽で寝かせるか、どんな環境で熟成させるかによって、ウイスキーの色は違ってくる。

透明のニューメイク・スピリッツを寝かせる樽には色々な種類がある。スコッチウイスキーでは樽の木材はオーク(楢)一択じゃ。作りたての新樽で寝かせる事もあるが、だいたいは再利用の樽に入れるんじゃ。過去に何の酒が入っていた樽を使うかで、染み出す色と味の傾向が変わるんじゃ。

長く寝かせたほうが酒の色が濃くなる傾向は無論あるものの、寝かせる樽の種類のほうが、要素としては大きいんじゃ。そののち、そうした様々な樽の様々な酒色の原酒を混ぜ合わせて仕上げたものの色が、最終的なそのウイスキーの色という事になるんじゃ。

一般的に、シェリー樽熟成は琥珀色、バーボン樽熟成は金色じゃ。例外は無数にあるが、ざっくり傾向として、まずはこの基本を頭に入れておくとよいじゃろう。


シェリー樽

昔はスパニッシュオーク樽にシェリー酒を詰めていた樽がウイスキーの熟成に使われる事が多かった。シェリーとは、相当乱暴に言うと、ワインにブランデーを混ぜて作る酒じゃ。大昔にまあ色々あってシェリー樽が余った時代があった。そのときウイスキーはシェリー樽に入れられた。

シェリー樽を使うと、その成分がオーク成分とともに染み出して、色は琥珀色になる。そしてレーズン🍇やベリー系果実🍓、ダークチョコレート🍫等を思わせる香りで、ドッシリした味わいに仕上がるんじゃ。硫黄やゴムなどの嫌な感じのニオイまで行ってしまう場合も多々ある。色も味も濃いので、ありがたみがあり、人気じゃ。

現在はシェリー樽は新たに調達するのが難しい。ウイスキー用のシェリー樽を作るために樽にシェリーを入れる「シーズニングシェリー」の樽が殆どじゃ。ちょっとシェリーの立場からすると複雑な心境じゃろうな……ともかく、そんなこんなで、シェリー樽熟成のウイスキーはそうではないウイスキーよりも値段が高いんじゃ。

シェリー樽にはサブカテゴリがあって、だいたいの場合、辛口のオロロソシェリー樽か、甘口のペドロヒメネス(Pedro-Ximenez=PX)樽のどちらかじゃ。ペドロヒメネス樽で熟成させたウイスキーは真っ黒になるんじゃ。

シェリー樽熟成といえばグレンドロナックじゃ。見ての通り琥珀色をしており、甘いんじゃ。


バーボン樽

バーボンは、あのバーボンじゃ。アメリカはケンタッキー州でだいたい作られとるウイスキーの一種じゃ。トウモロコシを51%以上使うのが決まりじゃ。バーボンの世界では、樽は内側を焼いた新樽しか使ってはならんと法律で決められておる。一回使ったら、まだ丈夫な樽でも廃棄じゃ。だから、その樽を引き取ってきて、今度はスコッチウイスキーの熟成に使うわけじゃ。バーボンが入っとった樽で熟成させると、酒色は金色になり、柑橘🍊やリンゴ🍏の香り、バニラのような甘い風味がつく。

さっきのシェリー樽が不足気味なので、バーボン樽はよく熟成に使われるんじゃ。値段もシェリー樽熟成のウイスキーより比較的安くなる傾向があるんじゃ。

バーボン樽熟成といえばグレンリヴェットじゃろう。ワシが初めて飲んだシングルモルトはグレンリヴェットじゃった。青リンゴのような味がしたものじゃ。


だいたい混ぜる

シングルモルトのウイスキーといっても、無数の樽で熟成させて、それをバランスよくブレンドして作るのじゃ。熟練のブレンダーが、色々な樽を絵の具のようにして、最終的な味を作り出すんじゃ。だから、シェリー樽熟成オンリー、バーボン樽熟成オンリーのウイスキーばかりという事はない。これは本当にその蒸留所のやり方次第じゃ。シェリー樽しか使わない蒸留所もあるし、色々混ぜるところもあるし、バーボン樽だけの蒸留所もあるんじゃ。

なんにせよ、琥珀色が強いウイスキーは「シェリー樽多めのバランス」、金色のウイスキーは「基本、バーボン樽」という感じで、まずは第一印象判断じゃ。


その他の樽:ミズナラ樽

ジャパニーズ・ウイスキーで使われる事がある樽がミズナラ樽じゃ。よく知られとるサントリー山崎とか響とかにミズナラ樽熟成の原酒が一部使われておる。ミズナラ樽は普通のスコッチウイスキーにはない、独特な「オリエンタルな香り」をもたらす。白檀、伽羅のような香りとも言われる。なんとも言葉で表現するのが難しい、特徴的な香りと風味がつくのじゃ。これがウケて世界的に日本のウイスキーの名が轟くようになった。もともとは、日本の蒸留所が、なんとかウイスキーに使える樽を確保しようと四苦八苦して編み出したものらしく、導入当初は美味しく熟成させるのがかなり難しかったようじゃ。現代においても、ミズナラ樽熟成と聞いて即飛びつくのは危険じゃ。


その他の樽:ワイン樽

シェリー樽が足りなくなったから同じブドウ🍇ジャンルでワイン樽使ってやろう、大して変わらんじゃろ、そういうノリで始められたのかどうかは定かでないが、ワイン樽熟成のウイスキー原酒も存在する。ワイン樽熟成のウイスキーには独特の渋みが入り、シェリー樽とは全然別物の味になる。ワイン樽熟成のウイスキーはあんまり美味しくないものも多々あり、特に日本のメーカーのワイン樽原酒は評判が悪い印象じゃ。一方で、うまくやっている蒸留所もあり、たとえばスコットランドのグレンモーレンジィ蒸留所は積極的に様々な貴腐ワインの樽の熟成を試してきた。色々な種類がリリースされており、評判は概ね良いものじゃ。


その他の樽:STR樽

STR樽とは短期熟成ウイスキーのパイオニア、故ジム・スワン博士が発明した特殊な樽じゃ。用意するのはワイン樽だが、まずその内側を削って、ダイレクトなワイン要素を取り去ってしまう。そして、その表面をトースト(Toast)し、焼き焦が(Re-charring)して、オークを再活性化させる。これによりオーク・フレーバーを短期間で一気に酒に引き出す事を可能にした樽じゃ。STR樽を使うと、ライチやチェリー、バニラを思わせる香りがついて、なかなか独特な風味となる。STR樽は短期熟成でも美味しく仕上がるので、新興の蒸留所でもすぐにメイクマネーする事ができる。ジム・スワン博士は、「蒸留所を新たに立ち上げてから10年も樽熟成させていたら、その間の生計が立てられないだろう」という事で、STR樽を開発したのじゃろう。

STR樽の味を知りたければコッツウォルズのファウンダーズチョイスじゃ。これはイングランドに出来た新興蒸留所じゃ。美味い。


その他の樽:きりがない

その他、いろんな酒を入れた樽が様々に試されてきた。ラム酒の樽、コニャックの樽、テキーラの樽、日本酒の樽、さらにはもはやオークからも離れ、桜の木の樽、杉の木の樽……。まあ、基本、色物じゃな。


カラメル色素

ウイスキーといえば琥珀色をイメージするはずじゃ。熟成が長期であればあるほどウイスキーの色は濃くなっていく……一般論としては、それはそうなんじゃ。しかしその度合いは環境・樽によってまちまちで、一概にそうとは言えないんじゃ。しかし一般のイメージがそうである以上……登場してくるのが、着色料なんじゃ……!

これは赤色○号とかではなく、カラメル色素じゃ。カラメル色素以外の添加は禁止じゃ。だから、着色料といっても、ひとまず危険なケミカルとかではないし、メーカーが言うには、カラメル色素だからといってカラメル味がつくわけではない……らしいんじゃ。

これはインチキウイスキーの世界の話ではないんじゃ。実際問題、カラメル着色は、殆どの一般的ブレンデッドウイスキーで行われていると言ってよいじゃろう。シングルモルトのスコッチウイスキーでも、まっとうな蒸留所の銘柄でも、しばしばカラメル着色は行われる。カラメル着色されているウイスキーからカラメル色素だけを抜いたバージョンが別売される事などありえないので、「着色された場合とそうでない場合」を並べて味を検証する事など不可能じゃ。だから受け容れるしかないし、実際、着色されているウイスキーを全拒否したら、相当の量の美味しいスコッチを素通りするハメになり本末転倒じゃ。

カラメル着色の理由は「大量生産品の同じ商品でロットごとに色が違っていたらおかしいので、必要に応じて最小限の着色を行って調整する」という理屈じゃが……。その理屈はよくわからん。着色されていない場合は、「non colored」と明記されておる。ウイスキー愛好家からは着色は「なんか嫌」と嫌がられる事が多いので、クラフト志向の蒸留所では、逆に無着色を売りにするのじゃ。

無論、ワシもカラメル着色は嫌じゃ! 必要ないからじゃ。それに信用も損なうんじゃ。同じウイスキーの銘柄で、12年、18年、21年と熟成年が増すに従って、色が濃くなっていく、それはとても嬉しいものじゃ。しかし、その色の変化がもし、まやかしだったとしたら……?「21年ものだから、これぐらいカラメル色素を入れといたろ」みたいに調整されているとしたら!? 疑心暗鬼じゃ。ワシらのピュアな夢に水が差される思いじゃ。

というわけで、ワシはカラメル色素の存在を消極的には許すが、なるべくやめてほしいと思っておる。そして、手にとったウイスキーのラベルにnon coloredと明記されていると嬉しくなる。もっとnon coloredが一般的になると良いと願っておるんじゃ。


次回はピートについてじゃ

今日はここまでじゃ。これでオヌシは樽熟成についてざっくり理解したんじゃ。次はスコッチウイスキーを楽しむ上で避けては通れない重要な要素「ピート」についてじゃ。またの!


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