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カスクストレングスはすごいんじゃ


ワシじゃ!


前説

「ウイスキーはストレートで飲んでみよ」という前回記事に対して、「ウイスキーを皆の前でストレートで飲むと引かれるからダメなんだよ、わかってないなあ。若者っていうのはねえ、度数は要らないの! RTDなの! ストレートでウイスキー飲むことを推奨するのは飲酒文化にマイナスなの!(←!?)」みたいな謎めいたツッコミが飛んできていたので、一応言っておく。

TPOを考えなさい。

こんなことは本来、大人の諸君に敢えて言う必要もないことじゃが、飲み会の場で空気を読まず突然自信満々でストレートでチビチビ飲みだすようなマネは、場の空気を読んでおらず痛々しいので、ワシははじめから推奨しようなどと考えた事もないんじゃ。

ウイスキーのストレートは食中酒ではない。己と酒のface to faceで向き合う飲み物、嗜好品じゃ。連れションしないとトイレにいけない小中学生じゃないんじゃから、皆とワイワイやっている場でウイスキーをストレートで飲む必要など、どこにもないんじゃ。人前ではおとなしく角ハイでも飲んで、家やバーで本気を出しなさい。

(そもそも、ウイスキーの知見を広げようというコンセプトのワシのnoteに対して、何故一般的な大学生やサラリーマンの飲み会みたいな場での他人の反応を引き合いに出してまで石動雷十太みたいなノリで噛み付いてくる輩が現れたのか、全く意味がわからんが……。noteにも昔のはてなダイアリーみたいな血の気の多い地域があるんじゃろうか? シュールじゃ)

さて、今回はカスクストレングスについての話じゃ。


カスクストレングスとは

カスクはCask=樽Strength=強さ。そのまんまじゃ。つまり「樽出しのアルコール度数」という事じゃ。

世にある一般的なウイスキーは大体40%台じゃ。ウイスキーというのは蒸留されたてはアルコール度数が70%ぐらいある。それが熟成や蒸発を通して徐々にこなれていって度数が減ってゆく。さらに加水もされて、だいたい40%、43%、46%ぐらいのアルコール度数になるんじゃ。

しかし世の中には、加水をせずに度数が強いままボトリングしたものも存在する。これをあらわす概念・呼称がカスクストレングスなのじゃ。


なぜカスクストレングスはありがたいのか

カスクストレングスは加水をしていないので、だいたいアルコール度数が高い。つまり、濃いんじゃ(なんかめちゃくちゃ知能指数の低い事を書いているような気になってきたんじゃ)。原酒そのままのポテンシャルが出るというわけじゃ。

ウイスキーは自分で水を足して薄める事はできるが、濃くする事はできない。覆水盆に返らず。だからカスクストレングスはありがたいものなのじゃ。原酒含有量がなにしろ100%なので、出回る本数も加水したボトルより当然少なくなる。割り水をすればたくさん本数を取れるのに、あえてそのままボトリングするんじゃ。ありがたいんじゃ。だから値段は高めになるんじゃ。

若干ややこしい話になるが、「カスクストレングス=樽出し」ではない。樽から出た複数の原酒を混和したあと、加水せずにボトリングしたものも、カスクストレングスと呼ばれるんじゃ。樽出しのものはシングルカスクと呼ばれる事もある。

また、度数が低いとカスクストレングスではないかというと、一概にそういうわけでもない。熟成が進めばアルコール度数は減っていくので、長熟のボトルは、カスクストレングスであっても、45%ぐらいのアルコール度数になることは普通じゃ。まあこれは長熟の場合だけじゃな。

無駄なものが入っていないという点で、カスクストレングスは手っ取り早く最強なんじゃ。ワシらはウイスキーをなるべく最高の状態で飲みたいので、変なものが入ってるとテンションが落ちるんじゃ。甘味料とかが入っているのはもっての他(そもそもスコッチでは違法)だし、カラメルで着色されているのもちょっと嫌なんじゃ。冷却濾過されて美味しい成分が除去されているのも嫌じゃ。究極、水が混ざっているのも嫌、というワケじゃ。

殆どの場合、カスクストレングスのウイスキーはカラメル着色も冷却濾過もされておらん。加水しないからとりあえず澱も出てきておらず、冷却濾過もしなくて良いんじゃ。ナチュラル100%、それがカスクストレングスじゃ(これは相当乱暴な極論じゃ)。


フロム・ザ・バレルはカスクストレングスではない

なお、ニッカが誇る最強のブレンデッドウイスキー、フロム・ザ・バレルは、樽出し「風」を売りにして、51.4%のアルコール度数で、濃くて美味しいんじゃ。しかしフロム・ザ・バレルはそれでもカスクストレングスではないんじゃ。若干の加水がされておる。別にそれが悪い事ではなく、あれはカスクストレングスではない、という単純な事実の確認じゃ。

※フロム・ザ・バレルは限定品ではなく、生産終了品でもありません。定価を確認し、プレミア価格になっていないかに注意してください。


ウイスキーのアルコール度数は高い

ウイスキーのアルコール度数は最低でも40%。カスクストレングスになると60%を超える事もある。しかし、ワシのところに謎にイチャモンつけにきた奴のように、世間では短絡的に誤解されているフシがあるが……ウイスキーは度数こそ高いものの、度数が高い酒を飲む事は別におかしな事ではないし、危険な事でもないんじゃ。ウイスキーはウォッカではないので、グビグビ飲んで「カーッ!」みたいな飲み方ではないんじゃ。

ウイスキーの度数の高さは濃さと味わい深さのバロメーターであって、「酔っぱらえるから良い」などという、獣じみた考え方で有難がっているわけではないんじゃ。スピリタスを罰ゲームで飲む大学生ではないんじゃ。ウイスキーは、ゴクゴク飲まない。微量を口に含み、舌に乗せて大切に味わうんじゃ。ストロングチューハイの9%のほうがよっぽど危険なのは、あれが酔うためのアルコールとして使われるからじゃ。

度数の高いカスクストレングスのウイスキーは、通常の40%のウイスキーと比較してもまろやかさが段違いじゃ。とろけるような舌触りと、アルコールの揮発性によって鼻に抜ける強い香気が特徴じゃ。もちろん、そこから加水していっても良い。むしろ「カスクストレングスのウイスキーは基本、自分で好みの濃さに加水して飲むもの」ぐらいの心構えが気楽でよい。ウイスキーは少量加水すると一気に花開く。カスクストレングスのウイスキーを加水して飲むと、濃さも香りの華やかさも両立できて、天国なんじゃ。


手を出しやすいカスクストレングスのウイスキー

手を出しやすいといっても、カスクストレングスは一般的な存在ではないし、樽から作れる本数も少なくなるので、値段はどうしても高くなるんじゃ。大体の場合、限定ラインとして出てくるんじゃ。


グレンリヴェット ナデューラ カスクストレングス

有名なグレンリヴェットもカスクストレングスを出しておる。近年のグレンリヴェット12年は「酒質が軽くなった」など言われておるが、カスクストレングスはそういう心配は要らないんじゃ。パワフルでガッツリ楽しめるんじゃ。


ハイランドパーク カスクストレングス

ワシのイチオシの蒸留所ハイランドパークから、オフィシャルのカスクストレングスが出ておる! 力強い味わいと、ハイランドパークからしか得られないヘザーハニーの香りを楽しんでほしいんじゃ。


コッツウォルズ ファウンダーズチョイス

イングランドで作られているウイスキーじゃ。見ての通り度数は60.5%。カスクストレングスじゃ。コッツウォルズの濃厚な味と香りの凝縮感は本当に素晴らしく、オススメの蒸留所じゃ。


トマーティン カスクストレングス

6000円台でカスクストレングスがあるとは思わんかった! バーボン樽とシェリー樽をバランスよく組み合わせてあるカスクストレングスじゃ。


アベラワー アブーナ

濃厚シェリー樽熟成で大人気のアベラワー・アブーナもカスクストレングスじゃ。


アイリーク カスクストレングス

アイリークはアイラウイスキーの樽を業者が買いつけて独自にボトリングしたもので、原酒は若いカリラだと言われておる。カスクストレングスでこの値段はビックリじゃ。美味いかどうかは知らん。


カスクストレングスのものを飲むならボトラーズ

蒸留所のオフィシャルからカスクストレングスのボトルが出ている事は実際少ない。加水して本数を多くして多くの人に行き渡らせる社会的要請があるからじゃ。では、ワシらはどうやってカスクストレングスのものを飲めばいいのか。それはボトラーズのボトルを求めるということになる。

ボトラーズとは即ち、蒸留所を有しておらず、樽を蒸留所から買い付けて、独自にボトリングする業者の事を指す。彼らは加水されていないカスクストレングス・シングルカスクのウイスキーをリリースしておる事が多いんじゃ。

ボトラーズはどう紹介したらよいか迷うところがあるので、今回はあまり深入りせんようにしておきたい。値段も高いんじゃ。


今日はここまでじゃ

次回は「ボトラーズとは何か」について書いてみても良いかもしれん。ただ、どういう切り口でまとめたものかどうかよくわからん。違う企画になるかもしれん。またの!


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