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思い出に残っているスマートフォンゲーム|#1

〖2023年6月13日更新〗

入れ込んでいたスマートフォン(タブレット端末向け)ゲームがサービス終了を迎えるのはつらい。いつか終わるものだと理解しながらも、だからこそいま、究極的にはまたとないゲーム体験のために対価を支払うのだと兵(つわもの)は謂う。

筆者はハードウェアについて頭が働かないため、ソーシャルゲームに限らず、基本的にすべてのビデオゲームが「いつか終わるもの」に該当してしまう。特にスマートフォンゲームは、次から次へとアップデートされるOSについていけなくなった作品も、どんどんとプレイできなくなっている。

2010年代のはじめ、ガジェット好きの友人のご好意でiPad(第1世代)とiPod touch(第3世代)とを譲り受け、Apple社製のタブレット端末を使い始めた筆者だが、改めてこれまでにダウンロードしたAppの履歴を眺めていて、思い出に残っているスマートフォンゲームをちょっと紹介してみたくなった。

「スマートフォンゲーム」とはいっても、初出が別媒体のものもここでは便宜的に含めている。筆者のプレイ体験なんてたいへん狭小なもの——ジャンルに偏りがあるし、当時の肌感覚を不正確に捉えているかもしれない——ではあるが、それでもなにかあなたに刺さるものがあれば嬉しい。


94°(2014)

フランスのScimobが開発・発売したカジュアルなクイズゲーム。「スズメ」、「SELECTボタン」、「ギザの大ピラミッド」、「三角筋」、「矢印から見てパイプの3/4」、「自然分娩で生まれた赤ちゃんの平均体重」……などのようなお題が与えられるので、表示されたイラストの中から「それ」を見つけ出し、ピンを挿す。正解(の場所)に近づくほど「温度」が上がっていき、「94°」になれば正解となる。

(なぜ「94°」なのか、いまだに分かっていない。)

数あるクイズゲームの中でも抜群にとっつきやすい。たとえいま答えを知っていなくとも、システム上、ピンをどんどん挿していけばいつか答えに辿り着ける。ちなみにピンは消費アイテムで、有償で買い増しができた……が、現在、運営チーム(Scimob)はすでに解散していると見られるので、控えておくべきだろう。

2017年に続編『94° Adventures』がリリースされたが、日本語非対応だった。筆者はプレイできなかった(この記事を書くときに初めて知った)。

Arcaea|アーケア(2017)

App StoreGoogle PlayMy Nintendo Store

(この頃の雰囲気が懐かしいな……!)

すべてのリズムゲームに当てはまる話ではないことを断りつつ、リズムゲームを概説するならば——どこからか現れて流れてくるオブジェクト(①)が、別のオブジェクト(②)とぴったり重なる瞬間に何か(③)をすることで、そのぴったり度と連続性に応じた損益(④)が発生する。これを一定期間繰り返し、最終的な損益(④)が規定値に達したら嬉しい(⑤)。ぴったり重なる瞬間は、同時に再生される楽曲やそのリズムと同期しているので、プレイヤーは音楽の演奏を疑似的に体験できる仕組みになっている。

イギリスを拠点とするlowiroが開発・発売した「超感覚」リズムゲームである『Arcaea』の場合、①=「ノート」(基本的には3種類)、②=「ライン」(2本)、③=タップまたはホールド(=長押し)、④=「想起率」(クリアゲージにあたる)、⑤=「TRACK COMPLETE」(ステージクリアにあたる)など、になる。

たどたどしい説明はこれくらいにして、数あるリズムゲームからこの作品を選んだ理由は、①開発チームの熱意(『Arcaea』の世界観を創り上げるために注がれたあらゆる努力)が尋常ではないことを知ったから、②『Arcaea』のゲーム体験(ゲームプレイ、音楽性、アートワークなど)が筆者の趣向と共鳴したから、③2022年、メインストーリーがフィナーレを迎えたから。

Coaster Crazy(2012)/Coaster Crazy Deluxe(2013)

App Store(Coaster Crazy Deluxe)]

イギリスのFrontier Developmentsが開発・発売したアミューズメントパーク運営シミュレーションゲーム……の皮を被った、ジェットコースター(ローラーコースター)ビルディング(建築)要素のある自由度の高いパズルゲームだと筆者は感じている。

同社は〈RollerCoaster Tycoon〉シリーズ(1999~)、『Planet Coaster』(2016)/『Planet Zoo』(2019)、〈Jurassic World Evolution〉シリーズ(2018~)といったアミューズメントパーク運営シミュレーションゲームを多数開発・発売しているデベロッパーだが、そのノウハウをスマートフォンゲーム市場にローカライズした結果である本作の特徴をいくつか挙げてみたい。

  • ジェットコースターだけが建築の対象である。世界各地にジェットコースターを作って、現地の人たちを熱狂させる(=金儲けをする)ことが目的。

  • ステージクリア形式である。土地をアンロックしてジェットコースターを作る際、建築についていくつか条件が課されるので、それを満たすように作る。

  • 上記により、トライアンドエラーの楽しさがプレイ体験に直結している。(自分の中では序盤なのに)すぐ嘔吐する乗客、(自分の中では中盤なのに)強烈なG(慣性力)をくらって吹き飛ぶ乗客、(自分の中では終盤なのに)乗客がいなくなっているコースター、そもそもこれはテスト運転なのになぜ乗客がいる?

DragonVale World(2016)

アメリカのBackflip Studiosが開発・発売したドラゴンパーク運営ゲーム。前作『DragonVale』([iOS版]2011、[Android版]2012)[App StoreGoogle Play]に引き続き、同国の大手玩具メーカーHasbroがドラゴンのキャラクターデザインを担当した。

運営ゲームはいまでもよく見かけるが、当時は同国のPocket Gemsが開発・発売した『Tap Zoo』(2011?)といった競合作品や、スペインのSocial Point(現Socialpoint)が開発・発売した『Dragon City』(2012)[App StoreGoogle Play]といった後発作品がひしめきあっていた。その中でも筆者には、『DragonVale World』がとりわけ輝いて見えていた。Backflip Studiosが解散し、ドイツのDECAに事業が譲渡された『DragonVale』に対して、「収益の見込めない」『DragonVale World』がサービス終了を迎えてしまったことは、いまでもつらい。

  • 『DragonVale』の世界を、フル3DCGで破綻なく再現・拡張することに成功している。動作も軽快だった。

  • ドラゴンのキャラクターデザインが優れている。ドラゴンのアニメーションに使い回しがほとんどなく、タップした際の反応も3種類ある。

  • Gem(リアルマネーから換金できるゲーム内通貨)ありきのコンテンツがあまりなく、Enchanted(=色違い)を確実にゲットする方法が用意されている。正直なところ、これが収益不良の結果を招いたのかもしれない……。

Duolingo|デュオリンゴ(2012)

App StoreGoogle Playブラウザー

これをゲームだと言い切るのはなかなか厳しいが、少なくとも「ゲーミフィケーション」を活用した言語学習Appであることに間違いはないだろう。詳しくは下記の記事を参照してほしい。

トレーラー動画が見当たらなかったので、てきとうな動画を持ってきてこの紹介を締める。

Hitman GO(2014)

App StoreGoogle Play

カナダのSquare Enix Montréalが開発したターン制パズルゲームで、〈ヒットマン〉シリーズのスピンオフ作品。姉妹作として、〈トゥームレイダー(Lara Croft)〉シリーズのスピンオフ作品『Lara Croft GO』(2015、2016)[App StoreGoogle PlaySteam]、〈デウスエクス〉シリーズのスピンオフ作品『Deus Ex GO』(2016)があるほか、本作のPC版である『Hitman GO: Definitive Edition』(2016)[Steam]もリリースされている。

スタートからゴールまで辿り着くことが基本的な勝利条件になるが、道中には一般市民、警備員、番犬、警官、兵士……などがいる。プロの殺し屋である主人公は、みずからの目撃情報を残さずに、また誰にも捕らえられずに、任務を遂行しなければならない。通用口、変装具、ロック機能付きドア……などのギミックも多様にあって、取っつきやすくも歯ごたえのあるパズルに仕上げられている。

上記のシステムを踏襲しつつ、『Lara Croft GO』では舞台描写がより現実的になり、ジャングルの奥地にある遺跡をいままさに探検しているライブ感が強まっている。〈GO〉シリーズ最終作となった『Deus Ex GO』では、レベルエディターやデイリーチャレンジなどのオンラインコンテンツが実装された。

それでも筆者が『Hitman GO』を推すのは、あえてボードゲーム風に、ジオラマ風に作られたデザインが優れていると感じているからである。日常から見えないところで暗躍する殺し屋の息づかいが、むしろ際立っているところに惚れ込んでいる。

iBlast Moki 2(2011)

App StoreGoogle Play

フランスのGodzilabが開発・発売した物理シミュレーションのパズルゲーム。前作『iBlast Moki』は2009年にリリース[App Storeでは販売終了?|Google Play]されている。前作と同様、物理シミュレーションで動く(=こちらの直接的な操作を受け付けない)Mokiたちを、限られた資源(時限爆弾、風船、ロープなど)を使って赤いワームホールのようなゴールに誘導する。

『Angry Birds』(詳しくは次回を参照)に代表されるように、爆発要素があればたいていデモリッション(破壊)系のゲームだった中で、〈iBlast Moki〉シリーズは異端かもしれない。ちなみに、筆者がよくプレイしたデモリッション系のスマートフォンゲームは下記の2作品である。

  • イギリスのGeek Beachが開発・発売した『A Monster Ate My Homework』(2010)

  • オーストラリアのWicked Witchが開発・発売した『Catapult King』(2012~)[App StoreGoogle PlaySteam

Incredibox(2009~)

App StoreGoogle PlaySteam

フランスのSo Far So Goodが開発・発売した音楽ゲーム。2009年にウェブブラウザー版(現在はデモ版のみプレイ可)、2016年にiOS版、2017年にAndroid版、2018年にmacOS/Windows版、2021年にSteam版がリリースされている。

気だるげなお兄さんが7人、画面中央に整列している。画面下部には何かしらのアイテム(アイコン)が20個あり、どれかひとつをお兄さんにドラッグ&ドロップしてプレゼントすると、そのアイテムにちなんだコスチュームに早着替えして、ヒューマンビートボックスの1パートを口ずさみ始める。これを複数人に行うと、たちまち楽曲になる。

プレイ前にバージョン(2023年6月現在、9種ある)を選ぶことで、音楽のスタイルを変えることができる。たとえば、上記の動画はバージョン5で、ブラジル音楽にインスピレーションを受けたスタイルになっている。

仔竜の風詩(2014)

[App Storeでは販売終了?|Google Play

日本の牙竜氏(LiNDWURM Project)が開発・発売した育成、パズル、アイドル(放置)要素のあるアドベンチャーゲーム。同氏が開発・公開したブラウザーゲーム〈竜の風詩〉シリーズ([竜の風詩]1997、[竜の風詩2]2003)の流れを汲みつつ、初めて知った人でも楽しめる物語が展開されている。

筆者は『竜の風詩2』のころにインターネットを触れ始めた。なんかすごく印象的な音がしたあとに繫がる世界でこのプロジェクトの存在を知りつつも、電話料金を気にして結局参加することが叶わなかった。10年後、異なる形ではあるものの、こうして参加できたことが筆者にとって宝物になっている。

Green the Planet 2|みどりのほしぼし(2018)

App StoreGoogle Play

日本のメディア工房が開発・発売したアイドル(放置)系ゲーム。同国のPUMOが開発・発売した『みどりのほし(Green the Planet)』(2015)[App StoreGoogle Play]の続編にあたる。ちなみに〈みどりのほし〉シリーズの事業は、PUMOがメディア工房(OBOKAIDEMブランド)と提携(2015)したあと、運営を企画魂に移管(2017)している。

同様なゲームの代表例として、同国のヒットポイントが2014年にリリースした『ねこあつめ』(2014)[App StoreGoogle Play]が挙げられる。

『仔竜の風詩』もそうだが、当作の魅力はさりげなくしっかりと作り込まれている世界観で、テキストの量が存外に多い。多くを語らないというのももちろん一つのやり方だが、一つひとつ語られていてページをめくる手が止まらないというのも一つのやり方といえよう。


思い出に残っているスマートフォンゲーム|#2」に続きます。

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