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SS 愛する人 猫探偵09

あらすじ
 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害と考えた親族は彼女の命を狙う。犯人は祖母のメリル・エリザベス・ウッドだった。

「ニーナの婚約者のマッテオからメールが来てた」

 俺は元恋人兼ハッカーのクロミの部屋を訪れる。雑居ビルの用具室には床掃除の道具が積まれている。そこに電子ロックの扉があり、その中がクロミの居場所だ、狭いし最低限の設備しかない。ニーナと一緒に居るのはきついと思う。

「この男が連絡してきたのか?」
「クローン体のニーナに興味があるみたい」

 クロミと接触するための複数のルートを利用していた、クロミは大人数参加ゲームのキャラから情報を受け取る。報酬はゲーム内部通貨だが電子マネーにも交換は可能だ。

「ニーナを助けたいんだってさ」

 愛する人が殺されるのは我慢できないだろうが…………同一人物が二人いる状態で、結婚生活が出来るのだろうか?逆か、愛する人が二人も居ると考えれば2倍は幸せだ。

「俺が話を聞くよ、連絡をしてくれ」
「判ったわ、いきなり殺しはしないだろうけど、培養脳を作る?」

 俺が死んだ場合の複製品だ。本来は違法だが荒仕事をする連中はバックアップ脳を作るのは普通だ。

「いや俺はいらん」
「あんたはいつもそう、あんたが死んだらニーナはどうするの?」

 ニーナはネズミ経由で外国に逃がす準備をしている。俺が死んだ場合はネズミにまかせる。

「時間と場所は……」

xxx

「あんたがロイか?」

 現場に来たのは黒ずくめの男と強化サイボーグの鎧の兵隊だ。いつもの公園は静かな雰囲気を壊していない。衆人環境の方が異常をすぐ検知できる。場違いの奴がいればすぐ判る。

「マッテオは来ないのか?」
「金持ちの御曹司だぞ?現場なんぞに来るか」

 奴も雇われている、顔はカラス。白目の無い真っ黒な目玉を見ていると寒気がする。カラスは法外な金を提示してきた、百年は楽に暮らせる金だ。ニーナを取り戻したい、密かに隠して交代で妻として扱う。

「ニーナからの伝言だ、忘れてくれ、それだけだ」
「……まったく面倒だな、お前を殺して生体脳からデータを貰う」

 鎧の兵士がジャミングネットを使う。電子機能を麻痺させる金属製の網だ。空中に広がると俺を標的に落ちてきた。頭からかぶれば通信機能や電子装置が破壊される。

 奴らの弱点は俺を殺せない事だ。少なくても脳は攻撃できない。鉛玉はいつでも信頼できる武器だ。古いリボルバーで鎧の兵士を狙う。

 しかし鎧には銃弾が効かない。傷もつかない。戦車装甲並だ。スピードローダーでリボルバーの弾を入れ替える、徹甲弾を使う、弾の内部に貫通する芯がある。

 続けざまに二体を仕留めるとカラス男は余裕そうに、杖を向けた。紫のスパークが走ると俺は倒れる。生体脳撹乱だ。猫用に調整している、俺は記憶が途切れた。



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