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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(21/60)

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第四章 私の病気
第三話 不愉快な過去

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、、第二の殺人が発生する事で疑われる。


彩音あやね頑固がんこね」
 母から嫌みを言われる。人とは反対の事をしたくなる天邪鬼あまのじゃくだ、他人から指図しじを受けたくない。子供らしくないと言われたが自分の性格なので仕方が無い。成長すれば変わる、実際に私は変化した。でもそれは薬で変わっただけかもしれない。

「見せてよ」
 私はノートにかわいらしい動物の絵を描く。自分のためだ、人に見せて自慢したいわけじゃない。クラスメイトは私の絵を欲しがった。私が拒絶きょぜつするとノート取り上げて、絵の部分を破く。自分の大切なものを破壊された、私はその理不尽りふじんが許せない。お前らに何の権利がある? もちろん当時はそんな理屈で行動はしていない、純粋な怒りの理由を考えた末に出した答えだ。

 私は消えた記憶を思い出そうとした、主治医の榊原昭彦さかきばらあきひこ先生は、私に催眠術を使い消えた過去を取り戻そうとしていた。でも戻らなかった。時間があれば私と先生だけで、何回も試してみたが無理だった。私の記憶は消えたままだ。

 目の前が明るくなり、ゆっくりと光を取り戻す。

「大丈夫か!」
 刑事の小林俊介こばやししゅんすけが、加藤翔子かとうしょうこの頭部を調べる。傷ついた彼女は眠っているようだ。調書ちょうしょを取っていた婦人警官がおびえている。何が起きたのか判らない。

「速く勤務医きんむいを呼べ」
 婦人警官があわてて署内で待機をしている医者を電話で呼び出す。私は何も考えられずに立っていた。勤務医きんむいが到着して数人の男性警官が到着すると私を見つめる。まるで猛獣を見ているような眼だ。

彩音あやね君、意識はあるか? 」
 小林刑事が片手を私に向けて近寄る。抵抗すればすぐにでも制圧できる体勢だ。私が暴れたの? と思うが実感が無い。自分の手を見ると指が切れていた。血が流れている、自分のポッケからハンカチを取り出すと指をおさえる。

「大丈夫です、私がしたんですか? 」
「たぶん病気のせいだろう、私が悪かった、不用意に君を犯人扱いした、すまない」
 小林刑事は油断せずに私の片腕をつかむと傷の具合を見てくれる。勤務医も近づいて私の傷を見る。

「折れてるかもしれません、応急処置おうきゅうしょちをしますから、明日は病院でレントゲンで調べてください」
 私は椅子に座り手当を受ける。倒れたままの加藤刑事は担架たんかで運ばれた。


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