死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(20/60)
第四章 私の病気
第二話 追求
あらすじ
児童養護施設から親戚に引き取られた櫻井彩音は、、第二の殺人が発生する事で疑われる。
「不審な人は居なかったと……」
殺人課の刑事の小林俊介が前回のようにメモを取る。加藤翔子が私に質問をして、小林が矛盾点がないか確認をする。様々な角度から、同じ事を聞かれる。「不審者を見なかったか」「悲鳴は無かったか」「物音は無いか」私は二階で風呂掃除をしていた。遮断された部屋は外部からの音が聞こえない。特に風呂は家の真ん中にある。窓が無い。
「変な音とかしてません」
してたとしても私には聞こえない。ただ刑事は同じ質問をする事で無意識で知覚した記憶を呼び覚まそうとする。
「ねぇ犯人には心あたりは無い? 」
「前に見た、浮浪者と宮田健太さん以外は、見てないです」
加藤刑事が私に質問する。もっとも家に侵入する気になれば、近所の誰でも入れる。八代は憎まれていた、恨む人をリストアップするだけで大変に思える。
「前にも聞いたけど、スポーツをしてたね」
「はい……してましたけど」
小林刑事が私の顔を見る。高校に入ってからは部活はしていない。私では戦力不足もあるが、榊原の家に来てからは家事が多く時間がない。部活は諦めていた。小林は後頭部に腕を回して組むと伸びをする。リラックスしている。
「凶器は石頭ハンマーで、かなり重い」
私が手に持っていたハンマーは確かに重かった。授業で見た事がある金槌とは別物だ。老婆の頭は砕かれていた、脳の損傷で即死だ。
「男性でも振り上げて、標的に当てるのは難しい」
「普段から工事とかしている人は別よ」
小林と加藤刑事が私に説明する。人を死なせるには強い殺意が無いと難しい、偶発的に激情で殺す場合もあるが、今回は違う。
「女性では無理なんだ、でもね君は力が強い……」
「あなたの中学時代の握力は、成人男性くらいあるの」
初めは理解できなかった、いや理解したくなかった。刑事達は私を犯人と考えている。私はまた動悸が激しくなる。ドキドキと心臓が脈打つ。
「可能性の話だ、一家に部外者が来た、そして連続するように殺人が起こる……」
「私は殺したって決めつけるんですか! 」
私は怒鳴っていた、私は不幸だった事を恨んだ事は無い、誰もが不幸になる、偶発的に悲しいことを体験する、でもそれは私のせいじゃない。人は理不尽に直面すると感情が乱される。黒い何かが私を支配する、激情は憎しみになる、刑事は敵だ!
ゆっくりと目の前が暗くなると私は記憶が消えていた。
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