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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(25/60)

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第五章 やさしいお母さん
第一話 犯人捜し

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、連続殺人に巻き込まれる、母親の朋子ともこは精神を失調する。


「おばあちゃん、かわいそうだったね」

 正面の家から伊藤愛美いとうあいみが、元気よく小走りに近寄る。彼女の元気さが羨ましい。祖母の八代やよが死んでからは、母親の朋子ともこは、一階の客用の部屋で寝ていた。二階は夫婦の部屋で、私が長女の佳奈子かなこの世話をしていると夫婦の部屋を通る事になる。

 私を視界に入れたくない。一人になりたい、だから朋子ともこは一階で寝泊まりしている。

 二階は不思議な構造だが、佳奈子かなこが夢遊病気味に外に出ないためでもあるので父の榊原昭彦さかきばらあきひこが監視をしたかったと思える。

朋子ともこさんは、今は寝てばかりなの」
 母親が寝ていると逆に長女の佳奈子かなこが、一階に降りてくるようになる。もしかしたら朋子ともことは仲が悪いのだろうか? と感じるが、まだ生活を共にしてから数週間も経過していない。

 愛美あいみは、なぜか上機嫌に見える。色々と家庭内の事情を知りたいらしい。私は来たばかりなので話す事があまり無かった。佳奈子かなこに興味があるのか近況を教えて欲しいと頼まれる。事情がわからないので、逆に愛美あいみから過去の事を聞く。

佳奈子かなこさんは、愛美あいみと同じ学校に通ってたの? 」
「ええ、健太けんたさんも同じ学校に通ってたわ」

 長女の佳奈子かなこは、その美貌とやさしい雰囲気で、異性から好意を持たれていた。誰からも好かれる彼女が病で登校はあきらめて一番ショックだったのは、宮田健太みやた けんただった。佳奈子かなこは遺伝性の病気なので、周囲には伏せられていた。だから佳奈子かなこの病気の事は私も知らないとしか答えられない。まだ遺伝の病気が恥ずかしい感じが残っている。

「で? どうする? やく除けの札を用意したわよ」
 不幸が続くのは悪霊のせいだ。迷信のような話だが、ホテルでは、悪霊封じのお札が貼られた部屋もあると聞く。私は勝手に友達を部屋に入れるわけにはいかないので、榊原昭彦さかきばらあきひこと相談してから日時を決める事にした。

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「また遊んできたの! 」
 学校から戻ると母親の朋子ともこが玄関で仁王立ちで待っていた。寄り道もしないので、私が到着する時間を計算して立っていたとしか思えない。ここまで来ると、毒親なのか? とも感じる。祖母の八代やよの娘で、金貸しの一家、人間性が……。私は自分が嫌な考え方をしているのに気がついた。生まれ育ちで差別するのは、いけない事だ。

「速く買い物に行きなさい、すぐによ! 」
 鬼のような形相で、私に買い物リストを手渡すと学校の鞄を玄関に置いて外に追い立てられる。


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