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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(24/60)

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第四章 私の病気
第六話 密葬

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、第二の殺人が発生する事で疑われる。


 祖母の八代やよ家族葬かぞくそうになる、祖母の和室六畳で通夜が営まれる、八代やよは、検死が終わると火葬にされていた。骨壺に入った状態でお坊さんを呼んで読経どきょうしてもらう。家族と言っても全員で十名くらいだ、父方の親戚が大半で祖母の親戚は誰も居なかった。

 うつ気味なのか母の朋子ともこか、ぼーっとしているだけで家事もできない、自然に私の家事の比重が重くなる。洗濯して掃除して夕飯を作る。目が回るくらいに忙しい、既に学校の勉強は順位が下がっていた。

「お母さん、お線香せんこうを」
 長女の佳奈子かなこが母親を立たせる、言われるがまま立つと私の前を通る。いきなりだった。

「痛い! 」
 正座している私の足を踏みつけた。何回も何回もかかとで、ふとももを踏む、思わず逃げ出すと背中を蹴られた。

「あんたが殺したんでしょ、あんたが、光男みつおを返して! 」

 絶叫で部屋の全員が総立ちになる。朋子ともこの精神状態は限界だった、息子が死んだときから、終わっていたのかもしれない。

 不思議な事に、この時は私は黒い感情を持たない。きっと理不尽と感じてないからだと思う。朋子ともこは、息子と母を殺されたかわいそうな悲劇のヒロインだ。犯人すら見つからない今の状態では、異常になるのは当然に思える。

 なんとか廊下まで出て六畳の居間まで逃げる。

「なにかあったの? 」
 殺人課の加藤翔子かとうしょうこが座っていた。なぜここに? と思うが、殺人犯への警戒かもしれない。

朋子ともこさんが、私を蹴って……」
「殺人の被害者は、一生傷が残るの、許してあげて」
「あ、この前はすいませんでした」

 家事に追われて、彼女に謝罪をしていなかった。加藤刑事は、いいのよと私を慰める。誰だって犯人扱いをされたら怒る。あなたの反応の方が正常なの。そんな風に言われると自分の小学校の時の異常な行動で人を傷つけた事を知らないのかな? と思えた。

「加藤さん実は私は病気で……」
 小学校の頃に同級生に怪我をさせた事や、薬で抑えている事を話すと加藤刑事は知っていたと言う、当たり前だ、警察が過去の事を調べないわけがない。

「まだ犯人がわからないの、動機が全く判らない、もし家族に恨みがあるなら、この家の住人全員が危険になるわね……」

 朋子ともこは自室で休ませることになる。

加藤翔子(かとうしょうこ)


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