死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(23/60)
第四章 私の病気
第五話 溺愛する母
あらすじ
児童養護施設から親戚に引き取られた櫻井彩音は、、第二の殺人が発生する事で疑われる。
「健太にちょっかいを出さないでください」
左隣の家に住んでいる宮田よしこは、薄化粧でかなり若く見える。神経質そうに体を揺らしている。精神疾患の青年、宮田健太の母親だった。イケメンなのは、彼女の遺伝だ。よしこは美人だが病的にも見える、彼女に私はトンチンカンな質問を返した。
「え?……朋子さんに、ちょっかいを出したんですか? 」
「あなたの所の長女よ」
間違って母親の名前を出すと、とたんに笑い出してから真顔に戻る。目が真剣に見えるが、どこか歯車が壊れているような、精神が失調しているようにも見える。ぶつぶつとつぶやきながら指のツメを噛み始めた。私は目が泳いでしまう。どうすればいいのか判らない。
「宮田さん、どうしました?」
真向かいの伊藤照子が近寄ってくる、いつものように朝から道路に水をまいていた。若干だが太った彼女を見ると安心する。いつもニコニコしている彼女は癒やしだ。
「いえ……ここのお嬢さんの事で……」
「佳奈子さんは体が悪いから、ちょっかいとか無理よ」
笑って右手を口に当てて左手をひらひらする。場の雰囲気が一気に変わる。伊藤愛美が玄関先から出てくると私を呼ぶ。
「オハ」
「すいません、登校しますので」
愛美が片手を上げて私を呼ぶ、私は宮田よしこに、頭を下げて足早に逃げ出した。愛美は、クスクスと笑いながら宮田よしこの噂話をする。息子を溺愛している彼女は、息子の容姿や頭の良さを自慢するのが趣味で三十分は平気で褒める。愛美の母親の伊藤照子は慣れっこだが、他の住人はうんざりしていた。
「まぁイケメンだからね、息子自慢は仕方が無いよね」
「よしこさんは何が心配なのかな……」
宮田健太は、長男の光男が死ぬ前に、榊原家の玄関の中まで入ってきた。長女の佳奈子目当てだろが、あそこまで積極的だと心配になる。何か事件が起きたらと考えると恐ろしい。不幸が連鎖している状態は呪われているようにも感じる。
「お祓いでもした方がいいのかな? 」
「何? お祓いって? 」
愛美が食いつく、私は家が祟られているので不幸が続く、だから除霊のお札を貼って悪霊を追い出した方がいいかも? と迷信じみた事を話す。ノートパソコンで見ている動画の受け売りだ、事故物件でお札が見つかる怖い話。賃貸物件にお札が貼られていて剥がすと呪われる。
「いいじゃん、通販でお札とか買えるかな? 」
愛美は、何か冗談めかしてるが目が真剣に見えた、キラキラしている彼女は、何か楽しそうな計画を立てていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?