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赤の洞窟:ギルドのお姉さん【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(06/50)

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第二章 赤の洞窟
第一話 ギルドのお姉さん

 あらすじ
 魔女のミナリアは継母から働けと言われて、ギルドに入る。仕事の途中で道に迷うミナリアは洞窟の中に入ると、黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされる。

「おかえりなさい」
 魔女ギルドの案内人がねぎらってくれる。マリアは赤毛色の短い髪をした女性だ。魔女を引退してギルドの仕事をしている。いつもいそがしく帳簿に何か書いている人だ。

「どう?お手紙を渡せた?」
「はい、配達証明にサインをいただきました」
 ギルドのマリアは私を娘のように感じているのか、親身になって仕事を世話してくれた。配達証明を受け取ると、いくらかの銅貨を貰う。食事代で消えるレベルだ。完全な赤字仕事だが、まじめに働いている所を見せないと次の仕事が貰えない。

「ありがとうございます」
 礼を言ってギルドから外に出る。今日はもうクタクタだ、早く寝たい。まだ痛みのある左手をなでる。指に融合した魔法の指輪は簡単な呪文でも数十倍の威力を見せた。

「とても強力な指輪ですね」
「原石をカットすると威力が増すのよ」
 霊体の状態で一緒に居る黒髪の少女レオノーアが教えてくれる。もの珍しそうに街を見ている。ここ数十年は外を見てない。あちこちを指さしながら質問される。こうしていると友達のようにも感じた。私は質素な宿屋に戻ると食事も忘れてベッドで横になる。いつのまにか寝ていた。

「ミナリア、起きて」
 大声で体が跳ね上がる、びっくりした。

「なに?なんですか?」
「朝よ」
 目が覚めると陽が高い。私は冒険者の姿のまま寝ていた。体がちょっと痛い。レオノーアは私を面白そうに見ている。恥ずかしくて私は立ち上がると階下で食事を取ることにした。

「小声で話をしなさい」
 霊体のレオノーアはつぶやく、これから冒険する【赤の洞窟】はルビーで守られている。自分にもどうやって封印を破壊するか判らない。まずは様子を見てくれと頼まれる。

「判りました、がんばります」
 指輪の力は強いし、洞窟の主も一緒に居る。私はまったく心配していなかった。この世界では転送ゲートがある。ギルドに登録して仕事をしていると利用可能だ。一般の人は使えないが、仕事ならば使える。

「赤の洞窟付近にある仕事を選んで」
 いつものようにお手紙配達を見ると領主への年貢の計算書を届ける仕事を見つけた。私をそれに応募する。

「これも安いわよ……大丈夫?」
「大丈夫です、継母から貰ったお金がまだあります。」
 ギルドの案内役のマリアは心配そうにしている。継母はけちんぼだけど、それなりの支度金は貰えた。さすがに追い出していきなり飢え死にされると家の問題になる。贅沢しなければ数年は暮らせる。まずは経験を積む事が大事だ。

「大丈夫です、がんばります」
「あなたのがんばります、は口癖ね」
横でマリアには見えないレオノーアが笑っている。もういいじゃない、頑張るから頑張るの。私はゲートに向かう。少しも心配していない。


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