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赤の洞窟:退屈な少年【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(07/50)

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第二章 赤の洞窟
第二話 退屈な少年

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされる。【赤の洞窟】を目指す。

「女の子と冒険したい……」
 俺は退屈していた、親父は厳格で融通が利かない。領主の息子として生まれたが特別な才能は無い。もし平民ならば苦労した筈だ。自分が無能なのが判る。手先は不器用、勉強が嫌い、音楽は不得手、努力したくない。

 自分で何ができるのかも判らない。親父の仕事にも興味が無い、数字を並べているだけに見える。何がそれで判るのか?俺はいつものように、子供の頃に読んでいた冒険の本を探す。冒険はあこがれだ、洞窟を探検して財宝を得る。そして美女と結婚する。

「そんな話は転がって無いかなぁ…」
 俺はいつものように親父に金をせびろうとした、街の酒場で飲んで女を抱く。それだけが生き甲斐。親父の部屋から少女が出てくる。金髪の美しい少女はまだ未成年に見えた。俺のそばを通る時に声をかける。

「名前を教えてくれないか?」
 びっくりしたような顔をした少女はミナリア。俺は彼女と歩きながら、街で遊ばないか?と聞いてみた。

「この後に調べたい場所があるんです」
 話を聞くと秘密の洞窟があると言うのだ。俺は半信半疑だったが、確か父親の書庫に鉱山の地図が残っている事を想い出す。俺も引っ張りだして夢想していた。この場所にはお宝があると勝手に想像して楽しんだ。実際はもう廃坑で近寄ると危険だ。

「地図を見せようか?」
「ありがとうございます」

 ミナリアは嬉しそうに笑う。俺は心が暖まる。誰かの役に立てる事がこんなに嬉しいのか?人のために働く事が馬鹿げている。そんなひねくれた事を考えた自分が別人のように熱心になる。

 書庫を引っかき回すと廃坑の地図が出てくるがミナリアは、これとは別の物を探している。俺も資料を調べた。

「あ!見つけました。これです」
 俺も見てみると……骨竜の谷だ。ここは大昔に滅んだ竜が住んでいた場所で今では荒廃している。竜の毒で大地が死んでいる。農作物は育たない。確かに見つけた地図には洞窟が描かれていた。

「ありがとうございます、ここに用事があります」
 ニコニコ笑う彼女は、一泊してから現地に向かうと教えてくれた。俺は……彼女と冒険をしたい。強く願う。それに彼女のひ弱さを見たら洞窟探検は無理に思えた。入り口まで案内すれば満足する筈だ。

「あとで俺も行くよ」
 彼女は怪訝そうな顔をするが俺は胸を張る。これでも剣術に関しては人並みな事や地理を知っていると説得すると彼女はしぶしぶ応じてくれる。

 俺は部屋に戻ると骨竜の谷へ行く事を手紙にする、親父宛に机に置いた。剣を取り出すが、俺の腕前は人並み以下だ、そこらのチンピラと闘っても負ける。下手すると年下にすら負ける。それでも俺は万能感で何の疑問も感じない。

「今日は早く寝るか……」

 俺はベッドに入りながら明日の冒険の夢を見る。


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