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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(34/60)

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第六章 家出
第四話 黄金の血

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、連続殺人に巻き込まれる、母親の朋子ともこは客間で腹部を刺されて死んでいた。


「昨日は、もうしわけない……」
 警官だらけの榊原さかきばら家は、一番安全なのかもしれない、道路はマスコミで一杯で騒ぎになっている。今後の問題も含めて榊原昭彦さかきばらあきひこに相談する。
 
「児童養護施設に戻ろうかと思います。」
 ただ問題は、犯人が逮捕されていない。私が容疑者になり得るならば養護施設側は引き受けられない。他の親戚も同じだ。未成年の私は働いて自活する事も難しい。
 
「君が居てくれないと困るんだ……」
「私を引き取った理由を教えてください」

 私くらいの年齢は、もう人格が固まっている、幼い子供ならば引き取り愛情を与えて家族になるのは自然でも、私の年齢だと難しい。榊原昭彦さかきばらあきひこは、申し訳なさそうな顔で説明する。
 
「黄金の血だなんだよ、君は……」
 遺伝子異常のためか特殊な血液型を持つ長女の佳奈子かなこは、他人からの輸血が難しい。親戚の私は偶然なのか、同じ血液型だった。彼は輸血が出来ると判断していた。私はそんな特殊な血を持っていたのかと驚く。長年探していたが、たまたま目にした学術論文で私の事を知る事になる。論文は、私の主治医が書いていた。
 
「血の特殊性と精神の関係だったかな」
 まるで俗説の血液型占いのようなタイトルだが、血液抗体がニューロンにも影響を与えると仮説が提示されていた。
 
「私がスペアとして必要だったんですね? 」

 榊原昭彦さかきばらあきひこは、うつむくが彼を責める気にはならない、自分の娘を助けるためなら何でもしたい、それが人間だ。私はこの家の家族を嫌っているわけではない、それぞれが被害者だ。私はうなずくと彼に血は提供しますと伝える、昭彦あきひこは、とても嬉しそうに笑う。彼は少なくても私を殺す気は無い、娘の為に私を大切にあつかう筈だ。そうなると後は、長女の佳奈子かなこが他の家族を殺している可能性だ、だがこれも不自然すぎる。
 
「なら犯人は誰なのかな……」
「この家はかなり恨まれているからね」

 周辺住人からのリークなのか、祖母の八代やよの悪い噂が流れていた。祖母は、人を騙すために精神的なダメージを与えた、そして周辺の住人への暴言や嫌がらせをしている。法に触れないように陰口や騒音で人間をコントロールする。でもそれは十年以上も前の話だ、いまさら恨みから一家を殺すだろうか? それに祖母を殺せば復讐は終わる。母親まで殺すだろうか?
 
「そろそろ買い物行きます」

 長女の佳奈子かなこは、外出して買い物に行くのは難しい。親戚は殺人事件の現場に近寄ろうとしない、スキャンダルに巻き込まれる可能性もある。お手伝いを雇うにしても短時間で探すのは無理がある、私しか居ない。私は買い物の仕度をして外に出るとマスコミが騒ぎ始めた、その時に事件が起きる。


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