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SS クリスマスカラス #毎週ショートショートnoteの応募用

少女は陰鬱な部屋から窓の外を見る。暗い外は何も見えない漆黒の闇がただ広がるばかり。クリスマスには戻る約束の父親は帰らない。今は屋敷の中にじいやとばあやが居るだけで心細い。

「お父様はまだかな…」

きらびやかなクリスマスツリーも不気味に見える。母が死んでからこの家は呪われている。少女は心細さから飼い猫を探す。

「クロー、クロー」
カラス猫で真っ黒のしなやかな体はあたたかい。せめて猫を抱きたいと願うがどこにも居ない。地下室に居るかもしれない?少女は探しに行く。

「ただいま、娘はいるか?」
父親は最愛の娘を探すが居ない。クリスマスツリーの裏を見ると眠っていた。

「風邪をひくぞ」
抱き上げる娘は妙に軽い。娘は目を開くと縦に細長い。驚いて娘を離す。身軽にくるりと回ると着地した。そのまま地下室へ逃げていく。父親は追いかける。

その日はクリスマスカラス猫に抱かれて地下室で眠る娘が居る。みなが安堵しながら娘を抱き起こすと、娘の首がぐにゃりと曲がる……


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