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SS 暴走した男 猫探偵03

あらすじ
奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘を助けると猫探偵は家で飼う事にする。

娘がキチンの椅子に座る。居心地はよくないのか窮屈そうだ。子供でも俺よりも体は大きい。俺はなりゆきで助けた。どこかの子供の居ない家に養子に出すつもりだ。

「猫さんは、一人なの?」
娘が俺を見ている。狭い部屋で驚いている。金持ちの子供らしい、狭さが楽しそうだ。猫と同じだ。俺たちも狭い場所は安心する。

「ロイと呼べ」
「私はニーナ・エリザベス・ウッド」
彼女は悲しそうな顔をする。
「ニーナでいいわ、もうフルネームは使えない」

彼女は事故でクローンが作られた。両親から殺処分を依頼される。親は同じ個体が存在すると危険と判断した。遺産やら戸籍やら面倒だ。

俺はカリカリを皿の上にぶちまけながら考える。ニーナが皿を見ている。娘はカリカリを食べない。俺は外で食事する事にした。彼女を連れ出す。

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「旦那、旦那、事件ですよ」
外に出ると助手のネズミが顔を出す。公園で機械が暴れている。すぐに仕留めてくれと言われる。

「ニーナは部屋に戻れ」
「私も見たい」
子供だ、好奇心でうずうずしている。窮屈な家から解放されて楽しいのかもしれない。公園に行くと奇妙な機械が動き回っている。暴走する機械はめずらしくない。俺は口径のでかいリボルバー出した。こいつは車輪で動くタイプだ。駆動部を狙うか車輪かで迷う。

ニーナは機械に近づく。機械はニーナに向かって走り出す。俺は機械の頭部を狙うと打ち抜いた。鈍く重い音が響く。機械は止まる。頭部から赤い液体が流れる。こいつは機械化した人間だ。脳を破壊していた。

「とても古い機械よ、なんで壊したの?」
彼女は怒っている。この重い機械に跳ね飛ばされたら危険だと判らない。最近の若い子は…とつぶやく。

「ギギギ、最近の若いもんは乱暴だな」
機械は腕を出して頭部をつけかえる。こいつはスペアを持っている。バックアップ脳をクローンで作っている。

「車輪の調子を見てただけじゃ、乱暴じゃな」
早とちりで公園の管理人工知能が仕事を回したらしい。文句を言いながら公園から出て行く。

「変な街ね」
ニーナは俺を見て笑う。


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