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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(27/60)

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第五章 やさしいお母さん
第三話 魔術の部屋

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、連続殺人に巻き込まれる、母親の朋子ともこは精神を失調する。


  朋子ともこは、夕方には機嫌が良くなるが夜になるとうつ状態になる。この繰り返しで家事全般が無理な状態が続いていた。長女の佳奈子かなこは、家に居るが彼女も遺伝性の病気で怪我などをすると危険だと判断して家事は行えない。必然的には私の比重がかなり大きい。

 私を引き取った榊原昭彦さかきばらあきひこは、お手伝いを雇う相談をすると母親の朋子ともこが猛烈に反対する。

彩音あやねが居るでしょ! 」

 医者の昭彦あきひこは、お手伝いを雇う余裕は十分にある。理屈で説明しても朋子ともこは最後に叫びながらダイニングテーブルを手で叩く。子供のように見えるが、ここまで嫌悪感があるのが不思議に感じた。他人をこの家に入れたくないのかな? とも思う。

「すまない、彩音あやね君」
 私は地下の掃除を頼まれる。地下と言っても一階の階段から降りればすぐに部屋があるだけだ、書斎のように使われていて書棚が両壁に並んでいる。私は鍵を渡されて週一でいいから掃除機を使ってくれと頼まれた。

 階段は西側の階段を使う事になる、キッチンとは逆の居間側に廊下があり、地下へ続く階段がある。

「判りました、土曜日にお掃除します」
「少ないが小遣こづかいだ」
 封筒を渡された。私はすでに家族用のクレカを渡されて常識的な範囲ならば利用してくれとお小遣こづかいを自由にできる。それでも報酬があるならば仕事と同じだ、バイトだと思えば良い。

 土曜日になると午後に掃除機を持って地下へ向かう、短い廊下を進み地下へ降りる階段の下は暗く湿気を感じる。地下は湿気がこもりやすいから日本で地下室をつくらないのは風土のせいに思える。梅雨などはカビが心配だ。

 ドアもなく階段を降りて十畳ばかりの部屋を見渡す。研究室のようにも見える、ホワイトボードがあり、図形が描かれていた。私は乱雑に床に積んでいる本をどうしようか悩む、移動したら怒られる? でも掃除できない。なるべく邪魔にならないように書棚側に移動させた。掃除をはじめると掃除機にぶつかったのか積んであった本が崩れる。

 崩れた本の頁がめくれると、本には奇妙な円形の模様が描かれていた、そして悪魔の挿絵さしえも描かれている。悪魔召喚の本に見えた。医者にこんな趣味があるのか不思議に感じる。

「これはベッド? 」
 折りたたみ式の患者を運ぶストレッチャーもある。他にも数台のベッドがあるし、奇妙なキャタピラのついた車椅子も置かれていた。これで長女の佳奈子かなこを地下室におろせる。父親の榊原昭彦さかきばらあきひこは、長女の治療のために使うのかな? と用意周到よういしゅうとうささに違和感を感じた。


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