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ご免侍 二章 月と蝙蝠(二十四話/三十話)

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あらすじ 
銀色の蝙蝠こうもりが江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。芸者のお月が一馬かずまに傷を負わせる。

夕刻ゆうこくなんですよ、こう頭の上に銀色の蝙蝠こうもりが飛んでいて」

 岡っ引きのドブ板平助が 手をひらひらさせながら、実演して見せる。その場所は、一馬がお月に襲われた場所だ。

(やはり、お月が犯人か、十手持ちに恨みでもあるのか)

「平助」
「はい、なんですか」
「お前は、悪い事はしてないよな」
「……してませんよ」

 そっぽをむくと落ち着かない。叩けばいろいろあるのだろうが、元から岡っ引きはそんなもんだ。一馬から見ても、それほど悪どい事はしてないと思う。

「頭の傷は平気なのか」
「もうだいぶよくなりました、頭が痛くて寝てました」

 平助が笑いながら頭頂部をなでている。狸顔の平助は、気落ちはしていない。

「最近、夜盗がでるそうだ、夜盗は天井にから忍び込むとかあるのか」
「そうですな、屋根のかわらをとってから、丸いのこぎりを使って板を切って入り込みます」
「音がするだろう」
「そこは油を使って音を消しますよ」

 夕闇ゆうやみが迫っていた。人通りは少なくなると蝙蝠こうもりの声がする。キィキィと耳にさわる鳴く声がひびくと、銀色の蝙蝠こうもりが飛んでいる。

(またか……)

 一馬は刀を抜いた。

#ご免侍
#時代劇
#月と蝙蝠


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