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SS Hey, Siri. Give me chocolate. #ストーリーの種

 ママはお風呂に入っている、僕はママの携帯を見ながらつぶやいた。お腹が減っていたので無意識だったと思う。記憶は定かじゃない。

「Hey, Siri. Give me chocolate.」

 誰かチョコレートくれないかな。しばらくすると携帯から声がする。

「チョコレートを送りました」

 奇妙な返答は単なる間違いに感じたけどチョコが机に置いてある。僕は手に取って食べると甘くておいしい。お風呂から上がったママは僕から携帯を取り上げた。

「ママの携帯をいじっちゃだめよ」

xxx

「そんな事があったんだ」
「チョコは最初からテーブルに置いてあったのかもね」
 ベッドの中で彼女を抱きしめながら不思議な話をする。彼女は幸せそうに笑っていた。次の日に事故に巻き込まれるまでは、僕も幸せだ。霊安室で僕は彼女を見ていると、彼女が居ない虚無に苦しめられる。葬式に出てお別れを言っても僕の心は穴が空いたままだ。母が僕を慰めた。

「時間が解消するわ」

 自分の部屋に戻りSiriが内蔵しているスマートスピーカーに、電気をつけてと命令をする。明るく輝くこの部屋で彼女を抱きしめた。記憶を反芻はんすうしながら僕はぼんやりと椅子に座る。僕はつぶやく魔法の言葉、幼い頃につぶやいた、あの呪文。

「Hey Siri, give me your girlfriend.」
しばらくしてからスマートスピーカーが応じる。
「出迎えてください」

 涙があふれるとドアでチャイムが鳴る。僕は立ち上がりドアを開けた、母だろう。

「――ただいま」

 濁った声で彼女が立っている。彼女が戻ってくれた、死後硬直で青白い顔は無表情に見える。魂の無い体が僕をハグするが、腕の力のリミッターが切れているのか剛力で僕を抱きしめた。自分の最後の意識が骨を砕く音を知覚した………


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