死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(58/60)
第十章 幸せな私
第四話 母親の事件の説明
あらすじ
児童養護施設から親戚に引き取られた櫻井彩音は、連続殺人に巻き込まれる、黒い家と噂される榊原の家族の生き残りは……
「母親の朋子の殺害も伊藤照子が犯人です」
照子(てるこ)は、榊原昭彦に相談していた、警察の事情聴取で自白が取れている。榊原昭彦は、伊藤照子に鍵を渡して、薬で眠っている朋子を刺し殺させた。一連の復讐の後は、伊藤照子は榊原昭彦との結婚を望んでいた。
「長女の佳奈子と本当の家族になりたかったのね」
夢のような幸せな家庭を想像していたのかもしれない、子供と恋人を奪われた悲しい復讐劇。黒い家の惨劇はこれで終わったら問題は無かったのかもしれない。
「じゃあ佳奈子さんは誰が……」
佳奈子を、殺そうとする人間はいるのだろうか?
「あの……宮田健太さんは、どうなりましたか?」
退院するまで彼の事を忘れていた。榊原昭彦が死亡していたら、彼も逮捕されている?
「宮田健太からは、地下の通路の話を聞いてます」
元は借金を背負った人間を、地下室に移動させて拷問するための隠し通路だ。鍵があるから誰にも知られずに黒い家に入る事ができる。私を助けることが出来たのも、あの通路のおかげだ。
「彼は今は病院よ、あなたが通ってた病院の閉鎖病棟に入院中」
正当防衛だとしても人を傷つけた事で、佳奈子の殺人も疑われているのかもしれない。
「あと榊原昭彦は生きている、もっとも殴られた事で脳障害になり記憶がほとんどないから自白も無理……」
伊藤照子が警察に出頭したのは、長女が死んだ事と榊原昭彦が廃人になり天罰と感じて自白した。
「だから伊藤照子の証言は信用しているの……」
加藤翔子刑事は、長女の佳奈子は自殺ではないか? と疑っている。長男が死んだ時に自殺未遂をしたように、彼女は絶望していたのかもしれない。彼女は、黒い家に閉じ込めらていた、おとぎ話のお姫様と同じだ。榊原家の生け贄として生きてきた。そして血の病気とともに人生を絶望した。だから宮田健太と恋人になる事もあきらめた。
私は静かに涙を流す、呪われた家で誰にも助けを求められずに死んだ少女……
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