死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(57/60)
第十章 幸せな私
第三話 祖母の事件
あらすじ
児童養護施設から親戚に引き取られた櫻井彩音は、連続殺人に巻き込まれる、黒い家と噂される榊原の家族の生き残りは……
「長女の佳奈子さんは、朋子さんが産んだんじゃ……」
「人身売買に近いわね」
祖母の八代は金貸しの情婦だった。近隣の家庭に金を貸して高い利息で縛る。伊藤照子は、榊原昭彦の恋人で交際中に子供を授かる。だが学生の彼には育てられない、いきさつをしった八代、生まれた子供を引き取った。
加藤翔子刑事は、出されたお茶を口に含みながら推測を話している。
「女児なので、高く売れると考えたみたい」
古い売春窟を思いだす、昔はそこに女性を買う店があったが、すでにそんな時代ではなかった。
「榊原昭彦は医者なので、自分の娘の夫に選んだ」
八代は金の匂いに敏感だった、長女を引き取る事で榊原昭彦を縛る、これで離婚はできない。その後で伊藤照子は、別の男性と結婚して伊藤愛美を産んだ。榊原昭彦と伊藤照子が、近所付き合い以上の関係だったので、彩音と娘を友達にさせる。黒い家の情報を娘から聞きたかったのかもしれない。
「長男は、榊原昭彦の子供じゃ無いみたい」
浮浪者の吉田守から、死ぬ前に話を聞き出したと加藤翔子刑事が教えてくれる。榊原昭彦と結婚する前から、八代の部下だった吉田守とは恋人で、頻繁に家を出て浮浪者と会っていた。玄関の戸締まりもしないのは、彼が自由に中に入って情事を繰り返すためだ。男を体で縛って部下として自由に扱う。男を道具と見ている。
「八代は、黙認してたみたいよ」
「じゃあ八代を殺したのは?」
「伊藤照子よ」
強い恨みだ、長女を奪われて長男の慰みものにされる可能性を考えて、重いハンマーで頭を強打した。
「八代は、血の繋がっていない長女と長男を結婚させたかった」
長女の佳奈子と長男の光男は血のつながりはない。長男に佳奈子と仲良くするよう命令していたとも考えられる、もうしばらくすると長男も大きくなり佳奈子を自由にできる。
「最初の殺人で弾みがついたのね、あとは連続して殺人を繰り返した……」
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