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死と記憶の無い少女、黒い家の惨劇(56/60)

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第十章 幸せな私
第二話 長男の事件

あらすじ
 児童養護施設じどうようごしせつから親戚に引き取られた櫻井彩音さくらいあやねは、連続殺人に巻き込まれる、黒い家と噂される榊原さかきばらの家族の生き残りは……


「もう犯人は拘留こうりゅうしています」
 リビングで私はお茶を入れながら、加藤翔子かとうしょうこ刑事から話を聞く、伊藤愛美いとうあいみ憔悴しょうすいしたまま呆然ぼうぜんと隣で聞いている。

「長男の光男みつお君は、首を絞められて絞殺こうさつされていましたが小学生くらいの子供だと、少しの力でも首の血流が止まる事があります」

 はじめは計画なんてなかった、黒い家を恨んでいたためだ。強い憎しみはちょっとした事で偶発的に発生してしまう。犯人は長女を心配していた、それが汚されると判ると反射的に手が出た。長男は意識が無くなり、脳死状態になると死亡した。

「そのままパニックで死体は放置されて、彩音あやねさんが戻ってきたの」

 その後は、私もパニックになり祖母の八代やよを殴っている。誰しも死体を見れば精神は安定しない、犯人が逃げたのは当然に思う。でも長女の佳奈子かなこは何をされたのだろうか?

「あの……汚されるってなんですか? 」
光男みつお君は、ませていたのか姉の体を触ってたみたい……」

 加藤翔子かとうしょうこ刑事は、うつむくと黙ってしまう。長男は私のベッドに入って体を触った。確かに子供の触り方とは違う気がするが、経験はないが性的な感じではなかった。母親に甘えるような感じだ。それでも私は反射的に手が出た。

「犯人は誰なんですか?」
伊藤照子いとうてるこよ」

 伊藤愛美いとうあいみが泣き出すと私は信じられないまま、同級生をなぐさめる。頭の中は疑問で一杯だ、なぜ殺す必要があったのか?

 私は泣いている伊藤愛美いとうあいみを二階に連れて行く。私の部屋に寝かされると、「ごめんね」と言う彼女を残して戻ることにした。

愛美あいみは、悪くない、大丈夫……」

 大丈夫なわけがない、殺人犯の娘というだけで学校にも行けない。彼女の一生が終わってしまう。赤の他人の私ですら絶望的になる状況だ。愛美あいみの苦しみは想像を超えていた。私は自分が持っている睡眠薬を渡す。これで眠れるはずだ……、眠った愛美あいみを残して私は戻る。私は一階の刑事に質問した。

伊藤照子いとうてるこさんが、なんで?」
「長女の佳奈子かなこは、照子てるこの娘よ……」

#ミステリー小説
#推理小説
#黒い家の惨劇


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