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SS 顔のない精霊がつんざくような叫び声を上げた。【腹を空かせた夢喰いサイト利用】

顔のない精霊がつんざくような叫び声を上げた。私は魔方陣を凝視する。
「まだ平気、まだ大丈夫」
震える手で私は祈る。

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おまじないの為に奇妙な振り子を買う。水晶の振り子は中が空洞で液体が入る。液体はなんでも良い。蒸留水でも良い。私は香料入りの水を利用した。中の水はじわりと滲み出る。本来は聖水を入れて悪魔払いをすると聞いている。

「邪魔よ」
「どけよデブ」

教室では嫌われた。体の大きな私は邪魔と認識される。動きも鈍いし、頭の回転も鈍い。言われた事が判るまで時間がかかる。お荷物扱いでセンスも悪い。好かれる要素が無い。そんな私でもクラブ活動は楽しい。

「こんなおまじないがあるの」
ミステリー同好会は、不思議な話や怖い話を中心に本を読む。自然に宗教や悪魔の話も詳しくなる。同好会の仲間に教えられたのは東欧の水晶占いだ。振り子を手に持って、落ちる水で運勢を占う。

落ちた水が描く三角や円の図形で運命が判る。単純だ。手に持つ水晶は腕を動かさなくても、疲れなどで手が震える。落ちた水はランダムで図形を描いているように見える。私は夢中になる。そして魔方陣の事を知る。大地の精霊や水の精霊が呼べる。試してみた。

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絶叫は泣き女だろうか?泣き女はリアルな仕事として存在する。葬式で見られる。今は存在しない職業だ。妖怪の泣き女は、死を呼ぶとも言われる。叫ぶ事で知り合いの死を教えてくれる。今の妖精の絶叫で家族は部屋に来ない。私にだけ聞こえている。

「汝の望みは?」
口もない精霊は私に問いかける。頭の中にイメージを感じる。精霊は代償を求めて望みを聞く。
「痩せたい」
切実なお願いだ、痩せればなんでも解決すると考えた。精霊は了解した事をイメージで伝える。

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クラブの仲間が痩せた私を見ている。
「ダイエット成功?」
私はクラブの仲間に微笑む。

痩せるとかわいいのか、前のように私を粗末には扱わない。少し鈍くてもそこがかわいい。男子も女子も親切にしてくれた。それは突然に始まる。親切なクラスメイトの男女が死に始めた。

私は恐怖する。泣き女は言い伝えが色々ある。泣き女はバンシーとも呼ばれる。精霊のバンシーなら死ぬかもしれない。泣いた声を聞くと死ぬ精霊だ。

「止めないと…」

私はあわてて水晶を使う。でも精霊が呼べない。ランダムで描かれた図形は偶然できた魔方陣。絶望した私は引きこもる。クラブの仲間が家に来ると、クラスの半分の人は死んだと教えてくれた。今は何も起きていない。私はふと思いつく

「私が理想的と考えた体型なら人は死なない?」

私は必死で体型を維持している。もし私がまた太り始めたら誰かが死ぬ。それは私が好きな人かもしれない。

終わり

顔の無い精霊2

No.6 顔のない精霊がつんざくような叫び声を上げた。


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